掲題の今朝の朝日社説。
かなり説得的。
いずれにしても、
少子化、
長期経済(特に消費)停滞、
大幅円安、
インフレという4重苦に対して、
金融政策の正常化を後回しにして、
一時的な補正予算で財政バラマキに陥る
岸田政権の骨抜きの方針と言わざるを得ない。
大方針を決めた直後に、それを骨抜きにしかねない政策を自ら打ち出す。首相がこんな姿勢では、「経済再生と財政健全化の両立」や「賢い支出」を掲げても、また看板倒れになるのではないか。
政府が今年の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」を決めた。人口減少が本格化する30年度までを新たな改革期間と定め、「危機対応から成長率引き上げに軸足を置いた資源配分へ質を変化させる」とうたう。
財政運営では従来の健全化目標を維持し、昨年打ち出した「歳出構造を平時に戻す」方針も踏襲した。
ところがとりまとめからわずか2時間後の記者会見で、岸田首相は、この秋に新たな「経済対策」をまとめる考えを示した。物価高の影響を受ける家計・事業者を幅広く支援するという。予備費の利用や補正予算編成を伴う大がかりなものになりそうだ。
物価高で困窮する層への支援は理解できる。しかし、コロナ禍以降、自公政権は補正予算や予備費を大きく膨らませ、財政の「抜け穴」にしてきた。こうした手法を繰り返せば、歳出の正常化や健全化目標の達成は遠のく。
骨太の方針で「早期の段階的終了に向け検討する」としたガソリン補助についても、首相は唐突に、年内の継続を表明した。5月分で終えたばかりの電気・ガス補助も再開するという。政権維持の思惑が背景にありそうだが、こうした一律の補助は財政支出も巨額に及ぶ。効率的な手法に早急に切り替えるべきだ。
他の重要政策にも大きな問題がある。防衛と子ども政策で予算の大幅な増額を続けるが、安定財源の確保にめどがついているのは依然、一部だけだ。負担増や他の歳出削減の議論を避け続ける姿勢は、無責任きわまりない。
方針は、賃上げ促進と、脱炭素化や半導体分野などでの投資推進も掲げる。補助金や税優遇で企業を手厚く支援する構えだが、民間の自立的な動きにつながるのか。費用対効果が厳しく問われる。
厳しい財政事情の下での予算編成では、優先度の見極めと、政策の質や透明性を高める仕掛けが欠かせない。立案時に具体的な目標とそれを達成できる一定の根拠を示し、実施後に成果を検証して改善を続けることが重要だ。
骨太方針も「証拠に基づく政策立案(EBPM)」の強化をうたってきたが、実行は一部にとどまる。目標設定や効果測定が難しい分野もあるが、さらに工夫を重ね、場当たり的な財政運営からの脱却につなげていくべきだ。