飯田一郎「そら色のピラミッド」 | 娘がやっている栄養療法を父と母もやってみるブログ

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娘が2026年中受予定。娘のチックを治そうと4年前から栄養療法に取り組んでます。



飯田一郎「そら色のピラミッド」は2015年第2回のJBの試験に出題された。

63ページあるが、文字が大きくふりがなも振ってあるので一年生でも読めそうだ。


手に取った時に、これが入試に?と驚いたぐらい薄い。問題を確認すると、前半少し省略されている部分もあるが、本の9割ぐらいから出題されている。


単純な話だが、問題を解いてみるとなかなか手ごわくて、さすが入試問題だなあと思う。




【あらすじ】

学年一番の成績のぼく(背が高いのでニョッキと呼ばれている)は遊びの世界では学年一番のツチヤとウマがよく合う。ツチヤは人にあだ名をつけるのが得意だが、六年の一学期に転校してきたササキユウキだけはいくらちょっかいを出しても反応が薄くて、あだ名をつけられないでいる。ぼくもそんなユウキのことがだんだん気になる。優等生のぼくは普段、そんなことはしないのだが、ツチヤに「大事なものを隠したら」と提案する。ユウキのいつも読んでいる本をツチヤたちが下駄箱に隠すと、ユウキはとり乱して泣く。隠した本は「ピラミッドの建築構造の研究」という難しそうな本だった。ツチヤはあだ名をつけるのは諦める。


ある日、ツチヤからユウキが林の中で何かしていると知らされ、二人で行ってみる。ユウキは地面にレンガを敷き詰めている。別の日にまた二人で見に行くと、さらにレンガが積み重ねられており、ユウキがいないすきに、ぼくは並べられたレンガをぐしゃぐしゃにしてやる。ユウキが戻ってくるのが見えたので二人は急いで逃げるが、ユウキに見られたのではないかと恐れる。ツチヤは「おれがこわしたことにしていいよ」と言う。


ある日の午後、ぼくは一人で林に出かけ、ユウキがレンガを積んでいた場所にもう一度行くと、なんとピラミッドが立っていた。高さはぼくより低いぐらい。近づくと中からユウキが出てくる。ぼくはピラミッドの中に招かれ、ゆうきと並んで体育座りをして話す。「一度誰かに壊された」とユウキが言ったのでぼくはドキッとする。「こわしたのツチヤくんかな」と言ったので「やったのはツチヤで、ぼくは止めた」と嘘をつく。



次の日もピラミッドに遊びに行く。レンガの椅子がひとつ増えている。二人はいろいろ話す。ユウキの母親は看護師で、父親は幼稚園の頃に亡くなったという。新しい父親は建築家で、ユウキの夢は建築家になりピラミッドの形をしたビルを作ることだという。前の学校でうけたいじめはひどいもので、ツチヤのはいじめに入らないという。ぼくの夢も話した。夢は特にないが、あるとしたら日本一のお金持ちになることで、なれたらユウキの建てたピラミッドを買ってやると言う。二人はピラミッドを大きくする計画を立てる。親しくなる二人だが、ぼくはユウキにウソをついていることがひっかかった。


ユウキは九月の下旬に父親の仕事の関係でアメリカに引っ越す。ぼくはついに謝れなかった。ある日、林に行くと、ピラミッドは残っていたが、壁はひっくり返っていた。そして小学校を卒業した。ぼくは第一志望の中学は不合格になり、他県の私立中に合格したので家族みんなで引っ越す。引っ越し前日、四ヶ月ぶりに林に行く。板はバラバラでレンガもひっくり返されていた。あの日ユウキはぼくの椅子をどんな思いで作ったのだろう。悲しくなった。ぼくは救われたかった。ほんとうのことを言おう。


その夜、ぼくはユウキに手紙を書いた。次の日の朝、別れを言うためにツチヤに電話する。ツチヤに罪を被せたこと、手紙で本当のことをきちんと書いたことを伝える。ツチヤは「バカだなあ」を繰り返す。


中学の入学式の前日、ユウキから国際便の返事が来る。ピラミッドの絵と下の方に文章があった。「正直に言ってくれてありがとう。すごくうれしい。そんなふうに高い壁を乗り越えて謝ってくれた人、今までいなかった。こんな人を友達っていうんだね。これからもずっと友達でいてね。それと、約束した通り、将来、このピラミッドを買ってね。日本一のお金持ちになる夢を実現するために新しい中学校でたくさん勉強してね。ぼくも日本一の建築家になるためにアメリカでがんばってるよ」手紙を書いてよかった。こうなったら頑張るしかない。友達との約束、必ず守ってみせる。ぼくは窓の向こうの青い空を見た。




【試験問題】

間十三(10点)

⑦「手紙を書いてよかった」とありますが、なぜ「ぼく」は「手紙を書いてよかった」と思ったのですか。説明しなさい。


ステップ①

理由問題なので「◯◯だから」で締める


ステップ②

使えそうな文章を引用しながら経過をまとめると


①ついにユウキにあやまることができなかった。チャンスにめぐまれながらあやまれなかったあの日から、ずっと心のおくにひっかかっていた。その思いはときどきふわっとうかんできて、ぼくを苦しめた


②あの日ユウキは、ぼくのいすをどんな思いでつくったのだろう。悲しくなった。ぼくは、すくわれたかった


(ほんとうのことをいおう)と決心し、手紙を書く


④「いまごろこんなこと書いてもおそいけど、ちゃんと伝えておきたかった。」


⑤「レンガをこわしたのは、ニョッキじゃないって思ってた。正直にいってくれてありがとう。すごくうれしい。そんなふうに高いかべをのりこえてあやまってくれたひと、いままでいなかった。こんなひとを、友だちっていうんだね。これからもずっと友だちでいてね。」



以上の下線を組み合わせてまとめてみる。(下線は引用部分)


レンガをこわしたのは自分だと、ユウキにずっとあやまることができ苦しんでいたが、ほんとうのことを伝えようと手紙を書いたら、正直に言ってくれてありがとうと許してくれただけでなく、これからもずっと友だちでいてねと返事をくれ、すくわれたから。


ほとんど引用することでまとめられたから比較的易しい問題であろう。



【模範解答】

レンガをこわし、それをツチヤのせいにしたことを正直に話し、あやまったほくを、ユウキは正直にいってくれてありがとうと受け止めてくれ、あやまったことを認めてくれ、ずっと友だちでいてねといってくれたことがうれしかったから。


ほぼ同じ?


ツチヤのせいにしたことを書き漏らしたのが気になるのと、模範解答は「うれしかったから」で締めているところを、私は「すくわれたから」で締めたのだが、後で考え直すと、素直に自分の言葉で「うれしかったから」にすればよかった。「すくわれた」では一時的な自己満足としか思えないからだ。引用だけで済ませようと、少し策に溺れてしまった。


ここは6〜7点というところだろうか。


模範解答にケチをつけるならは「受け止めてくれ、認めてくれ」と、少しくどいのが気になった。