佐渡島の金山 対話が生んだ世界遺産 | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

「経済崩落7つのリスク」、
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「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

掲題の今朝の東京新聞社説。

かなり説得的、

ご参考まで。

 

 新潟県の「佐渡島(さど)の金山」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に登録された。登録に慎重だった韓国とも丁寧に交渉した成果だ。  

 

 歴史認識を巡って波風の立ちやすい両国だが、今後もこうした対話を重ね、尹錫悦(ユンソンニョル)政権の発足を契機とした関係改善の動きをさらに進めたい。

 

 政府は2022年、佐渡金山のシンボルである「道遊(どうゆう)の割戸(わりと)」を含む「相川鶴子(あいかわつるし)金銀山」と「西三川(にしみかわ)砂金山」を世界遺産に推薦した。手工業で金を生産した江戸期の貴重な遺構が今も残る点などをアピールした。

 

 当初、日本側は、江戸期までの金生産に限って登録を目指していたが、ユネスコの世界遺産委員会で委員国を務める韓国は、金山で戦時中、朝鮮半島出身者の過酷な強制労働があったとして強く反発した。実際に、金山に関する地元の史料などには、差別的な労働の実態が記録されている。

 

 以後、この問題は両国の懸案の一つとなり、水面下で交渉が続いていた。その結果、先月の委員会で日本側は従来の方針を改め「全ての労働者、特に朝鮮半島出身者を誠実に記憶にとどめ、金山の全体の歴史に関する説明・展示戦略を強化すべく努力する」と表明。また、朝鮮半島の出身者が危険な作業に従事する割合が高かったとするデータを現地の施設で展示するなどの措置を明らかにした。

 

 韓国側はこの対応を「日本と行った真摯(しんし)な交渉の結果」と評し、登録に同意した。両国がただ批判し合うのでなく、ともに一致点を探った建設的な対話の産物だ。これこそ外交の要諦だろう。

 

 この問題を巡って特筆したいのは、韓国政府の代表が「全ての歴史には光と影があり、遺産はその明るい面と暗い面の両方で記憶されるべきだ」と述べた点だ。

 

 近年の日本では、自国に不都合な史実を「なかったこと」にする動きが顕著だ。だが、それでは他国からの尊敬は望めないし、国の未来を誤らせる一因にもなろう。

 

 「負の歴史」にも誠実に向き合う-。世界遺産となった佐渡金山が今後、そうした理性的な態度を広める象徴ともなるよう願う。