今回の選挙、防衛費GDP1%枠の撤廃を公約として掲げる政党が現れた。維新の会である。
最近も防衛費拡大を訴える保守政治家がいなかったわけではないが、党の公約に設定するところまでもっていった例は、近年久しく見ていなかった気がする。バブル崩壊後の長引く不況で、「1%枠」というのは言いにくくなっていたのかもしれない。
ボクのリアルタイムな記憶として、最初に「1%枠」というものが刻まれたのは、前世紀の80年代・中曽根政権期だったと思う。(当時は「GNP1%枠」といっていた。)あの頃は、漠然と軍拡に対する危機感を抱いたものだ。ただ、すぐに戦争が起こるというような危機感は、正直なかった。冷戦も緩和されつつあったし。むしろ、冷戦の深刻さが低くなり、平和な時代に向かっているときに、なぜ「1%枠」撤廃なのかという思いが強かった。
しかし現在の「1%枠」撤廃には、リアルな戦争への危機感を感じる。自民党の「国防軍」や9条撤廃についても同様の危機感を感じるが。80年代当時は、実際問題としてソ連との戦争というのは、起こるかもしれないが、起こったらもう世の中の終わりというくらいのフィクション的な感覚だった。
ただ、現在の「1%枠」撤廃・「国防軍」・9条撤廃は、どれも現実の戦争と背中合わせの、切迫した危機感を感じる。
維新の会も自民党も、自分たちが政権を取ったら、尖閣諸島に何らかの構造物をつくり、公務員を常駐させるといっている。一方、中国は、日本が尖閣諸島に構造物を作ったり公務員を常駐させれば、本気で軍事行動を起こしかねないような行動を実際に起こしているし、また自信に満ちあふれている。実際に、尖閣周辺海域に、監視船だけではなく軍艦を派遣しているのは、日本がこれ以上の行動をすれば、軍事行動を起こすというサインだ。
自信に満ちあふれているのは、人民解放軍だけではなく、中国の一般世論も同じ事。いや、むしろ軍よりもコントロールしづらい自信に溢れているといった方がいいだろう。日本が何らかの次のステップに踏み出した場合、それに対して軍事行動を起こすよう求めるナショナリズム的な言論・暴力が中国国内に充満することは間違いない。それを中国政府が押さえ込むことは、現状では非常に難しいし、押さえ込みきれなければ、実際に軍事活動に及ぶ可能性は極めて高い。
つまり、戦争が起こる可能性は、極めてリアルな現状として眼前に迫っている。 自民党や維新の会に政権を取らせたら、本当に戦争が起こるというリアリズムを、どれだけの国民がもっているか。3日後の選挙予測では、自民党単独過半数といわれている現状は、極めて憂うべき対外的危機の幕開けとしか思えない。
維新の会が掲げる「したたかな日本の構築」、実にけっこうだ。しかし、したたかな態度というのは、軍事力などを背景とせずに立ち回れる能力のことではなかろうか。軍事力を背景とする立ち回りなど、ただの蛮勇に過ぎない。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121129-00000119-san-pol
維新公約、具体像乏しく 「八策」妥協、揺らぐ理念
産経新聞 11月29日(木)14時39分配信
■原発フェードアウト/TPP両にらみ/定数削減あいまい化
日本維新の会が29日未明に発表した衆院選公約「骨太2013-2016」は、具体性に乏しく、曖昧な表現が目立つ内容になった。合併した「太陽の党」側への配慮から党綱領「維新八策」で掲げた政策から妥協する一方、脱原発を旗印に結成し、第三極を二分する形となった「日本未来の党」を意識したためとみられる。公約は、石原慎太郎代表と代表代行の橋下徹大阪市長が29日午後、都内のホテルで記者会見し、正式に発表した。
◆基本方針
「維新八策の価値観、理念に基づいて、日本を賢く強くする」「少子・『超』高齢化社会を生き延びる、したたかな日本を構築する」とともに、「自主憲法の制定」が盛り込まれた。
憲法改正をうたった八策から、太陽の主張を取り入れてさらに踏み込んだが、現行憲法の問題点や、目指す憲法の方向性や具体像は示されていない。
◆エネルギー
「先進国をリードする脱原発依存体制の構築」をうたいルールの厳格化を掲げ、政策実例では「結果として、既設の原発は2030年代までにフェードアウト(段階的廃止)することになる」とした。原発廃止路線を変更した形だが、「フェードアウト」との表現はあまりに曖昧だ。脱原発までの具体的な工程や、任期中に何をするのかは判然としない。
最小エネルギーで最大のパフォーマンスを上げ、自然エネルギーのフル活用もうたったが、具体的な政策、目標値の言及はない。
◆経済・財政
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)は「交渉参加、ただし国益に反する場合は反対」と、両にらみの姿勢になった。
八策では「TPP参加」と言い切ったものの、公約原案では慎重な意見がある太陽出身者に配慮し、盛り込まれなかった。結局、両にらみの表現は、議論の生煮え観が否めない。そのうえ、反対条件の「国益」の詳しい言及もない。一方、「農業の成長産業化」が打ち出され、農協法の改正や「第2、第3の農協的組織育成」を盛り込み、農業分野への競争原理導入を色濃くした。「戸別所得補償制度」の適用対象を専業農家に限定する。
従来の公共工事拡大路線ではなく、競争力強化路線による経済成長を目指すとした。名目成長率3%以上、物価上昇率2%の数値目標を設定。日銀法の改正により政府と日銀の役割分担、責任の所在を再構築するとした。
◆社会保障
財源として「年金目的特別相続税」を創設し、広く、薄い相続課税をうたう。また、高齢者雇用の創出をはかったうえで、年金支給開始年齢を段階的に引き上げ、所得に応じて医療費の自己負担割合に差を設ける。年金制度は賦課方式から積み立て方式に移行し、世代別勘定区分を設置。生涯を通じた受益と負担のバランスを保たせるのを基本とし、例外的に世代間の財源移転がある場合は、世代別の勘定区分間の資金収支と貸借関係を財務情報として国民に開示するとした。
一方、八策で給付水準の引き下げや医療費削減など厳しい内容を並べた生活保護政策には触れなかった。
◆国家システム
太陽側が慎重姿勢だった議員定数削減の規模は、八策の「半減」から「3割から5割」に曖昧化した。
一方、政党に対する企業団体献金は個人献金を促す制度と引き換えに、八策に盛り込まれた禁止を再び打ち出した。橋下氏は20日、旧太陽との政策合意の中で、禁止から方針転換したことを明らかにしていた。
参議院の抜本改革として、橋下氏が提唱する自治体首長との兼職禁止規定廃止を明記。一方、統治機構改革のための憲法改正には参院の廃止を盛り込んだ。
◆外交安保
「したたかな日本の構築」とともに、基本方針の一つに「実効支配力を強化」を挙げ、防衛費GDP1%枠の撤廃を掲げた。