掲題の今朝の日経社説。
弥縫策に終始し、
人口減対策に消費増税を主張するなど
問題外の議論を展開している。
誠に遺憾な同社説と言わざるを得ない。
ノーベル経済学賞を受賞した故シカゴ大学教授ベッカー氏の
有名な「多産の経済学」にあるように、
子供を増やすために最も重要なことは、
一時的な補助金や給付金等ではなく、
生涯にわたる家計の実質可処分所得を増大させることが肝になる。
弥縫策は有効でなく、無駄である。
ましてやそのような無効な補助金や
給付金を増やすための消費税増税など論外。
むしろ、家計の実質可処分所得を増やすためには、
消費税撤廃に向けた消費税税率の5%への
恒久的な引き下げが必要不可欠だ。
その上で、インフレを抑制し実質所得を低下させないために、
実質政策金利のプラス圏への浮上を中心に、
金利の正常化を粛々と同時に展開していく必要がある。
同社説は、信頼に足らないキシダノミクスをお追従するかのように、
診断書は正しく見えても、
処方箋がまるで誤っている。
このままでは、長期的に見て、人口は単純計算で
72.7万人かける90年間で6500万人前後となり、
日本の人口も経済規模も半減していくことになろう。
同社説のように誤った処方箋を描く
政府の司令塔を強化しても、
悪政を増幅させるだけに終わるだろう。
同社説は、日本の「自滅の経済学」を読者に誤って
主張しているとの誹りを免れまい。
坂道を転げ落ちるように少子化が加速している。厚生労働省が5日まとめた人口動態統計によると、2023年の日本人の出生数は前年より5.6%減り、過去最少の72万7千人になった。1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率も過去最低の1.20にまで下がった。
少子化は今のままでは若者が未来に明るい展望を持てないことの表れだ。人口急減下で社会機能を維持し、高齢者を支える方策も急がねばならない。国民一人ひとりが未来図を直視し、人口危機を乗り切る変革に踏みだすときだ。
3年で出生数14%減
現状は厳しい。出生数の減少割合を10年ごとにみると、1990年から00年は3%減だが、10〜20年は22%減だ。20〜23年は3年で14%も減っており、減少ペースが急激に加速している。
少子化対策で最優先すべきは、家族を持ちたいという若い世代の希望を後押しすることだ。
政府は「次元の異なる少子化対策」を掲げ、改正子ども・子育て支援法が5日に成立した。児童手当の拡充、誰もが保育を利用できる制度の創設など、子育て支援を強化する。大きな一歩ではあるが、構造的な問題への踏み込みは十分とはいえない。
見逃せないのは、今の社会のあり方そのものが、若い世代を家族形成から遠ざけていることだ。
少子化の大きな要因は未婚化にある。23年の婚姻数は50万件を割り込み、減少幅は6%と出生数の減少幅を上回る。この回復には若い世代の経済基盤の安定が欠かせない。いったん非正規雇用になると抜け出しにくい硬直的な労働市場の改革や、正規雇用との格差是正などが待ったなしである。
古い働き方と社会の意識を変えることもカギを握る。長時間労働が前提のままでは男女ともに仕事と子育ての両立は困難だ。家事・育児分担も、日本は飛び抜けて女性に偏っている。企業、地域、だれもが少子化の当事者であり、できることは多くあるはずだ。
第一に政治の役割は重い。国民に少子化対策の意義や狙いを呼びかけ、必要な協力について丁寧に説明して変革を促すべきだ。
改正法では、財源に現役世代の負担が相対的に重くなる「子ども・子育て支援金」という保険料方式を採用した。低所得でも資産を持つ高齢者に負担能力に応じた協力を求めるには本来、消費税の方が適している。
それなのに政権が今回、消費税率引き上げの議論を早々に封印したのは残念だ。「実質的な負担は生じない」という説明も、負担の議論に真摯に向き合っているとは言えない。
地方の地域社会にも注文がある。若い女性が出生率の低い東京に流出することを問題視し、都市部を批判する声がなお残る。都市部の少子化対策が重要なのはもちろんだが、地域社会が目を向けるべきは自らの足元だろう。
女性や若者が暮らしやすく、働きやすいか。偏見や決めつけはないか。そこに解放感と寛容さがなければ流出は止まらない。
地域社会を見直すうえで、例えば、地域のルールを良いことも悪いこともすべて明文化する「地域の教科書」づくりが一助になる。有力者だけでなく女性や若者も一緒になり、時代にあったルールを話し合うものだ。これを通じて旧弊を見直すことができれば、地域社会は変わりうる。
政府の司令塔強化を
一方、人口減少を前提にした社会のあり方の検討も急務だ。人手不足は急激に進む。省人化の徹底など知恵を結集し、社会機能を維持する方策を見いだしたい。
人口が急減する地域では道路や鉄道、水道、橋といったインフラの維持が困難になる。国土荒廃の懸念もあるなかで居住地や自治体のあり方をどう考えるか。現実的な対策を打ち出す時期だ。
高齢化は着実に進む。効率的な医療や介護の仕組みを追求しなければならない。
特に年金制度への影響は慎重に検証すべきだ。長期的な出生率のメインシナリオである中位推計を1.44として制度が機能していることを確認していたが、足元の状況は低位推計の1.25を下回る。今年の財政検証では出生率への楽観を排し、持続可能性を高める検討をしてほしい。
外国人の受け入れと共生も避けて通れない課題である。政策を総動員するには、政府が司令塔としての役割を強める必要があろう。社会の活力を保つための総合的な戦略を立案し、日本の変革に道筋をつけなければならない。