掲題の今朝の毎日社説。
かなり説得的。
ご参考まで。
バイデン米大統領が連邦議会で一般教書演説を行った。トランプ前大統領との一騎打ちが確実視される11月の大統領選に向け、1期目の実績をアピールし、対決姿勢を鮮明にした。
コロナ禍で経済が落ち込む中、記録的な雇用を創出し、失業率は50年ぶりの低さになった。インフレも抑え込んだ。
こう成果を強調し、トランプ氏退任時の「瀬戸際の経済」を立て直して「今や、世界が我々の経済をうらやんでいる」と豪語した。
だが、世論は額面通りには受け取っていない。それだけの経済対策を打ってなお、政権の支持率は低迷を脱せないでいる。
理由は明白だ。巨額の財政出動が物価高騰を招いた側面は否定できない。物価はひところより落ち着いたとはいえ就任時より高く、有権者の肌感覚はなお厳しい。
経済の再生によって格差を縮小し、分断を修復に向かわせるという政権の戦略は思うように進んでいない。むしろ国民の不満は高まり、分断は広がっている。
とりわけ失望感を広げているのが、「自由と民主主義が攻撃されている」と言いながら、有効な対策を打ち出せていないことだ。
非人道的な武力行使を続けるイスラエル寄りの中東政策には、若者層や非白人から批判の声が上がっている。予備選では抗議票が約2割に達する州もあった。
トランプ氏は敗北した前回大統領選の結果を否定し、連邦議会議事堂襲撃事件などを巡る裁判を控える。政敵に報復すると宣言し、合法移民の排除など憲法に抵触しかねない政策も視野に入れる。
民意を軽視し、独善的な振る舞いがまかり通るなら、憲法に立脚する市民本位の政治を掲げた建国の精神に反する。
投票まで8カ月だ。81歳という高齢への不安もくすぶる。米国の民主主義を守り抜けるか。バイデン氏の実行力が問われている。