怪談サークル とうもろこしの会 -326ページ目

湯けむりスナイパー


やばい。今さら「湯けむりスナイパー」にハマった。

オヤジ漫画誌の星である漫画サンデーに連載している、過去に一流スナイパーだった経歴をもつ「源さん」が引退後、身元を隠して温泉宿で中年従業員として働くという、ハードボイルド人間ドラマだ。

元々スナイパーもの好き(「山猫は眠らない」とか)の僕としては、存在も知ってたしパラパラと読んではいたのだが、TVドラマ化ともあってなんとなくマンサンQコミックスの傑作選というのを読んでみたところ、かなりの衝撃を受けてしまったのである。

まず絵。松森正の絵。普通、一枚絵が上手い人は漫画という続き絵が不得意な場合が多いのだが、松森先生の場合は、それを同時にかなりのレベルでこなしている。大友克洋っぽくもあり池上遼一っぽくもあり、といっても褒めすぎではない位だと思う。決め絵で、いきなり自分勝手にデッサン画が挿入されるのも池上遼一っぽくて凄くいい。

そしてストーリー。原作は、ひじかた憂峰。一話ずつちゃんとテーマがある、というか、それを飛び越えて、もう自分勝手なぐらいに男の美学を貫き通す脚本がすごい。たとえば、あっけらかんとフェラチオしようとするフィリピーナは断固拒否するが、地元の名士と結婚する前夜に覚悟を決めてきた仲居が「恥……かかせないで…」ときたらその”覚悟”故に相手をしてやるという……他にもチャラいだけでモテる男へのルサンチマンが全開だったり、クールに荒唐無稽なことをかましたりと、これこれ!これだよハードボイルドってのは!ストーリーラインとしてはどうかと思うけど!な展開が満載なのだ。いや、本当に素晴らしい。

今から近所のブックオフとGEOを漁って、100円で買える全ての湯けむりスナイパーを買い占める所存だ。


と思って調べてみたら、「ひじかた憂峰」って狩舞麻礼の別名なのかよ!どおりで「青の戦士」「ボーダー」「ハードコア」っぽかったよ!そりゃハマるよ!

ケータイ


もう友達なんていりません。

友達なんて、僕が生きる上で、本当に本当に邪魔で無駄なだけの存在ということが分かりました。よく分かりました。


あらましはこうだ。

つい昨日、ドコモからのお知らせがきた。「いくら待っても使用料分の金払わねーからてめえのケータイを停止するんでヨロシク」。なんの変哲もない、毎月恒例の定期連絡だ。ひと昔前までは僕も尖ったナイフだったので、おうおう止めてもらおうじゃねえか、とあくまで料金の支払いを拒否。利用停止されて何週間もたってどうしてもケータイが必要な用事が出来るまではブッチしていたものだった。「いくらかけても連絡つかない」というブーイングがきても「あ、ケータイ停められてるもんでねっ」と爽やかに言えるナイスガイだった。友達は確実に減っていった。

まあ最近ではさすがに僕も丸くなったもので、利用停止される直前には金を支払うことにしている。これをシャバくなったと見るか、できる大人の余裕と見るか。それはさておき、ドコモからの連絡を受けたのが昨日。やれやれ守銭奴なこって、と重い腰を上げて先月先々月の請求分を見た、その瞬間。ただでさえ貧血ぎみの僕の脳からサーっと血が引いていく音が聞こえた。4月分の使用料、9150円。そんなバカな。いちばん最低の料金プランにしてこっちからは絶対に電話をかけず、してもメールのやりとりだけ、iモードなんて見向きもしない、そしてそもそも友人も仕事関係もケータイで連絡する交友関係がほぼゼロ、という僕。その平均的な料金は毎月3000円台のはず!なのに!なぜこんな!恐怖と怒りから5月分の使用料をビリリと開く。5月分9320円。あほか。え、なに?なんなの?これ面白いと思ってるの?いきなり6000円高くなっちゃったぜってのがウケると思ったの?思うに至った思考を俺は知りたいよ。震える手で明細をよくよく確認してみると、通話した時間はいつも通り。しかしパケットというやつが異常に高く請求されてる。ちょうど6000円分くらい。どうやらインターネットとかメールとか沢山しましたよ的なことらしいのだが、なんだこれは!ここまで高くなるはずがない!思い当たる節ゼロ!分かった、詐欺だ。これは詐欺に違いないですよ。いや確かにしばらく家のインターネットが無くて、しかもプレステ2を買ったので、攻略サイトをケータイでアクセスしっぱなしにしながらふんがふんがゲームを楽しんでいたけどもですね。そして僕はパケットプランというのが何にも入ってないけれども。そんな細かいこと言うやつは、だったらじゃあ何で俺に零~赤い蝶~の攻略本をそっと手渡さなかったんだって話ですよ。それやってない時点で何も言う権利ないでしょ!?違う!?だいたいここまで高いのが法外すぎるんだよ!詐欺だー!詐欺ですよー!皆さん、ここに詐欺がいますよー!気をつけてくださーい!詐欺会社にお金とられちゃいますよー!助けてー!

そんな主張をドコモショップの前で仁王立ちになって叫ぼうともしたのだが、そこは分別ある大人。きちんとショップの店員に話を聞いてみることにした。「ドコモが裏で手を組んでるアダルトサイトに知らずに入会させられちゃってるんじゃないですか!?」鼻息荒くカウンターに詰め寄る僕に、店員さんは落ち着いて対応してくれた。


「メール一つで5000円いくこともありますよ」

とは店員のイノセさん(仮名)の談。

「今のケータイって高性能ですから、写メなんかも容量が大きいんですよ。キレイな画像が送られてきたら一発で」

親指で首を掻っ切る仕草をしてイノセさんは言った。

「アウトですね」

――そんな恐ろしいケータイ事情になってるんですか!

「それにデコメール。女の子なんかはよく使いますけれども、あれだって受け取るのにお金が普通より余分にかかるんです。ゴテゴテした豪華なメールもよくありますが、結構な大きさになるでしょうね」

――じゃあこの高額請求は、決して僕が攻略サイトを考えなしに見ていたせいだけじゃないんですね?

「そうですね。パケットは通話と違って、実感を伴わずに高額になるのが特徴です。特に最近は大抵の人がパケ放題ですから、送信側が無闇にパケットの大きいやりとりをしていて、それにつき合わされる形で、パックを設定していない吉田さんの料金が跳ね上がった。という可能性も考えられます」

――今後、僕はどうしたらいいんでしょうか?

「料金パックを見直すか、パケットに関してもっと慎重になるか、のどちらかでしょうね。後者は具体的にはiモードはもちろん、メールのやりとりなども控える、ということです。このご時世では難しいかもしれませんが」

――心がけます。でも今回に関してですが、僕は悪くないんですよね。なのに悪くない僕が、お金をたくさん払わなくてはいけないのですか?

「恨むんなら余計なメールを送ってきたお友達の方々を恨んでください。吉田さんは決して悪くない。それは知ってます。悪いのはデコメールや画像を送りつけてきたケータイ依存症の人たちです。一刻も早く縁を切ることをおすすめします。でも料金は今すぐ払ってください。停止します」

 

驚きだよ。

質素で堅実な生活をしている僕なのに。資本主義に踊らされ虚飾しか見ようとしない盲目の羊どもからメールを受け取るだけでお金がかかっていくとは……。そんな訳で、僕にデコメールとか送るのは禁止!iショットとかの画像なんてもってのほか!「う、受け取るのに、だ、誰が金払うと思ってんだ!」って本気で怒るからな!


もう僕のことは放っておいてくれたまえよ!




※普通のメールならいいです。通話は受信と送信がフィフティーフィフティーの関係ならギリギリ許します。お互いできる範囲で仲良くしましょう。




パスケース



けっこう前の話になるのだが、名刺入れを無くしてしまった。


そう書き出してみて、ふと、指が止まってしまう。

悩む。僕の持っている名刺入れは確かに商品名としては名刺入れなのは間違いない。でも僕の場合、普通の社会人みたいに名刺を配ったり貰ったりすることが極端に少ない。なので、はたしてこれを「名刺入れ」と呼んでいいいのか?という疑問が湧いてくるのだ。とりあえずムダに強烈な僕の負の自意識さんは「名刺入れという社会的にちゃんとしたアイテムとして呼ぶことは許されざること!断固拒否する!」と高らかに宣言して止まないのだ。

ということで、これは社会人ぶって名刺入れと呼ぶのを止めて、定期入れと言った方がより正確かつ誠実なのかもしれない。「ちょっと待て」あ、負の自意識さんがまた。「お前が定期券を使って学校に行ったり働いたりたりしたのなんてどんくらい前の話よ?今は定期的に通う場所なんてねえだろ?ごくたまに貧乏たらしく1000円チャージするだけのスイカが入ってるだけでそれを定期入れと言うのお前は?ちゃんと定期的に定期券使ってる人たちに対して恥ずかしくないの?」

ごめんなさい、もう定期入れとも呼びません。確かにこんなの、数百円入ってるスイカと、一回だけ入ったマンガ喫茶のカードと、ソクハイから貰った図書カードと、あとなんか八王子の実家近くの歯医者の診察券と、くらいしか入ってないただの黒い革製のパカパカです。名刺入れとも定期入れとも恐れ多くて呼べません。あとは使うアテも全くないけど、街を歩いてて突然「抱いて」と女の人に迫られた時のためにコンドームが2つ入ってます。だからもうコンドーム入れでいいです。黒革のコンドーム入れでいいです。はい決定ー。コンドーム入れで決定ー。やったー。ようやく本題に戻れるー。



けっこう前の話になるのだが、コンドーム入れを無くしてしまった。

よくやるポカなのだが、飲みの席にて酔っ払ってどこかにやってしまったようだ。まあどうせロクなものも入ってないからいいや、と諦めていた矢先、飲み会に出席していた人から連絡が入る。「僕が持って帰ってました!」とのこと。どうやら何かの拍子に、彼のバッグに僕のコンドーム入れが入り込んでしまったようだ。「すいません、すぐに持って行きます!」という彼に、いやいいですよと大人の対応をする僕。「どうせ必要なものなんて入ってないですし、いつでもいいですよ」。後日に受け渡しをすることになり、西武新宿駅で待ち合わせ。そこでコンドーム入れを返してもらう。再度「うっかり持っていっちゃってスイマせん」と謝る彼に、「いやいや、どうせ使わないものしか入ってないから大丈夫ですよ」と返す僕。そのまま別れて帰宅していったのだが、その途中でふと気がついた。

――どうせ必要ないものなんて入ってないですし……

――使わないものしか入ってないから……

そんなことを繰り返し言い続けた僕。あの中には、2つのコンドーム。もしかして、と僕は思った。僕は必死で「こんなコンドームなんて僕、ぜんぜん使いませんから!ピュアですから!」というアイアム・ノーセックス・アピールを繰り返していたのではないか?彼は思ったことだろう「こいつ、どんなアイドル気取りだよ」。違うのに。カマトトぶりたくて言った訳じゃないのに。あー絶対変な誤解されてるよー。もしくは「お前がやってようがやってなかろうがどっちでもいいよ。どうせやってないだろうし」と思われてるよー。もしくは「さりげなくコンドームを落とすことで経験者気取りですか?中学生の時にいたわ、そういう奴」という思いも生まれたかもしれないよー。

いや、普通に「キモい」と思われただけだな。