大阪の日本画 | けろみんのブログ

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大阪の日本画

2023.4.15~6.11

東京ステーションギャラリー

竹橋の近美から大手町まで一駅乗って歩いていきました。

近代大阪の日本画を集めた展覧会は史上初だそうです。

以前泉屋博古館東京でレクチャーを受けた時、大阪の絵画は「個人の邸宅を飾る作品であるため小さく控えめな作品がおおい」と教わって、そういえば京都画壇、東京画壇とはいうけど大阪はどうしちゃったのだろう?と考えてましたが、今回中之島美術館蔵が中心となった素敵な展覧会になりました。

大阪では、伝統に囚われない自由闊達な表現が発達していったとのことです。


北野恒富 1897に来阪し、人物画を描く。人の内面を画面全体で表現することが上手いです。

市井の感覚を敏感に感じとり「宝恵箱」や「いとさんこいさん」は大阪の文化に主眼を置いています。

悪魔派と呼ばれ、怪しい魅力の女性像が多い中、報道写真の代用として人物の肖像を精巧な線描で表す仕事もしていただけあり、超写実的な絵画もすばらしい。大正時代と昭和時代でだいぶ描き方が変わっています。

「いとさんこいさん」は、色違いのあざみ模様の着物姿の姉妹が縁側でのんびりしている作品。大正時代へのノスタルジーを感じる作品です。北野恒富は、着物の柄や組み合わせにも精通していて柄には物語性があるのです。

「宝恵箱」は大阪の祭りの賑わいの中俯く若い女性を描いたもので赤いトーンで統一され華やかです。衣装の一つ一つ丁寧に描いてあります。年頃の子がこの作品をみたら「あ、これ欲しい!」となるでしょう。絞りの帯揚げが黒くて画面を引き締めてます。



東京展では、1章の後いきなり4章に飛びます。田能村直入ら、文人画です。

大阪では漢詩や漢文の教養を身につけた市民が多く文人画が人気だったとのこと。中国趣味が流行ってたんですね。遠くから見ると花の絵に見えるけど点景に人物が描かれていて美しい作品がありましたが名前忘れました。


次が5章の船場派と呼ばれる画家たち。「細雪」の世界を連想します。

繊維の取引が活発で商家が多い地域で独特の雰囲気があるそうです。船場地域の家の床の間をかざった、花鳥、故事人物画、大阪の名所絵が主体です。あっさりして品のいい、瀟洒な自己主張しすぎない作品なのも特徴。船場派は個人向けで、本人の個性よりも注文に答え求められたものを描いているので、大阪の商人が求めていたものを知ることが出来ます。「白雁鶏頭図」はあっさりした作品が多い中濃い着色がされ、そろえた雁の足がとてもかわいい。


3章新たなる南画を描く


矢野橋村

今治市うまれ、17歳で大阪の軍需工場に勤務するが作業中の事故で左手首切断 。新南画は、大阪の近代日本画の代表で矢野橋村を中心に型にとらわれない新たな南画を追求しており、とても大きな画面やフォルムに新しさを感じ、今回の展覧会は知らない画家を色々知ることが出来て良いなぁと思いました。


2章文化を描く

菅楯彦は軽妙洒脱、大阪の伝統文化や、風景を描きそこに賛を入れるスタイルが人気になりました。「舞楽青海波」は小物に至るまで入念に描かれていてこのまま舞を見たくなります。

生田花朝は昭和の画家で、お祭りに沸き立つ庶民を描くのがとても上手いです。


6章新しい表現の探求と女性画家の飛躍


島成園、木谷千種、吉岡美枝、

生田花朝と言った女性画家が活躍しました。むかしは女流画家と言いましたが、最近はやっと女性というようになりましたね。


久保井翠桐

今村紫紅に先がけて新しい画題を求めてインドにいった人。熱国絵巻というついさっき見てきた「熱国之巻」と似た作品がありました。インド趣味が流行ったか、流行らなかったかは分からないけど当時はエキゾチックなムードは人目を引いたでしょう。私は日本画は日本が題材でいいじゃないかと思うんですけどね。


女4人の会

大阪三越で美人画を並べた展覧会をするなど、活躍したが生意気だとクレームもたくさん貰い、2回目は実現しなかったのです。当時の女性画家は、師匠に手をつけられたり、画家に嫁ぐと旦那を立てる為画業を断念したりハードルが高いにも関わらず良い作品がそろってます。島成園の「祭りのよそおい」は、裕福な子供、普通の子供、貧しい子供の3種類の女の子が横スクロールで描かれていて、普通の子供も裕福な子を羨望の眼差しで見てる、その様子を貧しい子供が遠巻きにみてる。風刺的な所もありながらも祭りが楽しみで仕方ないワクワクした雰囲気が感じられます。




上品な船場派、ダイナミックな新南画、細やかな表現の女性画家……画家の系統も張り出されていて分かりやすく珍しい作品発見!な展覧会でした。後期になると作品がガラリと変わるので行けたらいいなと思います。