愛よもう一度。桑田佳祐「波乗りジョニー」 | よねともが気ままに思うブログ

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本日は桑田佳祐「波乗りジョニー」(2001年リリース) です。




2000年のサザンオールスターズは、それまでの活動の中でも特に密度の高い1年だったことは、間違いないと思います。1月にリリースしたシングル「TSUNAMI」は、300万枚近いセールスを記録し、サザンのそれまでの売り上げは勿論のこと、平成にリリースされたシングルでSMAP「世界に一つだけの花」に次いで2番目に高い売り上げを誇るシングルとなりました。続く7月リリースのシングル「HOTEL PACIFIC」は、GLAYやL'Arc~en~Cielとリリースが同じ日になり、チャート争いを繰り広げながらも85万枚の売り上げを記録するなど、ベテランバンドの意地を見せつけました。さらに同じ月には桑田さんの出身地である神奈川・茅ヶ崎市において行われた「サザンオールスターズ 茅ヶ崎ライブ」を2日間にわたって開催し、話題を集めました。11月にシングル「この青い空、みどり ~BLUE IN GREEN~」をリリースし、直後にバラード・ベスト・アルバムの第3弾となる『バラッド3 ~the album of LOVE~』を発売すると、初週でミリオン、最終的に「TSUNAMI」に匹敵する売り上げとなり、年末には年越しライブ、そして「TSUNAMI」が「第42回日本レコード大賞」を授賞し、まさにサザン尽くしの1年となりました。

しかし、「この青い空、みどり」のリリース直後に、ギターの大森隆志さんが休養に入ることになり、翌年のサザンの活動がストップすることになります。その結果、桑田さんは1995年以来6年ぶりのソロ活動を本格的に再開することになります。その第1弾シングルが、この「波乗りジョニー」です。

以前投稿した「白い恋人達」と同様に、コカ・コーラのNo ReasonキャンペーンのCMソングで、その第1弾となります。




上記のように2バージョン載せていますが、上のものは一番最初に春頃オンエアーされたもので、桑田さんが出演しました。そして、タイトルが記載されていませんが、まだタイトル未定で、さらに言えば細かいアレンジが現在の製品版と異なっているほか、サザンでリリースするかソロでリリースするかも不透明なものだったようです。事実、「波乗りジョニー」はサザン活動時の1999年にレコーディングが始まっており、「TSUNAMI」や「この青い空、みどり」、ソロとして発表される「可愛いミーナ」と同時期にレコーディングされた曲で、元々はサザン名義でリリースされる予定の曲でした。しかし、前述のように大森さんの休養に伴うサザンの活動白紙化でソロとしてのリリースに至った曲でした。

それまでサザンとソロの音楽性は異なるもので、1987年~1988年の第一期ソロ活動は、サザンが「コンピューターを用いた実験的なデジタル・ロック」に対し、ソロは「シンセサイザーを用いたポップス」、1993年~1995年の第二期ソロ活動は、サザンが「大衆的なポップス・ロック」に対し、ソロは「アングラなフォーク・ロック」といった形で明確に異なっていましたが、この曲が「元々はサザンで発表するものがソロとしての発表に変更」という不測の事態ともいえるものだったことでのソロ活動スタートということもあり、以降のソロ活動はサザンとの差別化は図られなくなりました。

この曲は、そういった経緯もあり、サザンの代名詞的な「」を大々的に押し出したアップ・テンポのポップスに仕上がっています。それまでのアレンジは、第一期では藤井丈司さんと小林武史さんの共同アレンジ、第二期では小倉博和さんとの共同アレンジでしたが、第3期以降、2013年までのソロ活動は、2002年の『ROCK AND ROLL HERO』以外は桑田さん単独でアレンジを手掛けるようになりました。また、この第3期ソロ活動では桑田さんが楽器演奏においてかなり積極的に演奏しています。この「波乗りジョニー」は、エレクトリック・ギター以外にも、ベース・キーボードも桑田さんが演奏しており、マルチプレイヤーである面も窺えます。曲の肝ともいえるピアノは原由子さんによるものです。ドラムは打ち込みで、パーカッションは三沢またろうさんによるものです。ストリングスのアレンジは島健さん、ブラスセクションのアレンジは山本拓夫さんと、サザンの活動ではお馴染みのミュージシャンが参加しています。

歌詞は熱い夏の恋をテーマにしたものです。

青い渚を走り 恋の季節がやってくる
夢と希望の大空に 君が待っている

夏の海、それは出会いの多い季節、そして場所でしょう。そんな暑くて熱い夏の海に駆け出した僕ですが、運命的な出会いをすることになります。

熱い放射にまみれ 濡れた身体にキッスして
同じ波はもう来ない 逃がしたくない

太陽が照り出している浜辺、海で遊んだ君にキスしたいと僕は思っています。この「波」は、サーファーで同じ波は来ないので、この波に乗りたい!というものと、この「僕」視点でいう、君は1人しかいない、君にアピールするチャンスはここしかない!という2つの意味が掛かったものとなっています。

君を守ってやるよと 神に誓った夜なのに
弱気な性(さが)と裏腹なままに 身体疼いてる

アピールをした夜ですが、本来「僕」はあまり強い性格とかではなく、むしろ気弱な性格みたいで、それを乗り越えてアピールしたようです。そんな弱気な僕ですが、「君」への想いをかなり強めているようです。

だから好きだと言って 天使になって そして笑って もう一度

アピールはただただ話し掛けて、冗談のように「君を守ってやるよ」と言ったんだろうと推測します。だからもう一度、本当に「好きだ」と伝えて、恋人になろうと思っているようです。

せつない胸に波音が打ち寄せる

でも「僕」は弱気だから、伝えることがなかなか出来ない、しかも「君」にはボーイフレンドが居るみたいで、そんな切ない心に、浜辺に打ち付ける波音が響いています。

いつか君をさらって 彼氏になって 口づけあって 愛まかせ

いつか、勇気が出てきたらその時は「君」をボーイフレンドから奪って、キスして、その後は・・・。でもこれはあくまで「僕」の妄想に過ぎません。

終わりなき夏の誘惑に 人は彷徨う 愛は陽炎 嗚呼...蘇る

夏は誘惑の季節。そんな叶わぬ恋に男は翻弄されます。

「可愛いミーナ」と同様に、歌詞は「促音」が使われており、サビの歯切れのよい詰まりが、この曲のポップさをより際立たせています。効果的に用いられることで、リスナーを惹き付けています。

この曲のタイトル「波乗りジョニー」は、桑田さんが大学生の頃に、電車で通学する際に考えたものであり、「いつかこのタイトルで曲を作ろう」と思っていたそうです。この曲の制作時に「波乗りジョニー」を使おうとしたのですが、最後まで踏ん切りが付かず、最後から2番目の歌詞である「愛よもう一度」とどちらにしようか迷い、所属事務所の受付の女性に「愛よもう一度」と「波乗りジョニー」のどちらが良いか聞いた所、「波乗りジョニー」の方が良いと返ってきた為、「波乗りジョニー」に決めたというエピソードがあります。

そんな「波乗りジョニー」は、初週で50万枚以上売り上げ、最終的にはソロ初のミリオンセラーとなりました。今も夏に愛されるポップ・ソングです。



MVは、桑田さんが「波乗りジョニー」をプロモーションするレコード会社の会社員「古賀紅太」(こが こうた・・・タイアップ先の「コカ・コーラ」の捩り) に扮したもので、仕事先から抜け出しサーフィンに興じるものです。このMVに出てくるギターは「サーフボード型放水ギター」で桑田さんのアイディアによるものだそうで、特注で作られたギターでした。また、古賀紅太が立ち寄ったサーフショップの店主役で、サザンメンバーの野沢秀行さんが出演しています。


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