掲題の読売社説。
日本経済は直近の2024年1~3月期GDP統計が
いみじくも示したように、GDPデフレーターという
付加価値ベースの物価でみて、前年同期比約4%のインフレと、
実質で前期比マイナス成長に陥ったように、
インフレと景気後退というスタグフレーション色が濃厚である。
特に、個人消費は実質ベースで4四半期連続で前期比で縮小して、
長期消費停滞が鮮明となってきている。
そのような消費長期停滞の主要因は、
物価の趨勢的な下落というデフレではなく、
逆に、物価の趨勢的な上昇という
インフレ高進によってもたらされてきている。
つまり、10%という高消費税率に加えて、
約4%の物価高によって、
家計の実質可処分所得が大きく削減されて
長期消費停滞と景気後退が進展してきているのが
日本経済の現実なのである。
それを岸田政権による骨抜きの方針のように、
誤っていつまでもデフレから完全に脱却する等と強弁して、
一方でインフレ下で金融緩和政策を継続して、
他方で、一時的な財政刺激を繰り返すのであれば、
さらなるインフレ高進と長期経済停滞の深刻化が必至であろう。
このように大きく錯誤したキシダノミクスの骨抜きの方針を、
骨太の方針であるかのように持ち上げる同社説は、
読者を深刻にミスリードする
遺憾な主張であると厳しく批判せざるをえない。
日本経済の国際的な存在感が低下していることへの危機感が足りない。政府は、成長を加速させるための中長期的な展望を描き直すべきだ。
政府が「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」を閣議決定した。国と地方の基礎的財政収支(PB)を2025年度に黒字化する財政再建目標は、3年ぶりに明記した。
日本は、デフレから完全に脱却し、成長型の経済を実現させる千載一遇の歴史的チャンスを迎えているとの認識を示している。
今春闘では、33年ぶりの高水準の賃上げが実現した。日本企業は長年、コスト削減に励んできたが、これからは魅力的な製品やサービスを提供して、成長型の経済へと転換する局面に来ている。
それには、賃上げの環境を作り出すことが不可欠だ。中小企業は大企業との取引でコスト増を販売価格に転嫁できず、現状では賃上げの余力に乏しい。
政府は、下請法の改正を視野に価格転嫁対策を進める考えを強調した。具体化を急いでほしい。
日本経済の地盤沈下は深刻だ。ドル換算の名目国内総生産(GDP)は23年にドイツを下回り4位に落ちた。25年にはインドに抜かれ5位になるとの予測もある。
日本の潜在力を生かすための中長期の経済ビジョンを作って、成長を後押しせねばならない。
今回、骨太の方針が、人口減が本格化する30年代以降の見通しを示したのは、その一歩になる。
経済や財政、社会保障の持続可能性を確保するには、経済成長率が実質ベースで安定的に1%を上回る必要があるという。それにより40年頃に名目GDPが現在の約600兆円から、1000兆円程度に増えると試算している。
そのための方策として、脱炭素や経済のデジタル化の推進、海外からの投資拡大、高齢者や女性の労働参画などを挙げた。これらの取り組みに異論はないが、総花的で、いずれも各省庁の既存の政策を寄せ集めた感が否めない。
日本経済の潜在力を生かすことが重要だ。500兆円を超える日本企業の内部留保を国内投資に誘導するための具体策が求められる。企業と大学の連携強化策を練り、技術革新にもつなげたい。
骨太の方針を巡っては、各省庁が、予算獲得で有利になると考え、小粒な政策であっても明記させようとする姿勢が定着している。方針を策定するプロセスの見直しを含め、文字通り「骨太」のビジョンを打ち出す時期に来ている。