甲斐荘楠音の全貌 絵画、演劇、映画を越境する個性 | けろみんのブログ

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2023.7.2

甲斐荘楠音の全貌 絵画、演劇、映画を越境する個性


東京駅丸の内北口を出るとすぐ、紫外線を浴びずに済む 東京ステーションギャラリー. 8月26日まで。

京都からの巡回展でとても楽しみにしていました。

甲斐荘楠音は昔から好きな訳ではなく、画家の友人が大好きで千葉市美術館で開催された「岡本神草展」で見た
「横櫛」との出会いが最初です。
(京都国立近代美術館所蔵の方)

序章 描く人
小さな個展と言える章になっています。甲斐荘の画業の全体が見渡せるつくりです。

「横櫛」
なんとも言えない顔の微妙なぼかし方、儚げな笑み。「処女翫浮名横櫛」という歌舞伎の演目を真似した兄嫁に着想を得たとのこと。まとわりつく妖気も魅力です。今回の展覧会では7月30日まで、オリジナルの「横櫛」と並んで展示されています。こちらを見るのは初めてで後から手を加えたためにマネキン人形みたいなおかしなお顔になってしまいましたが、着物のてろんとした風合いや背景など見所がいっぱいです。尚、原画は国画創作協会展に出品した頃の絵葉書などから推測が出来ます。
この作品にはもう1つバージョンがあるようです。1度見てみたいです。






「春宵」
これは未完の作品で、太夫がドンと構えています。かなりグロテスクに顔の陰影が描かれています。この作品によく似た、甲斐荘自身が花魁姿になった写真があります。ちょっと見では男性と分からないくらい美しい。甲斐荘はセクシャルマイノリティだった、と書いてありました。ひょっとして性同一性障害なのかな?と感じました。

「美醜相半ばする人間の生々しさを巧みに描写した」という言葉に深く頷きました。

「遊女」
裏地が歌舞伎役者模様の絣のような着物を羽織り、階段で物思いにふけっています。かなり思いつめた顔をしています。一体何を悩んでるの?と気になる作品です。

「母」
デッサン画と本絵が並んでいます。ダ・ヴィンチや、ミケランジェロに造詣の深い甲斐荘らしく、体を丸の集まりのように立体的に描いています。本絵の方は少し沈んだ顔つきと顔の膨らみが少し取れています。お母様は普段からこんな表情なのでしょうか。

第1章 こだわる人

「春」
甲斐荘は、いままでに描いたほの暗く陰鬱な雰囲気を出すのをやめてどぎつくないピンクや水色の着物を着た女性が寝転んでなにか飲んでいます。目線の先には何があるのか。謎めいた微笑を浮かべています。……この作品は長いこと所在不明だったところ、メトロポリタン美術館が買い上げ、今回日本初公開となったものです。


その他スケッチ、スケッチブック多数。裸婦のモデルが中々居なくて困ったとか。
そして沢山のスクラップブック。これをイメージソースとして使っていたのではないかということ。甲斐荘が「美しい」と思うものはどんなものかが伺い知れます。胸毛の外国男性がやけに印象的でした。

第2章 演じる人

京都、洛中生まれで幼い頃から歌舞伎など演劇が大好きな甲斐荘。自ら女形として舞台に立つこともあったそうです。女形のことを、「あんな年配の男がどうしてあんなに美しくなるのかその不思議を見たかった」と言ってます。甲斐荘の女形や花魁姿は美しいけどナマニクさんには勝てないかなと思いました。



第3章 越境する人

甲斐荘は1940年代初期に画業を中断して映画の道に進みます。陰湿な体制の画壇から離れたかったようですが、映画界はどうだったんでしょう。
溝口健二監督は「甲斐荘君が手伝ってくれると品が良くなる」と褒めました。衣装・時代考証・風俗考証家としてどこの映画会社でも好評のようです。関わった映画本数は236本!時代劇映画の絶頂期を影で支えました。
ここでは、東映の「旗本退屈男」シリーズの衣装が展示されています。もう60年ほど前の映画の衣装は豪華で、確かに品がありました。川端龍子や尾形光琳にインスパイアされていると思われる衣装もありました。でも1番面白かったのはプレスで、宣伝のポイントが包み隠さずに書いてありました。タイトルロゴも何パターンか付いていて、雑誌に載せる時はここから切り貼りするのかな?と思いました。
東映のポスターには甲斐荘の名前は出てきてなかったと記憶してます。松竹のポスターにはありました。



終章 数奇な人

序章に晩年に描いた色紙が2点展示されていますが描きかたは若い頃と全然違います。
この章では大正時代に描き中断された
「畜生塚」





1915~1976年の個展まで手を入れ続けた「虹の架け橋」があります。圧巻です。この作品を個展に出すにあたり、顔の部分を洗い直して描き変えてるそうです。生涯止むことのない甲斐荘の美の追求を物語っています。

大正時代デロリの魅力から、華麗に女形を演じたり、映画の世界ではアカデミー賞ノミネートされるほどの活躍ぶり。その全貌を見せて下さりとても感謝しています。

甲斐荘の花魁姿もよいですが、うちのナマニクさんの花魁姿はもっと魅力的なので見てください。甲斐荘先生にお見せしたかった……


 ナマニクさん音楽作ってます!

 


 ナマニクさん寄稿してます!

 

ナマニクさんがパンフレットに寄稿しました!