笹山久三「やまびこのうた」 | 娘がやっている栄養療法を父と母もやってみるブログ

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娘が2026年中受予定。娘のチックを治そうと4年前から栄養療法に取り組んでます。



笹山久三「やまびこのうた」は8章で構成されたひと続きの作品で、JBの2011年第1回の試験では「①兄やん」の中から、p8〜p10の3行目、少し中略してp14の1行目〜p26の13行目までが出題された。


出題された「①兄やん」は、イタドリという植物を子どもたちだけで山に収穫しに行く話だが、イタドリ?何それ食えるの?って感じで、都会っ子には想像もつかないような田舎の子の日常が描かれており、JBを受験するようなお嬢様方には少しとっつきにくい題材だったに違いない。


ちなみに「いたどり」とはWikipediaによると、山あいに自生するタデ科の植物で、竹のように中心が空洞なことから「すかんぽ」と呼ぶ地方もあるそうだ。登山やハイキングの道中でいたどりをとって生で食べることもあるが、高知県内では、古くからいたどりを色々な方法で食べてきたとある。関係ないが、娘が1歳ぐらいの時にスコップのことを「すかんと」と言っていたのを思い出した。


見た目アスパラガスだが、どんな味がするのだろう。一度食べてみたい。


作品の中では他に、川を泳いで横断する「横渡」という遊びや、「山芋掘り」、「張り付け」というイベントが登場する。


この話の舞台は具体的に書いてないが、作者が高知県出身で、四万十川を舞台にした作品をいくつも書いているようなので、おそらくこの作品もその辺りと思われる。


ところで、テツオという名前でピンときたのだが、兄やん、テツオの関係性ってAKIRAじゃんと思ってしまった。兄やんが金田で、テツオが鉄雄なのだ。仲間から人望厚く、なにかといじめられやすいから、いつもテツオをかばう兄やんはAKIRAの金田そのもの。テツオが割と素直なのがAKIRAの鉄雄っぽくないが。


参考画像


金田「乗りたいか〜鉄雄〜」



金田「俺用に改良したバイクだ。ピーキー過ぎてお前にゃ無理だよ」


テツオ「そんなのに乗ってる方が気がしれねーぜ」




【あらすじ】

①兄やん(ここから出題)

小学五年生の兄やんをリーダーにして、近所の仲間たちと山にイタドリを取りに行く。兄やんは年下の子どもから慕われている。小学二年のサチは兄やんと組んでイタドリを取る。取ったイタドリは最後に集めてみんなで山分けするきまりだが、小学四年のテツオがこっそり大きなイタドリを草むらに隠すのを見つけてしまう。二人は黙っていることにするが、サチは我慢できず、昼ごはんの時にタツオを呼び出して何とかするよう言う。やがて山分けする時にタツオは隠しておいたイタドリを持って現れる。「ぶっちぎりの一番じゃ」とほめる兄やん。じゃんけんで勝った兄やんはテツオの取った大きいイタドリを取るが、山分けが終わってからテツオと交換する。兄やんはサチが取ったイタドリもシュンちゃんからもらってサチに渡す。みんなのことをいつも大事に考える兄やんは親分だと思うサチだった。「うったごえがー・・・」みんなの歌声がやまびこにこだまする。


②サチとタマの子育て

サチの飼い猫のタマがシロとキジという子猫を産み、サチは川で猫のエサであるハヤを釣るのが日課になる。いつも一緒に行動していた兄やんは最近はうなぎ漁に出て、一緒に魚釣りすることは減った。ある日、キジがもらわれることになる。サチは最後に腹一杯食べさせようと、キジにたくさん魚をあげる。


③カエルの合唱

梅雨明け。子猫のシロも父親の職場の主任の家にもらわれることになるが、そこの奥さんが猫嫌いなのが気になるという。シロがもらわれる日にサチは主任に「帰って!」と抵抗するが、シロはもらわれていく。場面変わり、サチたちが川遊びをしているとき、テツオが「横渡」に挑戦するという。「横渡」とは、幅50mはある川の向こう岸を泳ぎ渡ることで、泳ぎが上手くなった男の子が一人前と認められる条件だった。いじわるの茂がテツオをからかうと「やめれ」と兄やんがたしなめる。茂と洋一は中一で兄やんより一つ上だが手が出せない。テツオは横渡に成功する。サチもそれに触発されたかのように挑戦する。シロが連れ去られたことを振り払うかのように必死で泳ぐサチ。サチは女の子で一番に横渡に成功するが喜ぶこともしないで泣く。その晩、シロを探して泣く母猫のタマの声がサチの胸に突き刺さる。


④ヒグラシの音

サチたちが川遊びしていると、サチの同級生のケンチンも横渡に挑戦するという。サチは一年生になったばかりのブンヤンの面倒をみる。ケンチンが成功すると、ブンヤンも俄然、やる気を出して、潜りの練習をする。サチが家に帰ると腰の抜けたシロがいた。もらわれた家で着物にうんこしたとかで叩かれ、こんな猫いらんと戻されたらしい。母猫のタマは知らんぷりしている。サチはブンヤンの泳ぎの練習につきあうが、心のすみにシロがいる。逃げてはいけないと練習を切り上げて帰宅すると、タマがシロの毛をなめていた。


⑤山土の匂い

母はそろそろ女の子と遊びなさいと言うが、サチは男の子たちと山芋を掘りに山に行く。シロはテツオのうちに引き取られた。サチは兄やん、ブンヤンと一緒に山芋を掘る。イタドリの時のように、掘った山芋は集めて山分けする。テツオが兄やんのように、ブンヤンがテツオのように、みんながそんなふうに大きくなっていくのかもしれないとサチは思うのだった。


⑥夕焼け雲

父は土建会社の主任とうまくいかず、会社をかえる。兄やんは家の仕事ばかりして、みんなと遊ぶことがめっきり減る。サチがケンチン、ブンヤン、シュンちゃん、テツオと張り付けという遊びをしていると、いじわるの洋一と茂も混ぜろという。遊びのルールに従わない茂にテツオが文句を言って、二人が喧嘩になると、シュンちゃん、洋一も加わり、乱闘になる。サチが兄やんを呼びに行き戻ってみると、洋一も茂もねじふせられていた。


⑦シロのお墓

シロのお腹に赤ちゃんがいると聞いて、サチは毎日釣りにいく。おまけにタマも妊娠中だ。タマの子や、シロの子の名前をどうしようか考えていたところ、テツオからシロが死んだことを聞かされる。以前、飼い主に腰を砕かれたのが原因だったらしい。サチは泣きながら家を飛び出す。


⑧やまびこのうた

春休みが過ぎてサチは四年生になる。同級生の女の子を誘って、男の子たちと山にイタドリを取りに行く。テツオが兄やんと同じようにしており、やっぱりテツオが親分になったと感じるサチ。テツオが山分けの説明をみんなの前でしている時に、去年自分がイタドリをかくそうとしたことを話す。昔から集落に引き継がれてきた男の子の集団が何人も何人もの兄やんを生み出しているのだ。帰り道で見つけた山ツツジの花をシロのお墓に供えようと思うサチだった。「うったごえがー、あーのこみーちにひーびけばー」谷の向こうでやまびこも歌っていた。


作品の中で子どもたちが歌う場面が2回あるのだが、この歌をうたっていた。



【試験問題】

問14(10点)

線(13)「サチは、やっぱり兄やんは親分だと思った」とありますが、なぜサチはこのように思ったのですか。具体的に説明しなさい。


ステップ①

理由問題だから◯◯だからとする。


ステップ②

ここまでの経緯をまとめると、

テツオがイタドリを隠す

それを見つけたサチと兄やんは見なかったことにする(みんなに知られたらのけ者にされて山にこれなくなるから)

サチがテツオにイタドリを隠したのを見たことを言う

テツオが隠していたイタドリをみんなの収穫にする

兄やんがじゃんけんで勝ってテツオが取った大きなイタドリをテツオに渡す

サチが初めてとったイタドリをシュンちゃんから渡してもらう

ケンチンに自分のとったイタドリを取らせる


となっているが、兄やんの一連の行動を見ると、子どもたちが仲良くイタドリ取りができるように気を配っているのが読み取れる。それは最初の方にもこう書いてある。「それも伝統みたいなもんじゃ。大きい子と小さい子じゃ、とるイタドリの量がぜんぜんちがう。けど、必要な量は、どこの家もおんなじぞ。山はひとりじゃこれん。だから、みんなで仲よく山にこられるように、男の子の間に伝わってきた伝統じゃ。兄やんらだって、小さいころは、そうやって大きい子に助けられたんじゃ。分かったかサチ」


この文章のうち、「みんなで仲よく山にこられるように」が使えそうなので線を引いておく。


ステップ③

「みんなで仲よく山にこられるように」兄やんは具体的にどうしているか挙げると


テツオがのけ者にされないよう、イタドリを隠したのを見逃した

・テツオが取ったイタドリをテツオに渡したり、サチやケンチンにも自分で取ったイタドリを持たせてやった


ステップ④

以上をまとめてみる


テツオがのけ者にされないよう、イタドリを隠したことを見逃したり、テツオやサチやケンチンが自分で取ったイタドリを山分けの中から渡してあげたり、みんなで仲よく山にこられるように、子どもたちに気を配っているから。


今回は意外とすんなりまとめられた気がするが模範解答はどうか。


【模範解答】

大きなイタドリをかくそうとしていたテツオがみんなからのけものにされないよう、見て見ぬふりをしてあげ、その上、最後はその大きなイタドリをテツオにもどしてやったり、サチやケンチンにも、イタドリがある場所に連れて行ってとらせてあげ、はじめてとったイタドリをそれぞれもたせてやったりしているから。また、みんなが無理をせず、協力して、イタドリをとれるように気を配ったりしているから。


自分の解答とかなり近いので8点ぐらいもらえたのではないか。



模範解答を分析してみると


大きなイタドリをかくそうとしていたテツオがみんなからのけものにされないよう、見て見ぬふりをしてあげ、その上、最後はその大きなイタドリをテツオにもどしてやったり、サチやケンチンにも、イタドリがある場所に連れて行ってとらせてあげ、はじめてとったイタドリをそれぞれもたせてやったりしているから。また、みんなが無理をせず、協力して、イタドリをとれるように気を配ったりしているから。


この赤い部分は


「この谷はあぶない場所が多い。とりっこキョウソウになって無理をしたら、崖から落ちたりすることもある。小さいものが大きいイタドリをみつけて、自分にはとるのが無理じゃと思ったら、大きい子を呼ぶ。そんなふうに協力しあうためにできた伝統みたいなもんじゃ」


の赤い部分をまとめたものと思われるが、模範解答のようにまとめることは至難の業であろう。


また改めて問題文を読み直したら、「サチは、やっぱり兄やんは親分だと思った」に続く一文テツオのこともサチのこともケンチンのことも、そしてみんなのことも、いつも大事に考えているのだと思った。」は使ってはだめなのかという疑問がわいた。


これを私の解答に付け加えるとこうなる。


テツオがのけ者にされないよう、イタドリを隠したことを見逃したり、テツオやサチやケンチンが自分で取ったイタドリを山分けの中から渡してあげたりして、テツオのこともサチのこともケンチンのことも、そしてみんなのことも、いつも大事に考え、みんなで仲よく山にこられるように、子どもたちに気を配っているから。