掲題の今朝の日経社説。
一理あるものの、問題なしとしない。
ユーロ圏と日本は足元でインフレと長期経済停滞という
スタグフレーション色が強く、異なるというよりも似ている。
それなのに、一方で、日本経済に対しては、
政府・日銀にお追従するかのように
(賃金とインフレの悪循環を増幅させかねない)、
「インフレに負けない賃上げ」等と主張し、
他方で、ユーロ圏に対しては、
「経済の実力を上回る賃上げが続くと、
インフレがぶり返しかねない。」等と、
ダブル・スタンダードで明らかに矛盾した主張を
同社説が展開している。
確かに、米経済は持続的な経済成長を続けており、
昨晩の5月米雇用統計でも明らかなように、
インフレ加速懸念さえぬぐえない。
長期経済停滞とインフレの共存という
ユーロ圏と日本経済とは
米経済はかなり異なる。
ユーロ圏経済と日本経済は違いがあるというよりも、
長期停滞とインフレというスタグフレーション化
という視点でみるとかなり似ている。
しかし、ユーロ圏の金利水準は、今回の利下げ後でも、
インフレ調整後の実質ベースでかなりのプラス圏にある。
これに対して、日本の金利は実質ベースかなりの低位水準にあり、
今後も通貨安とインフレの悪循環が増幅されるおそれが強い。
こうしてみると、G7で明らかに最も大きな難題が残っているのは、
日銀の大きく誤った金融政策にあると見ざるを得ない。
なぜなら、2%を明らかに超えるインフレ下にあっても、
「基調的なインフレは2%に未達」だ等と
日銀文学に拘泥することで強弁し続けて、
我が国の長短金利を足元のインフレ率を大きく下回る水準に抑圧して、
一方で株式、不動産、為替レートなどの資産バブルを煽り、
他方で、日本経済のインフレ体質をますます助長しかねない、
以上の意味で、同社説がECBは利下げ後も難題が残るとするのは
もっともな指摘なのだが、ユーロ圏を遥かに超える
資産バブルを煽り続けてG7で最大の難題を
抱える日銀や日本政府を目の当たりにして、
特に「インフレに負けない賃上げ」等と
政府・日銀ともども主張し続ける同社説のダブル・スタンダードや
自己矛盾は目を覆うばかりとの厳しい批判さえ免れないのではあるまいか。
欧州中央銀行(ECB)が6日の理事会でユーロ圏内のインフレ減速を理由に政策金利の引き下げを決めた。物価高の再燃リスクは完全には消えていない。今後の利下げペースは経済・物価情勢を慎重に見極め、市場との対話を重ねつつ柔軟に判断すべきだ。
ECBは主要な政策金利を0.25%の幅で下げた。利下げは4年9カ月ぶりだ。2022年秋に10%を超えた域内のインフレ率は2%台に減速した。ラガルド総裁は記者会見で政策変更の理由を「ここ数カ月、先行きへの自信が全般に高まってきた」と語った。
先進国の利下げへの転換はスイスやスウェーデンが先行し、主要7カ国(G7)ではカナダが5日に先陣を切ったばかりだ。
ドイツやフランスを含み域内総生産(GDP)が世界の15%ほどを占めるユーロ圏の利下げは、主要国の金融引き締め局面が転換点に差しかかったことを示す。
もっとも、主要国のインフレとの戦いがまだ終わったわけではない点には注意が必要だろう。
ECBは利下げの開始後も難局が続く。域内の賃金上昇の圧力はまだ十分には収まっていない。経済の実力を上回る賃上げが続くと、インフレがぶり返しかねない。ECBはこの先の賃金の減速を見込む半面、今回、今年と来年の物価見通しを上方修正した。
ラガルド氏は今後の利下げに関して「スピードや、かかる時間については非常に不確実だ」と話し、データ次第で対応する考えを示した。持ち直しつつある域内景気の動きもにらみ、長い目でみた物価の安定につなげてほしい。
米国では米連邦準備理事会(FRB)が年内の利下げ開始を視野に入れるが、景気や物価の先行きは予断を許さない。
日本はなお金融政策の緩和状態が続く。米欧とは異なる状況のもと、日銀は利上げを含めた正常化のタイミングをうかがう難しい局面にある。米欧中銀の意向や円相場の動きにも目を配り、金融政策の適切な運営につなげてほしい。