TM最初のソロ活動。小室哲哉「RUNNING TO HORIZON」 | よねともが気ままに思うブログ

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本日は小室哲哉「RUNNING TO HORIZON」(1989年リリース) です。





TM NETWORKは、1988年に名盤アルバム『CAROL ~A DAY IN A GIRL 'S LIFE 1991~』を発表後すぐに、『CAROL』のストーリーを軸にしたミュージカルとライブを融合させたライブツアーを開催します。しかし、1989年3月の大阪フェスティバルホール公演中に、宇都宮隆さんが膝の靭帯を切断するというアクシデントが発生し、フェスティバルホール公演は何とか乗り切ったものの、以降の公演は延期となります。

このことにより、宇都宮さんは療養に専念することになり、小室哲哉さんと木根尚登さんは、スケジュールに余裕が出来たそうで、小室さんは一週間ほど休暇が出来たそうです。その間に小室さんはユーロビートテイストの曲を5曲ほど制作しました。これは特定の誰かに提供する訳でもなく、当初はTM NETWORK用に作られたという訳でもありませんでした。この中の1曲が、この「RUNNING TO HORIZON」です。

この曲は読売テレビ・日本テレビ系アニメ「シティーハンター3」のオープニングテーマに起用されました。


「シティーハンター3」のワンシーン。右が冴羽獠。

先述の5曲の内の1曲がこの曲でしたが、別の1曲は、この「RUNNING TO HORIZON」リリースから遡ること3ヶ月前に、TM NETWORKでリリースした「DIVE INTO YOUR BODY」でした。「RUNNING TO HORIZON」と「DIVE INTO YOUR BODY」は、宇都宮さんと木根さんにデモテープを聴かせた上で、どちらが次のTMのシングルとして良いかを聴いた所、宇都宮さんが「DIVE INTO YOUR BODY」を選択した為、TM NETWORKとしてリリースしたのが「DIVE INTO YOUR BODY」となり、その後アルバム制作を行っていた小室さんのソロ曲としてリリースされたのが「RUNNING TO HORIZON」となりました。その為、両方とも歌い出しが「LA LA LA~」で、Aメロのコード進行が同じという共通点があります。また、作詞も両方とも小室みつ子さんとなっています。

コンピューターでの制作に慣れていた小室さんですが、この当時さらに最新鋭のコンピューター端末兼シンセサイザー・サンプラーなどを統合させた電子機器「シンクラヴィア」を用いるようになります。


当時スタジオに導入していたシンクラヴィアとTM NETWORK。

このシンクラヴィアは、サンプリングや自動演奏、録音やシンセサイザー演奏を一手に出来る大型の機器で、1980年代のアメリカの音楽でかなり普及されていました。日本では小室さん以外にも松任谷正隆さんや冨田勲さんらが導入し、正隆さんが導入したことで、一時期の松任谷由実さんの作品にもシンクラヴィアが使用されていました。このシンクラヴィアはかなり高価で、当時は1億円とも言われたそうです。

1989年からシンクラヴィアに興味を示した小室さんは、シンクラヴィアが既に導入されていたスタジオに何度も出向いて試運転やプログラミングを行ったり、またシンクラヴィアに強い知人にオペレーターを頼んだり、既にシンクラヴィアのノウハウに長けており、レコーディングシステムを確立させていた音楽プロデューサー・日向大介さんを共同プロデューサー・アドバイザーとして起用するなどして、シンクラヴィアを運用する本格的なレコーディングを開始させます。このシングルは、その第1弾ともいえるもので、ギター以外は全てシンクラヴィアでプログラミングしています。制作中のアルバムは、TMのデビューアルバム『RAINBOW RAINBOW』への回帰とも思える、デジタル色の強い作風で、シンクラヴィアを用いた効果がハッキリと表れた形です。また、エレクトリック・ギターはB'zでデビューしたばかりの松本孝弘さんが演奏していますが、殆んど隠れがちの演奏となっており、後年アメリカでグラミー賞を受賞する世界的なギタリストになんという勿体無い使い方なんだろう、と思うかもしれません。しかし、TMは元々ギターが目立つサウンドではあまり無いため、これも1つの小室流のアイディアだと思われます。

また、特に素晴らしいのは1番と2番の間の間奏のメロディです。小室さんはリフから作ることが殆んどで、メロディは後付けになるのですが、このメロディは特に綺麗で、素晴らしい印象を抱いています。アレンジは流石にシンクラヴィアという機器が現在では古い機器の為、時代を感じるのは否めないのですが、メロディを聴くだけでも聴く価値はあります。

そしてなんといっても、小室さんの歌声に注目が集まったのは言うまでもありません。宇都宮さんと木根さんがソロデビューをするのは1992年で、TMメンバーで最初にソロデビューしたのが小室さんでした。

宇都宮さん・小室さん・木根さんはそれぞれ歌声に特徴があります。宇都宮さんは「少し低音ながらハリのある、カッコいい歌声」、木根さんは「低音ながら滑らか、渋味も感じる朴訥で柔らかな歌声」、そして小室さんは「高音で粘着質なヘタウマな歌声」となっています。小室さんは決して歌唱力が高い訳では無いのですが、その独特な高音の歌声は個人的には好きで、聴いていて何処かクセのある声だと思っています。

小室さんのソロデビューは、当時TM NETWORKで成し遂げていなかった、オリコンシングルチャートで1位を獲得しました。小室哲哉の真髄はある意味、この曲に詰まっていると思っています。