働き方改革に思うこと(3) | いきょくのまねーじゃーのブログ

いきょくのまねーじゃーのブログ

市立砺波総合病院の整形外科医です

働き方改革に思う(3)

 

 「全員『主治医』医師の働き方改革」

https://news.yahoo.co.jp/pickup/6499679

紹介されている新潟医療センターの佐藤卓先生は、膝関節外科の分野で有名な先生であり、学会で何度か直接話をしたことがある。いつも人工膝関節のマニアックな話ばかりで、残念ながら、働き方改革の話はしたことがないのだが。

 

 当院では、診療科によっては全員主治医に近い体制の科があるように見える。一方で、完全主治医制(一人の医師が主治医)に近い科もある。あえて、「近い」と書いたが、全員主治医と言っても、その中の誰かがイニシアチブをとる。逆に完全主治医制であっても、時間外や学会出張で、主治医の先生が留守の時は、他の先生が指示を出される。一言で言うなら、いろんな文化がある。

 

 全員主治医をとなると、時間外にトラブルがあって対応が必要であった場合、当番の先生が判断して指示を出す。働き方としては、時間で区切りがつくから働き方改革になる。例えば、終末期の患者さんが、亡くなった時の対応は、主治医であるべきかというのはよく話題になる。一方でデメリットもあるように思う。

 

 ときどき研修医の先生などにこんな話をする。「最良の治療選択肢は一つのはずだが、正解はいくつもある。」と。ちょっと極端な言い方になることはご容赦いただきたいが、小学校から大学受験、さらには医師国家試験まで、一つの正解を当てる教育を受けてきた。いつの間にか、思考回路が正解を当てようとしてしまう。それが悪いという意味ではない。医療は、そんな問題とは違うと思う。

 

 治療選択の「正解はいくつもある」のだが、それぞれの場面では、選べるのは一つで、それが、他の医師にとって、さらには、その患者さんにとっては、正解ではないということがある。さらに結果的には、その選択が正解ではないこともある。時間外のトラブルに対して、「どうして、そんなことしたの…」と、結果が悪かったことをきっかけに、翌朝に口論になっているのを目にしたことも少なくない。(単にその医師のマウンティングにすぎないのかも)

 

 患者さんからしても、例えば、時間外にトラブルが発生した時の当番が、新人ドクター(必ずしも悪い選択をするわけではない)だった場合に、ベテランの先生の方が良かったなんて思うことはないだろうか。少なくとも私が患者ならそう思うだろう。

 

 全員主治医制の成功の鍵は、個々の選択を尊重することだと思う。仮にその選択があまり良くなくて結果が悪くても。そして、尊重するのは、スタッフ同士ばかりではなく、患者さんもふくまれる。尊重できるかな?、まさに改革が必要かもね。