デ・キリコ展 | けろみんのブログ

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2024.5.4


デ・キリコ展

東京都美術館 2024.4.27~8.29


デ・キリコ展に行きました。あまり実物を見た記憶がないけれど不思議な世界が魅力的な画家だと思います。





ジョルジュ・デ・キリコ(1888~1978)はイタリア人夫婦の子でギリシャで生まれ、ミュンヘンの美術学校で絵画を学び、主にイタリアで活動し、晩年はローマのスペイン広場の近くに居を構えました。90歳とかなり長生きです。

今回の展覧会で1番感心したのは会場の作りでした。私が思うに東京都美術館の館長がもと三菱一号館美術館の高橋館長に変わってから垢抜けたような気がします。


入口の挨拶文ははキリコの絵によく出てくるモチーフのアーケードの形をしていて、2つ読んで次に進むと文章のところが空洞になり、会場の風景が絵画になったかのようでした。展示の途中でも同じように次の作品に進むと空洞でそこから見る会場風景はキリコの絵に閉じ込められたような不思議な感覚でした。色もキリコの絵によく出てくるレンガ色がメインで動線もスムーズです。


「風変わりで色とりどりの玩具でいっぱいの奇妙なミュージアムを生きるように、世界を生きる」

これは、会場に書いてあったキリコの言葉です。



1910頃から「形而上絵画」という歪んだ遠近法や脈役なく配置されたモチーフを駆使したもの、謎めいた風景、歪んだ遠近法 象徴的イメージを特徴とする幻想的な作品を描き、シュールレアリスムの画家や未来派の画家に影響を与えました。




シュールレアリスムが生まれる前から、描いていた独自の世界。これらはキリコの幼少期の思い出だったり、各地を旅してみたものに刺激を受けたもので構成されています。トリノのタワー(映画博物館になっている)オルヴィエート、フィレンツェなどキリコの心を刺激した風景は、観光客目線とは別の特別な姿をしていたようです。




印象的なのはルノアール風のキリコ作品、いつものモチーフであるマヌカン(マネキン)が、ふんわりした色合いと細長い筆致でまさにルノワール。Photoshopで加工したかのように笑っちゃうくらいルノワールの雰囲気とキリコの形而上がまったく合ってません。そこがシュール。


(メモ)


違和感や不安、憂愁といった日常の神秘や謎をほのめかすもの



人間が排除されたかのような抽象的で精神的な室内画


キリコの原体験には次のようなものが挙げられます。


・手が届くほど低いギリシャの空。 晴れてるイメージのギリシャは実際には天候の悪い時期もあることが関係してるのか?わかりませんけど。


・ギリシャの海で海水浴する時脱いだ人と来てる人の違いにびっくりした。服を着てるとひとは大きく見えるが、脱ぐととてもか弱い存在になる。


・地震があると運び出される家具の違和感。家の中のものが外にあると非現実感がある。絵画では、逆に家の中に遺跡、建築物や自然風景を取り入れなんだか居心地の悪い雰囲気を作っている。






シュールレアリストと決別したり、贋作が沢山出回ったりと何かとトラブルに見舞われた晩年、ローマで独自の世界を描き続けたデ・キリコを再認識できる展覧会でした。



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