升井純子「行ってきまぁす!」 | 娘がやっている栄養療法を父と母もやってみるブログ

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娘が2026年中受予定。娘のチックを治そうと4年前から栄養療法に取り組んでます。



表紙がアビーロードっぽい?


升井純子「行ってきまぁす!」は14章で構成されたひと続きの作品で、JB2014年第2回の試験では第2章の「いざ、出発」と第3章の「やっと一個目、ゲット」の最初までが出題された。詳しい場所で言うと、p23p281行目、少し省略して、p3011行目〜p40p41p4511行目までとなっている。


歩美と陽太が地下鉄の一日乗車券の買い方がわからずあたふたして、佐伯田くんに買い方を教えてもらう場面が省略されている(p282行目〜p3010行目)が、あまり違和感ない。


問題文のおよそ半分以上が会話文で成り立っており、これほど会話ばかりの試験問題というのも珍しいのではないかと思ってしまう。


以前書店で見かけた歌代朔「スクラッチ」という、美術部女子が絵を描く話がいかにもJB向きの題材だと思い、娘と一緒に読んでみたが、ほとんどが会話文(しかもいけ好かない会話が多くて辟易する)で成り立っており、試験問題向きではないと思ったが、案外「スクラッチ」もアリかもしれない。




「行ってきまぁす!」だが、一言で言うと、子どもたちだけで街探検をする話である。


試験では主人公の歩美が陽太、佐伯田、三人で地下鉄に乗るのだが、陽太だけ列車に乗れずにはぐれてしまう場面が出題された。


題材といい、なんとも他愛のない話であるが、第4章の「優しいお姉さん」はサラッと描いているけど、けっこう怖い話で、子どもにとってはちょっとしたトラウマもの。


だって、第3章で優しく道案内してくれたお姉さんが第4章で再登場したと思ったら「金出せやゴルァ(゚Д゚)」ですよ。「あのーここ日本ですよね?」って聞きたくなりました。私が中学生の頃、津田沼の◯進学院に行く途中、見知らぬお兄さんに「お金貸してくんない?」って声かけられたのを思い出しましたね。そこの通路が◯進学院生が通る通路だと知って、不特定多数の生徒に声をかけているようで、カツアゲをもう少し優しくした感じでしたが、結構怖かったのを覚えています。


さいごの14章でお母さんがこれまでどんな気持ちで「行ってらっしゃい」って行っていたのかわかる?と歩美に聞く場面があるのですが、(少し唐突な質問でバランスを欠きますが)なかなか感動的で子を持つ親なら誰でも共感できると思います。



【あらすじ】

一.ノルミルってなに?

四年生になる歩美の学校は新学期だというのに、北の街、北都市はまだ桜が咲いてない。歩美は四年生になって楽しみにしていることがある。ノルミルである。ノルミルとは、バスとか地下鉄に乗っていろんなところを見てスタンプを押してまわる、スタンプラリーのことだ。スタンプがたまったらバッジがもらえる。一人ではダメで最低三人でまわらないといけない。陽太はすぐに決まったが、もう一人がなかなかみつからず、佐伯田くんが行ってやってもいいぜと言う。将棋が得意だが自信過剰で人を見下すようなやつなので歩美は苦手だが、仕方なく腹を決める。


〜〜ここから出題〜〜

二.いざ、出発

三人はまず、NHK、新聞社、テレビ塔の三カ所に行く予定だ。佐伯田くんに教えてもらいながら地下鉄乗り放題カードを買って、なんとか地下鉄に乗るが、陽太が乗り遅れてしまう。次の駅で降りる降りないと佐伯田くんともめているうちに地下鉄はどんどん進む。


三.やっと一個目、ゲット

予定通りの駅で降りる二人。しばらくして陽太の乗る列車もきて、なんとか会うことができた。

〜〜ここまで出題〜〜

地図を広げてNHKを探していると、「どこ行くの?」と聞いてくれるお姉さん。お姉さんもノルミルをしたことがあるらしく「なつかしい」と言う。お姉さんと別れ、なんとかNHKに着き、スタンプ一個目ゲット。パネルを見たりして笑顔で出てくる。


四.優しいお姉さん

建物を出ると、さっき声をかけてくれた毛糸の帽子のお姉さんが出迎えてくれた。少し話して別れようとすると、そのお姉さんは「お金貸してくんない。」と言ってポシェットに手を伸ばす。佐伯田くんが「おまわりさんだ」と叫んでくれて女たちは逃げる。その後、出会ったノルミル小学生グループにテレビ塔の前にデパートの八階に絶対に行くべきだと言われたので行くことにする。


五.ホクトカイギュウ

デパートの八階に行くと、「ホクトカイギュウ全身骨格復元模型」というのがある。北都市で見つかったものらしい。北都市は昔、海だったと知り驚く三人。興奮冷めやらぬ三人は急いでテレビ塔に行く。


六.夢?ほんと?

ホクトカイギュウの夢を見て起こされる歩美。学校に行くと、陽太が今度は博物館に行きたいと言う。佐伯田くんは将棋の試合で行けない。誰を誘おうか考えていたら、隣に座る翔子ちゃんが行くと言う。


七.二回目のノルミルは?

当日、遅刻するからと翔子の母親が運転する車で博物館に向かう三人。博物館は遠いからと、鮭の科学館に行くマイペースで強引な翔子の母親。鮭の科学館で陽太が翔子に妙に優しいのが気に入らない歩美。科学館を出て車に乗ると、今度は博物館ではなく、ビール工場に連れて行かれる。昼ごはんにとハンバーガーまでご馳走になる。おばさんは次に青少年センターに行くつもりらしい。車で移動することにずっと違和感を抱いていた歩美は気分が悪いから帰ると言って立ち去る。本当は博物館に行って、環境ストリートに行って昼食を食べる予定で、乗り継ぎバスにも挑戦するつもりだったのだ。


八.大発見

テレビ塔目指して一人で歩くあゆみ。住所の仕組みを発見する。お巡りさんに地下鉄の入り口を教えてもらおうか迷っていたら、翔子の母親の車が停まり、陽太と翔子が出てくる。陽太が次は環境ストリートに行きたいと頼んだらしい。


九.やっぱり環境ストリート

環境ストリートにいると、佐伯田くんに会う。大会で負けたらしい。歩美がさっき発見した住所のひみつを披露すると、佐伯田くんに図解つきで理路整然と説明される。スタンプだけでなく、きちんと遊んでくれて嬉しいと環境ストリートの太田さんに言われる。帰りの地下鉄の入り口がわからず迷うが、佐伯田くんがなんとか打開する。


十.ノルミル禁止

門限ぎりぎり帰宅した歩美。ノルミルのスタンプ帳をなくしてしまった様子。翔子の母親の車で連れて行ってもらったことなど話してしまい、計画と違うと母親からノルミル禁止令を出されてしまう。父親が一緒にスタンプ帳を探そうと外に出る。陽太とはぐれてまた会えたことを話す。翌日、陽太が次の計画について話してきたがノルミル禁止令で行けないと言う。家にもいづらくて地下鉄駅でとぼとぼ歩いていると、駅員さんに事務室に連れていかれ、優しくしてくれる。帰ろうとすると、陽太に出会い、なぜか部屋探しのフリーペーパーをもらう。


十一.日曜日のデパート

親子三人でデパートに行くと、将棋の対局をする佐伯田くんを見つける。「負けました」という佐伯田くんらしくない言葉を耳にして驚く歩美。おつかれさんって声をかけようと佐伯田くんに近寄ると小さく丸まって泣いていたので声をかけずに離れる。


十二.提案

学年集会の企画を陽太に考えてもらったら、「学校ノルミル」を思いつく歩美。さっそく東海林先生に提案する。


十三.学校ノルミル

学校ノルミルが始まる。スタンプの場所に着いたらクイズに答えて、正解ならスタンプを押すルルールでスタンプが3つ集まったグループはあがりだ。どのクラスも盛り上がっている。校長室の前でわいわいしていたら戸ががらっと開いて校長先生が出てきた。歩美を見て「君が実行委員長か」おいでと言って封筒を差し出した。なんと、なくしたスタンプ帳だった。拾った誰かが送ってくれたようだ。


十四.再開だ!

急いで帰宅して、スタンプ帳が戻ってきたことを母に知らせると、歩美は「またノルミル行かせてください」とお願いする。お母さんがこれまでどんな気持ちで歩美に「行ってらっしゃい」と言っているのか語り出す。女子代表委員同士で仲良くなった二人とチョコレート工場にノルミルに行く。




【試験問題】

JBの国語って、その場面に至る経緯が省略されていることが多く、いったい何の話だ?と面食らうことが多いです。特に注意したいのが今回の作品の場合、「ノルミル」についてわかった上で読み進めないと、モヤモヤしたままなので、注釈を最初に読むことが重要でしょう。


注1 ノルミル・・・地下鉄駅の事務室で販売しているスタンプ帳に、地下鉄を利用しながら駅周辺の指定された場所に行ってスタンプを集めるという企画。


と最後にきちんと解説してあるのですが、これを最初に見逃すと、一読してようやく注釈に気がつくという失態を犯しかねません。



問8(2)10点

「お尻がいうことをきいてくれなかった」のはなぜですか。説明しなさい。


ステップ①

理由問題なので、「◯◯だから」とまとめる。


ステップ②

お尻がいうことをきかない経緯(佐伯田くんとのやりとり)を整理する


・陽太とはぐれる

・「行き先は知っているから陽太は来るよ」という佐伯田くん

・「どうしようどうしよう」

・「ケータイある?」「ないけど陽太だって持ってないかも」

・「降りて戻ろう」と提案するが反対される

・「降りてから考える」と言うと「行き当たりばったりだ」と言う

・「冷静にならなきゃ」と言い悠然と本を読む


要するに、陽太とはぐれてしまい、「どうしよう」と言うばかりで何をしていいのかわからず混乱する歩美と、何を言っても反対されて「冷静にならなきゃ」と悠然と本を読む佐伯田くんが対照的に描かれている場面なので、それを書けばいいのだろう。そして、よく使うキーワード「途方にくれたから」で締めたいと思う。「悠然と」という言葉にわざわざ注釈がついているので、この言葉を使ったらカッコいいかもしれない。


ステップ③

この問題は自分の力でまとめる必要がありそうなので、とりあえずまとめてみる


地下鉄で陽太とはぐれてしまい、歩美はどうしてよいのかわからず混乱するばかりだが、「冷静にならなきゃ」と悠然とした様子で本を読む佐伯田くんには何を言っても反対されてしまい、途方にくれてしまったから。


うん。うまくまとまった。完璧だ。模範解答を見てみよう。



【模範解答】

陽太に会うために、勢いで地下鉄を降りようという気持ちがあるものの、降りてからどうするかを何も考えていないので、陽太に会えるかどうかわからないという不安な気持ちもあるから。(陽太に会えるかどうかわからず、降りる勇気もなかったから。)



うぎゃーゲッソリ全然違う!自分の解答の方がカッコいいと思うのだが、模範解答は意外とシンプル。


「お尻がいうことをきいてくれなかった」の直前のやりとり、「降りるからね。」「降りてどうするのさ。」「降りてから考える。」「そういうのいきあたりばったりっていうんだよ。」というやりとりを「降りてからどうするかを何も考えていない」とまとめて「陽太に会えるかどうかわからないという不安な気持ち」と締めるのか。


自分は少し俯瞰したような視点でまとめてしまったが、もう少し狭い視点でまとめてよかったわけだ。


とりあえず「不安だったから」というキーワードさえあれば5点はもらえると思うが、娘はどうまとめるのか楽しみだ。