働き方改革に思うこと(1) | いきょくのまねーじゃーのブログ

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市立砺波総合病院の整形外科医です

働き改革に思うこと(1)

 

 「2時間の休憩は労働時間にカウントされる。休むなら3時間以上休めと言われる。(3時間までは、拘束時間となり、3時間以上休むと休憩とみなすというルールらしい。)でもお客さんは荷物持っているんだよなあ」ある長距離トラックの運転手さんと出会った。「こんなことしていたら、月末になると、もう労働時間ないから、走るなと言われる。給料減るのは困るし…」働き改革の問題を嘆いている様子だった。

 

 労働時間を短くすることは大切なことである。しかし、現在の労働に対する対価の計算には、時間が大きな要素であり、働き方改革も時間という要素が重要視されているのは確かである。しかし、労働時間だけにとらわれると、こんな問題が生じるように感じる。

 

 運送と医療とは、全く違うようで、似た部分もあるように思った。分かりやすい共通点は、多くの人が眠っている夜間に仕事をすることが少なくない。時間外労働の制限も他の職種とは別にされたのも共通点があるからかもしれない。

 

 話は変わるが、医療においても働き方改革という名の下、労働時間の制限がある。昔の話をしても仕方ないが、少し前までは、当直翌日も通常通りの勤務が当たり前だった。その後、当直翌日は「休んでいい」という時期があった。そして、今では、当直翌日は、原則「休まなければいけない」に変わった。

 

 時間外手当というのは、時間あたりで計算される。何度も書いたが、仕事が遅い、手術に時間がかかる(下手という意味ではない。丁寧ということかも?)医師ほど、手当は多くなるのだ。医療が時間給とは不似合いの業務と個人的には考えているが、他の適切な物差しが見当たらない。

 

 先日、NHKの番組で、営業所ごとに労働時間や売り上げではなく、収益率によって給与を変えているという運送会社が紹介されていた。時間だけではなく、言い換えれば、効率性を考慮に入れようとする試みである。しかし、それは、消費者から見れば、価格の上昇につながる可能性があるように感じた。

 

 医療においては、病院の収益に直結する業務と、収益には繋がらない業務がある。収益だけにフォーカスすれば、大切なものを見失う。一方で、繰り返すが、時間だけにとらわれている働き方改革は問題が多い。分かりやすく言えば、労働時間を制限して同じように仕事していては、病院の経営が破綻するのは、予想に容易い。そのためには、いかに効率よく、仕事をするかが求められているように思う。少なくとも、効率性を邪魔するもの(例えば、必要性の低いコロナ対策など)は、減らすことが必要だと思う。あとは、単価が上がるといいのだが、行き過ぎると、多くの人々の負担となり、いずれしっぺ返しとなると予想する。(詳細は書かないが、コロナ対策で医療機関は潤ったために今回の診療報酬改定は厳しいことを見ればわかる)

 

 冒頭の運転手さんに話を戻す。凍結した路面でも、決まった時間に荷物を届けるそうだ。荷主さんには、重宝されていると教えてくれた。早くつけば、労働時間は減る。でもスピード違反は…何事もバランスが必要なのかもしれない。バランス感覚ないと転ぶんだよなあ。