デイヴィッド・ホックニー展 | けろみんのブログ

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2023.7.29



炎天下の中、デイヴィッド・ホックニー展を見に東京都現代美術館にいきました。今日の天気のようにくっきり冴えた色合いが美しい展覧会でした。

初めの3階エリアではテートと、東京都現代美術館所蔵品が主です。1階の展示は、作家蔵が多い印象です。土曜なのにとても空いていて見やすかったです。


第1章 春が来ることを忘れないで


明るい黄色のラッパスイセン。2020年にiPadで描かれ、発表されました。コロナ禍もいつかは終わるから希望を持ってという意思が込められています。同時に東京都現代美術館所蔵の1969年作の水仙の版画が並べられています。



ノルマンディーの12ヶ月より。春を待ちわびる気持ちが分かる。



第2章 自由を求めて


初期の作品です。うつ伏せになった2人の男性がベッドで楽しそうにしている作品が先ず目に飛び込んできました。素敵だな、と思ったら色んなグッズになっていてなるほどと思いました。「1度目の結婚(様式の結婚)」やその他、色々な技法を試しているのが分かります。ホックニーは特に派や主義に属さなかったのですが、フランシス・ベーコンの活動時期が重なっているのでかなり影響を受けたと思いますが抽象画はホックニーの目指すところではなかったようです。


第3章 移りゆく光


1964年にアメリカに移住した頃の作品群です。刻々と変化する光の反射、水の動きと透明感を表すために様々なアプローチをしています。「スプリンクラー」はアメリカの家の前庭にスプリンクラーが勢いよく噴出しています。おかげで庭の緑も濃くて豊かな暮らしを表していますがとても人工的なアメリカの明るさを人工的に描いた皮肉めいた作品でもあります。


第4章 肖像画


70年代、色んな技法を試した末、過不及ない明快な線描の肖像画を沢山描きました。有名な方が多いです。ダブルポートレートという2人を描いた連作の名品3点が今回テートから来ています。どれも不思議な遠近法を持った作品で、細部まで丁寧に描き込まれています。どれも二人の関係性や性格などが分かりやすく、人間味溢れる表情をしていました。「クラーク夫妻とパーシー」ではボッティチェリ風の巻き毛の女性が腰に手を当て立っていて、男性が猫を乗せて椅子に脱力して座ってます。奥様綺麗な方なのに、何となく怖い人に見えてきます。脱力した男性は、奥さんの前ではしおらしくして女遊びにふけってそう。

「両親」お父様のポーズが現在のホックニーと似ていて面白いです。お母様は「私はキチンと育てたわよ!」という顔をし、お父様は「もう細かいことは知らん。」という顔です(全部妄想です)



これはダブルポートレートの新作が元になっています。




第5章 視野の広がり


80年代、ピカソの最後の摺師であった人と話すことで間接的にピカソのことを知り、キュビズム的な世界の見方を再確認。益々パースペクティブというんでしょうか、そんな感じのものが複雑化してきます。「龍安寺の石庭を歩く」はホックニーの目指す複数の視点から見たものを1つの平面に表現した庭。昨年京都で龍安寺に行き石庭をみたので遠近法で描かれた庭と石庭で座ってじーっと眺めていた時の光景を思い出します。あの寺は有名なんですね!りゅうあんじじゃなくてりょあんじなんですね。


第6章 戸外制作


ウォーター近郊の大きな木々またはポスト写真時代の戸外制作」は、2007年の作品です。大作です。メイキング映像をみると、元になった場所はどこにでもありそうな林、その横に家があります。ホックニーはこれをその場でデッサンし、構想を広げてロイヤルアカデミーの壁一面を埋め尽くす50枚の作品に仕上げました。壮観です。木々が春を待ち、枝を広げて待っているようです。後ろに行くにつれ木々はピンク色になり、花を予感させます。ホックニーは実家そばの見慣れた光景を特別な場所にしました。木から葉っぱが出てくるまでの2ヶ月ほどで仕上げたとのこと。ここでの、ホックニーの解説ビデオ映像は面白いので必見です。


第7章 「春の到来 イースト・ヨークシャー」


ここから1階の展示になり撮影可能です。ホックニーは四季の移ろい、特に春がお好きなのでは、と思いました。ヴィヴィットな色で表現された章題の作品は大きくて周りも春を感じさせるピンクがあちこちに散りばめられていて素晴らしい。この作品はポンピドゥーセンターに寄贈されたそうなので、パリを華やかに彩ってくれるでしょう。作品の前を横切るナマニクさんが、このカラフルな森に入っていくみたい。

春のもたらす喜びや美しさ、秋〜冬には共感できるのですが。毎日35度とか既に「温かい」という概念が消えて「暑い痛い焦げる」になった今、春の生ぬるさに共感できません。でも美術館の中はめちゃくちゃ寒いので比較的思い出しやすいかも。





第8章 ノルマンディーの12ヶ月


モンサンミッシェル、シェルブール、ル・アーヴルなどで知られるノルマンディー地方に暮らしたホックニーは、コロナ禍もなんのその、タバコをスパスパ吸い、iPadを駆使して90m以上の、身近な戸外の木々、家、農場などが四季の移り変わりで変化していく様を描いています。この長さには横山大観もビックリでしょう。駆け抜けるように見ると「ノッティング・ヒルの恋人」という映画のモンタージュのように素早く変わり、ゆっくり見ているとあれ?どこから変わったんだろうと四季の境目が曖昧になってきます。ホックニーの世界に入り込んだみたい。光や空気を感じられます。春と夏が長くて、冬が少ない印象。

ホックニーはiPadを、2010年発売と同時に購入したそうです。私も同じ年に買いました!そういえばお絵描きもしてみたっけ。汗







ナマニクさん新作レビュー!

 

 


https://www.banger.jp/movie/98830/


 

 https://twitter.com/namaniku29/status/1686613812898922498?t=hvfAvc4TtrRpS633nXK79w&s=19


ナマニクさんが、音楽を担当しています!