笹生陽子「ぼくらのサイテーの夏」 | 娘がやっている栄養療法を父と母もやってみるブログ

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娘が2026年中受予定。娘のチックを治そうと4年前から栄養療法に取り組んでます。

笹生陽子「ぼくらのサイテーの夏」



笹生陽子「ぼくらのサイテーの夏」は11章から構成されたひとつづきの作品で、10章が2008年第2回のJBの試験に出題された。詳しくはp145〜p156の5行目まで。ただ、p145の8行目の「おかあさんが家の用事をよくするようになったので、そういう意味でも[いい子]のぼくの出番は、だいぶ少なくなった。」の部分だけなぜか省略されている。


この作品を短くまとめると、主人公の「ぼく」が仲間と危険な遊びをした罰に夏休み、栗田とプールを掃除することになるが、栗田と心を通わせるようになったことをきっかけに、引きこもりだった兄が復帰したり、ぼく自身の心境の変化があり、いろいろといい方向に進むという話だ。


2006年第1回のJBの試験に出題された「美乃里の夏」は5年生の少女と少年が銭湯の掃除を手伝う話で、設定がなんとなく似ている。


この文章が気に入った


p147

「いいか、テストはその日の【運】を占うためのもんじゃない。それまでにした【努力の成果】を知るためにあるものなんだ、高跳びだって、跳び箱だって、その場でひょいと逃ぶんじゃなくて、長い長い助走をつけて、それではじめて眺べるんだから」





【あらすじ】

1

猛暑の続く夏のある日、ぼく(桃井)、ヒロくん、カバちゃん6年4組チームと6年2組チームが「階段落ち」と呼んでいるゲームをしていたら負けてしまい、ブチ切れたぼくは階段から変な落ち方をして前歯は欠け、左腕を骨折する。


2

階段は閉鎖され、緊急職員会議に親子で呼び出されたあげく、反省文を書いたあと、四週間のプール掃除の刑が言い渡されるが、みんな掃除なんてやりたくないので文句を言う。一番責任が重いぼくが一人でやると言うと、2組の栗田もやると名乗り出てくれる。掃除する日がきた。掃除を二人でしてお昼になる。カバちゃんとヒロくんがお昼ごはんを持ってきてくれた。カバちゃんは栗田のうちは家庭崩壊してお母さんが家出していると教えてくれる。


3

掃除を終えて帰宅すると、兄(トオル)が暴れたあとだった。兄は一流大学の付属中学校に通っていたが、一年生の三学期で行くのをやめて、今年の春から暴れるようになった。その頃、父が単身赴任で大阪に行ってしまう。ぼくはこのことだけは誰にも話せないでいる。


4

掃除四日目からぼくも栗田と同じように昼ごはんは一人で食べるようになる。友達に見捨てられたわけだ。栗田は一匹狼で下の子どもたちに人気がある。


5

兄がナマズになってからぼくの家のなかでの立場や地位はぐんと上がった。公園からの帰り道、栗田とばったり会う。妹と一緒に散歩中だった。栗田いわく、妹は聞こえるくせに聞こうとしない、見えてるくせに見ようとしない病気らしい。夜のせいかぼくらはいつもより身ぶり手ぶりがおおげさで明るく妙におしゃべりで会話が弾みまくった。



6

次の日の昼、ぼくと栗田は初めて一緒に食事をする。栗田の妹の名前は希望(のぞみ)といって八歳だが学校には行かず施設に通っている。栗田は中学を出たら働くつもりらしい。今日はおやじ先生と三人で話をしながらプールわきの雑草むしりをする。雑草はなんで大事にされなくて、花壇の花は大事にされるか、花壇の花は綺麗だから大事にされ、雑草は引っこ抜かれるのは差別だという話になる。



7

父から仕事で地元の花火大会を見に帰って来られないと電話があった。その後、母が無気力になる。兄きも気にしている様子。兄きを散歩に誘うと遊園地なら行くと言う。ソフトクリームをズボンに落として笑いころげたり、ぜんぜんフツーだった。いろんな乗り物に乗って、最後に入ったミラーハウスで兄とはぐれたが、見つけた時、兄はうずくまって泣いていた。



8

その時の兄きのことは誰にも話さなかったが、その日を境に兄は少しづつ変わっていった。決まった時間にシャワーを浴び、そのあと一緒に夜の散歩に出かける。散歩の途中、栗田によく会う。手首のギプスが外れた。まとめテストは勉強してなかったのでだめだった。栗田が二日続けてプール掃除を休んだ。先生に住所を聞いて、兄と訪ねると凄い豪邸だった。栗田の父親が倒れて入院したので掃除を休んだらしい。栗田の父親はコンピュータの会社を興しだ、今は社長を退いて顧問をしている。そして父親がいつも家にいるから母親が出て行ってしまった。のぞみがとても絵が上手いことに気がつくトオル


9

栗田の妹からハムスターの赤ちゃんをもらった兄きは自分で世話するからと母親に宣言する。「もうガマンしないんだ。これから自分のやりたいことを、自分のやりたいようにする。」花火大会の次の土曜日、カバちゃんに呼び出される。家業の花屋が潰れそうだという。帰宅すると父親が突然帰宅して、居間にいる兄きを見て驚く。


10

〜〜ここから出題〜〜

父親は特別なことはせず、四人で過ごしたあと日曜の夜に帰る。夏休みも終わりに近づいている。塾のない夜、毎晩ぼくは机にむかい勉強をするようになった。(通っている塾というのは進学塾ではなく、だらけた補習塾)プール掃除最後の日。二人だけで泳いでいいという。ぼくは最初は栗田のことがキライだったと言うと、栗田はぼくのことをスキでもキライでもないという。なぜキライではなくなったかというと、時間に厳しく約束を守るからと言うと、栗田の父親に「世間に信用されたかったらまず約束を守ること。人の時間を盗まないこと」と言われたのだという。

〜〜ここまで出題〜〜

その6日後、栗田の家が燃える。栗田と妹は散歩中で大丈夫だったが、父親が少しやけどした。父親は金庫とかではなく、ハムスターのおりを持ち出したらしい。九月になっても栗田は学校に来ない。電話がきて埼玉の親戚の家にしばらくいるらしい。父親はまた会社を作り、母親はそのうち家に戻るという。


11

こうしてぼくらのサイテーでサイアクの夏は終わりを告げた。ぼくは地元の中学に通い始める。兄きはぼくより一足さきに私立中学に復学して一つ下の同級生に混じって勉強している。医者をめざすのだという。ぼくはだらけた塾はやめ、毎晩一時間だけ自主学習をするようになった。友達と大勢でわいわいやるのもやめ、一人一人と付き合うようになった。鈴木、吉田、ヒロくんとは会わなくなったが、カバちゃんとは仲良く付き合っている。カバちゃんの家はフードショップ樺山に変わった。ぼくは埼玉から2時間かけてやってくる栗田と小学校の前で待ち合わせる。


【試験問題について】

甘めの自己採点で67点で少し難易度高め?


問13(10点)

ーーー⑨「あいつも、捨てたもんじゃないんだ」とありますが、「捨てたもんじゃない」という言葉から分かる、このときの「栗田」の気持ちを説明しなさい。


ステップ①

気持ち問題なので、「◯◯気持ち。」で締める。


ステップ②

以下の会話に注目


ぼく「おじさん、なかなかいいこというね」

栗田「だろ? おやじも、いまはああだけど、むかしはビシッと決まってたんだよ。おやじみたいになりたい、なんて思った時期もあったしさ」


つまり、「今はああだけど」、昔はなかなかいいことを言っており、栗田自身も「おやじみたいになりたい」と思っている時期もあったことが読み取れるわけで、ではどんなことを言っていたのかといえば、


その前の栗田のセリフ「ああそれ、親のエイキョウなんだ。とくにおやじがうるさくて。なんてったかな。ああ、そうだ。世間に信用されたかったら、まず約束を守ること、人の時間を盗まないこと」のうち下線部分を引用してみる。


そして前の方の記述、ぼく(桃井)から「はじめのうち、ぼく、栗田がキライだったんだ」「でもさ、いまはそうじゃないんだ」と言われ、「いつからそんなにキライじゃなくなった」と聞くと「約束を守るやつだからかな。栗田、時間にきびしいだろう」と言わたことから、父からの教えを守った結果、桃井からキライじゃなくなったと言われたとわかる。つまり父の言う「世間=人から信用される」ようになったということである。


うんちくが長くなってしまったが、以上を私がまとめるとこうなる。


昔、父から教えられた「世間に信用されたかったら、まず約束を守ること、人の時間を盗まないこと」ということを守った結果、桃井からはじめはキライだったが今はそうでもないと言われ、自分自身が人から信用されるような人間になったとわかり、父に感謝している気持ち。


で、どうだろう。


【模範解答】

むかしのようにビシッとはしていないいまの父であっても、「おやじみたいになりたい」と思った時期のような部分がいまの父にもあるということを改めて見直し、やはりおやじはいいこというなと感心する気持ち。


全然違ウギャー~

「感心する気持ち」ときたか!模範解答は意外とあっさりしている。私の解答も悪くないと思うが、少し大袈裟で理屈ぽくてピント外れだったか。でも頑張ってまとめたから5点はもらいたいところだ。「改めて見直し」って汎用性が高いフレーズだね。