「日経225先物6万1千円を試す午後に――幕末ハイパーインフレと“いいじゃないか踊り”、小栗上野介、そして財政理論が示す文明史の再演」
日経225先物が6万円では飽き足らず、
ついに6万1千円の大台を試す動きを見せています。
前場からの1000円超の上昇は、もはや“相場”というより“祭り”のようです。
実体経済の指標は改善していません。
WTIは下がっていません。
地政学リスクも解消していません。
それでも先物は上へ上へと突き進む。
この光景を見ると、どうしても幕末のハイパーインフレを思い出します。
■幕末の「いいじゃないか踊り」――危機の最終局面ほど、人々は陽気になる
1860年代後半、幕府は猛烈なインフレに襲われました。
金銀比価の失敗で金は海外に流出し、物価は暴騰。
貨幣価値が崩壊する中で、民衆は逆に陽気になり、
「空から札が降る」と信じて踊り狂った。
「いいじゃないか、いいじゃないか」
――危機の最終局面ほど、人々は陽気になる。
今日の先物6万1千円を試す熱狂は、
この心理構造と驚くほど似ています。
■関税率5%への引き下げは“幕府の失策”ではない
ここは誤解されやすいのですが、歴史的に極めて重要です。
本来、日本は1858年の日米修好通商条約で、
当時の先進国と同水準の20%関税を確保していました。
これは、ハリスの米国が南北戦争前でアジアに外交的余力を持ち、
日本を英国の植民地化から守る“防波堤”として扱っていたからです。
ところが――
1861年に南北戦争が勃発すると、米国はアジアから完全に手を引きます。
その空白を突いた大英帝国が日本に圧力をかけ、
1866年の改税約書で関税率を5%へ強制的に引き下げさせました。
つまり、
関税5%は幕府の失策ではなく、国際環境の激変による“構造的敗北”だったのです。
■ここで浮かび上がる「財政が物価を決める」という構造
――コクランの「物価水準の財政理論(FTPL)」が示す共通点
実は、幕末と令和の共通点は金利差だけではありません。
より深いレベルでは、現代のマクロ経済学が示す
「財政赤字と債務膨張が物価を決める」という構造が働いていました。
これは、コクラン教授(スタンフォード大フーバー研究所)の
「物価水準の財政理論(FTPL)」に相当します。
幕末は、
- 関税収入が20%→5%に激減
- 金流出で財政が悪化
- 貨幣発行で赤字補填
- 物価が暴騰
という、典型的な財政主導のインフレでした。
令和の日本も、
- 巨大な財政赤字
- 国債の大量発行
- 日銀の国債保有
- 円安による輸入インフレ
- 資産価格だけが上がるバブル
という、同じ構造の上に立っています。
つまり、幕末と令和は、財政が市場を支配する“同じ力学”の上にある。
■小栗上野介の危機意識――唯一の“現実主義者”
この異常事態を最も深く理解していたのが、小栗上野介でした。
- 金銀比価の国際基準化
- 財政再建
- 殖産興業
- 軍備近代化
彼は“合理”で危機を止めようとしましたが、
熱狂の渦の中ではその声は届かず、やがて暗殺されます。
合理の声は、熱狂の中ではかき消される。
これは文明史の鉄則です。
■令和スーパーバブルは、幕末の再演か
今日の先物6万1千円を試す動きは、
もはや“価格”ではなく“心理”が市場を支配している証拠です。
- 円安バブルという貨幣価値の錯覚
- 実体経済の弱さという見たくない現実
- 原油高リスクの残存
- 地政学の不安定
- それでも株価だけが踊る
これは、幕末の「いいじゃないか踊り」と同じ構造です。
人々は踊り始めています。
「いいじゃないか、いいじゃないか」と。
■結論:踊りが終わるとき、歴史は急旋回する
幕末の踊りは、明治維新という巨大な転換点の直前に起きました。
文明が大きく動く前には、必ず“熱狂”が訪れます。
今日の6万1千円を目指す相場は、
その熱狂の頂点に近づいているのかもしれません。