不動産不況対策 中国経済の浮沈を握る | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

「経済崩落7つのリスク」、
「マネー資本主義を制御せよ!」、
「緩和バブルがヤバい」、
「日本復活のシナリオ」等の著者による世界経済と国際金融市場のReviewとOutlook

「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

掲題の昨日の東京新聞社説。

比較的説得的。

ご参考まで。

 

 不動産市場の低迷が3年にわたって続く中国がようやく政策カードを切った。地方政府が売れ残りのマンションを買い取ることを認めるほか、住宅ローン規制の緩和などを柱とする総合的な不動産支援策だ。ただ、世界経済にとっても無視できないリスクになっている不動産不況からの脱却に有効打となるかは不透明だ。

 

 新華社電によると、中国政府は5月17日に住宅政策に関するオンライン会議を開き、金融や経済政策を担当する何立峰副首相が、一部の売れ残り住宅について、地方政府が「妥当な価格」で購入することを認めるほか、地方政府の助力で未完成住宅を完工させていく方針を示したという。

 

 中国人民銀行(中央銀行)も同日、低迷する不動産需要喚起のため、住宅ローン金利と購入契約時の頭金比率を引き下げると発表。1兆元(約21兆6600億円)規模の貸付制度も確保するという。

 

 今回の発表を受けて、中国株式市場の不動産指数は一時、9.1%上昇したが、事態が一気に好転するかは疑問だ。実質的には既に実施されている政策が目立つ、地方政府の住宅買い取り規模が不透明-など、全体的な力不足を指摘する声も出ている。

 

 とはいえ、不動産大手、恒大集団の債務危機が表面化して3年近く。中国の不動産バブル崩壊は、リーマン・ショックのように世界に危機が波及するのではないかとの懸念もあっただけに、政府がやっと対策に本腰を入れたともいえる点は評価できる。

 

 今後、さらに大胆な不動産政策が必要としても、土地の払い下げや「融資平台」といわれる傘下の投資会社を通じた資金調達で不動産バブルを生んだ地方政府や、バブルに狂奔し、未完成や売れ残りの不良物件を多数抱えたデベロッパーの救済策にとどまってはならない。中低所得層の国民に、住宅を安定供給するという本来の目的を後回しにすべきではない。

 

 何副首相が「不動産の健全性は中国の経済や社会の発展に密接に結びついている」と強調したように、国内総生産の3割は不動産関連部門が占め、その帰趨(きすう)は中国経済を左右する。習政権3期目の経済政策を決める共産党中央委員会の全体会議の遅れが指摘されてきたが、7月の開催が決まった。不動産対策に加え、長期的経済戦略を早急に公表すべきだ。