規正法修正案 生煮えのまま通すのか | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

「経済崩落7つのリスク」、
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「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

掲題の今朝の朝日社説。

かなり説得的。

ご参考まで。

 

 

 政治資金規正法の今国会改正という「公約」は果たせても、国民の政治への信頼を取り戻せるかどうかは、その中身による。具体的な制度設計が今後の検討に先送りされ、実効性が不確かな項目の多い法案を、生煮えのまま、日程ありきで推し進めても、不信の解消にはつながるまい。

 

 公明党日本維新の会の主張を取り込み修正した自民党の規正法改正案が、衆院政治改革特別委員会で、この3党の賛成多数で可決された。きょう衆院本会議で可決され、参院に送られる見通しだ。

 

 岸田首相が維新との党首会談で合意した「政策活動費」の使途公開について、自民の当初の修正案が、対象を年50万円超の支出に限っていたことに維新が反発。限定をなくす再修正のため、一度決めた採決日程を遅らせるというドタバタの末の可決だった。細部を後回しにしたツケが回ったというほかない。

 

 そもそも、政策活動費の公開といっても、10年後のことである。その根拠について、納得のいく説明はない。使用上限を設けるというが、その金額は未定。領収書公開の際に一部を黒塗りにすることもあるというが、その範囲も不明。支出をチェックする第三者機関の設置も、期限の定めはなく、中身は今後検討というおぼつかなさだ。

 

 他党の要求を、検討事項として付則に次々と盛り込みながら、維新を含む野党が共同で求めた企業・団体献金の禁止には「ゼロ回答」だった。ただちに全面禁止でなくとも、規制の強化や透明性の向上にすら向き合わないようでは、カネで政策がゆがめられないかという国民の疑念を払拭(ふっしょく)することはできない。

 

 自民は4月にあった三つの衆院補欠選挙で全敗。その後も、各地の地方選挙で公認・推薦候補の敗北が相次いでいる。それぞれに地域事情があるとはいえ、裏金事件や政治資金改革をめぐる政権対応への評価と無縁ではあるまい。

 

 衆院特別委で各党に割り振られた質疑時間は細切れで、修正案に対する審議は到底十分とは言えないものだ。

 

 きのう初めて特別委で答弁した首相は「政治資金制度への信頼を高め、民主主義の基盤を強固にする強い決意」を語った。本当にそう思うなら、参院で十分な審議時間を確保し、国民の多くに得心してもらえるよう、さらなる修正もためらうべきではない。

 

 衆参の議院運営委員会で協議を始めることがようやく決まった、調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の使途公開を、今国会中に実現できるかも問われている。