米巨大ITは生成AI活用の道筋を示せ | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

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米巨大IT各社は生成AIへの投資を増やしている

掲題の今朝のもうひとつの日経社説。

かなり説得的。

ご参考まで。

 

 

生成AI(人工知能)への投資家の成長期待が揺らぎつつある。対話型AI「Chat(チャット)GPT」の登場から2年足らずで急速に普及し、米巨大IT企業が発表した4〜6月期決算は堅調だったものの、多くの企業の株価が下落した。

 

生成AIの先行投資がかさんでいることが懸念されている。巨大ITは巨額投資に見合った収益モデルを築き、市場の健全な成長をけん引すべきだ。

 

マイクロソフト、グーグル持ち株会社のアルファベットアマゾン・ドット・コムなど主要5社の4〜6月期決算はそろって前年同期比で増収増益となり、このうち4社が2ケタの増収だった。

 

各社は生成AIの開発・運用に必要なデータセンターへの投資を大幅に拡大している。米景気が減速する懸念が強まるなか、収益に貢献するまでに時間がかかると見た投資家が増えて多くのテック企業の株価が下がった。

 

チャットGPTなどは急激に利用者数を伸ばしたが、もう一段の普及には企業や利用者が新技術を活用するメリットを実感しなければならない。巨大IT企業は顧客企業との連携を深め、業務の効率化やコスト削減といった具体的な成果が求められる。

 

関連するスタートアップ企業の育成も促し、技術の恩恵が社会全体に行き渡るのが望ましい。

 

生成AIの普及を阻みかねない構造問題の解決も待ったなしだ。膨大なデータ処理に必要な高性能半導体はエヌビディアの独占状態にある。同社株もピークから値を約2割下げた。AI向け半導体の開発や生産を多様化し、安定したサプライチェーン(供給網)を築くことが重要になる。

 

データセンターの増設で世界的に電力消費が急増している。再生可能エネルギーの積極的な活用や、省電力性能に優れる半導体技術の開発も急務だ。

 

AIの悪用や、巨大IT企業による新たな寡占を警戒するのは当然だ。各国の規制当局は監視を強化していく必要がある。

 

インターネットやスマホの登場に続く技術革新とされる生成AIの本格的な導入はこれからだ。少子高齢化が進み、生産性の向上が喫緊の課題である日本はメリットを特にアピールしやすいはずだ。短期の株価変動にとらわれず、日本企業は長期の視点で資金を投じてAI活用を進めてほしい。