政権に問われる検察への介入 | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

「経済崩落7つのリスク」、
「マネー資本主義を制御せよ!」、
「緩和バブルがヤバい」、
「日本復活のシナリオ」等の著者による世界経済と国際金融市場のReviewとOutlook

「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アセモグルら)

検察庁法改正案への反対運動が高まった(2020年5月)=共同

掲題の今朝の日経社説。

かなり説得的。

ご参考まで。

 

 

東京高検検事長だった黒川弘務氏の定年延長をめぐり、直前に行われた国家公務員法の解釈変更は「黒川氏の定年延長が目的だった」との判断を大阪地裁が示した。

 

当時、安倍晋三政権に近いとされる黒川氏を検事総長に就かせるためとの批判があがったが、政府は一貫して否定してきた。検察の中立性、独立性を脅かしかねない不自然な対応だったことをあらためて示したといえる。

 

政府は2020年、定年を延長できる国家公務員の規定は「検察官には適用されない」とする従来の解釈を変更した。さらに定年を63歳から65歳に引き上げる

検察庁法改正案を提出した。黒川氏は定年退官間近だった。

 

関連文書の情報公開を求めた訴訟で、大阪地裁は▽定年延長したのが黒川氏だけだった▽全国の検察庁に周知されなかった――ことなどを指摘。「社会経済情勢や犯罪情勢の変化への対応」などとする政府側主張にも疑問を呈し、「(解釈変更は)あまりに唐突で強引、不自然だ」と断じた。

 

検察は時に政権幹部を含む政治家の犯罪を捜査する。それゆえ政治と一定の距離を保ち、法と証拠に基づいて粛々と職務にあたる姿勢が求められている。政権が不当に人事に介入すれば、こうした前提が崩れかねない。

 

政府の対応をめぐってはSNSなどを通じて社会に反発が広がった。大阪地裁の判決は国民の多くが抱いた疑念に沿ったものといえる。政府は重く受け止めねばならない。

 

検察庁法改正案は廃案となり、黒川氏は賭けマージャン問題で検事総長に就かないまま辞職した。だが一連の経緯はうやむやのままだ。政府はいまからでも、この間に何があったのか国民に説明する義務があるのではないか。同じ轍(てつ)を踏んではならない。

 

政権の意向に従った法務・検察も責任は問われよう。近く就任する畝本直美新検事総長は、あらためて職責の重さを肝に銘じてもらいたい。