英新政権は経済の再建と分断の修復を | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

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「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アセモグルら)

支持者から選挙の勝利を祝福されるスターマー英労働党党首(5日、ロンドン)=ロイター

掲題の今朝のもうひとつの日経社説。

こちらもかなり説得的。

ご参考まで。

 

 

4日投開票の英総選挙(下院選、定数650)は、スターマー党首率いる労働党が400を超える議席を獲得し大勝した。14年ぶりの政権交代だ。国民が物価高や移民増加に抱く不満と不安を反映した結果といえる。

 

ジョンソン元首相の官邸パーティーなど不祥事続きだった保守党の信任が失墜し、中道左派の労働党を中心に批判票が流れたという面もあるだろう。

 

スターマー氏は「変革は今から始まる」と述べた。新政権は低成長が続く英国経済を立て直し、国内外の分断を修復する重い責務を負っている。

 

保守党政権下の英国は欧州連合(EU)から離脱し、新型コロナウイルス禍も経験した。5人の首相のもとでの経済政策は、大規模減税案で金融市場を混乱させたり、いったん決めたガソリン車の新車販売禁止を先送りしたりと、ちぐはぐな面が目立っていた。

 

この反省から労働党は政権公約で「経済の安定」を掲げた。再生可能エネルギーなど重要産業への国の支援を強め、民間投資を呼び込みたい考えだ。保守党政権のもとで劣化した医療や住宅といった分野の改革も進める。

 

労働党は「親ビジネス」を掲げて戦ったものの、法人税などの大幅引き上げの観測がつきまとう。スターマー氏は否定したが、前言を翻せば国民の信頼を失う。また財源の裏づけを欠く政策は首相の進退問題に発展しかねない。

 

不法移民の問題について、労働党は強制移送ではなく国境警備の強化で対応する。評価が分かれる政策であり、今後は丁寧な政策の肉づけが求められる。

 

前回、1997年に政権を奪取した時の労働党は、ブレア元首相の個人的な人気も支えになった。スターマー氏はカリスマ性に欠けると指摘され、政権交代への社会の高揚感も当時に及ばない。

 

今回の総選挙では右派のポピュリスト政党が議席を得るなど、分断の芽も見られた。新政権は異なる立場の人々にも政策を丁寧に説明し、理解を得る必要がある。

 

保守党政権はアジアとの関係強化に動いた。労働党政権にはEUとの関係改善とともに、アジアとのパイプを太く保つよう望む。日本も外交努力が欠かせない。

 

ウクライナ支援を途切らせてはならない。内向き志向が強まる世界にあって、日英はともに自由と平和の尊さを訴えるべきだ。