empathy | いきょくのまねーじゃーのブログ

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市立砺波総合病院の整形外科医です

empathy

 

 「同情するなら金をくれ」という昔のドラマで使われて流行したこんな台詞を思い出した。医療に携わっていると、病気やけがでかわいそうだと思う患者さんにたくさん出会う。その思いは、治療のモチベーションになる。しかし、どこか他人事であるのも認めざるを得ない。そうしないと、私のメンタルが持たない。その思いは、英語で表現するなら「sympathy」、日本語で言えば「同情」。

 

 たまたま目についた論文に「empathy」という言葉を目にした。

(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38602675/)

結論だけ書くならば、「治療者のempathyは、慢性疼痛治療に効果がある」という。empathyは日本語で書くなら「共感」が近い。

 

 sympathyも「共感」と訳されることがあるが、ニュアンスが若干違うと思う。sympathyは自発的な感情であり、empathyは、意識的に相手を理解しようとするものだと思う。「寄り添う」なんて言葉が使われることがあるが、みていて感じるのが、sympathyだろう。一方で、患者と同じ方向を見て、考えて進んでいくのがempathyのようなイメージかもしれない。

 

 いずれにしても、論文によれば、薬の治療や麻薬、さらには手術的治療よりもempathyが効果が高いとある。となれば、「empathy」は医師でなくてもできる。(ついでにヤブ医者も;笑)しかしながら、empathyを可能にするのをいかに教育したり、実行できるかが問題だと先に紹介した論文に書かれている。

 

 そう考えると、人としてのあり方が試されているような気がしてくる。一言で言うなら人間性の問題かもしれない。私自身は、患者さんとの「empathy」ができているなんて言う自信がない。そんなかわいそうな私、「同情」してもらえるかしら、それとも…。