http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20120526-OYT1T00003.htm
(引用開始)
関西電力管内で15%以上の節電要請が始まる7月2日までに関電大飯原子力発電所3、4号機(福井県おおい町)のフル稼働が間に合わないことが確実な情勢となってきた。
事前点検などに最低でも6週間かかるためだ。政府は再稼働が決まれば節電目標を見直す方針だが、タイムリミットは迫っており、今夏も企業や家庭が大幅な節電を強いられる可能性が強まっている。
経済産業省原子力安全・保安院によると、大飯3、4号機はともに10~14か月前後も停止している。配管の洗浄などの事前準備も必要となりフル出力まで1基当たり3週間かかる見通しだ。
関電と保安院は、作業員数の制約や安全確認に慎重を期すため、再稼働の際はまずは3号機がフル出力(118万キロ・ワット)に達した後、4号機を稼働させる方針だ。両基がともにフル出力に達するまでには計6週間が必要で、仮に地元の了解が早期に得られて今月中に再稼働に着手したとしても、フル稼働は早くても7月中旬となる。
(2012年5月27日11時54分 読売新聞)
(引用終わり)
さて、いつもお馴染みの安井至先生の「市民のための環境学ガイド」の最新記事は、「西日本の電力対策」で、脱原発を主張しているエネルギー学者の飯田哲也氏と議論したことについて書かれています。
http://www.yasuienv.net/ElecSupplyKansai.htm
最初に、飯田氏の考察とその問題点を整理されています。
(引用開始)
飯田氏は、
(1)今夏、関西で電力が余ること。
(2)大飯原発の安全対策は抜けだらけであること。
(3)したがって、大飯原発を動かすべきでないこと。
(4)もし動かしたとしても、何かあるとすぐ原発は止まり、しばらく動かないので、頼りにならない。
(5)したがって、関西電力は原発ゼロで安定な電力供給策を考えるべきであること。
というロジックであると判断した。
(中略)
飯田氏は、これまでの経緯からか、(1)の仮定をかなり強力に主張していて、議論を(2)~(5)だけに集中させようとしているように思える。
しかし、もう大飯以外の再稼働は時間切れだし、大飯だって怪しい状況である。そして(1)はとても危ない。となると、(2)~(5)は一旦保留にして、どのような対策を取るか、リスクをベースに考える以外に方法は無いのではないか。
要するに、考察をしている範囲が狭すぎるのではないか、と直感的に思う。そこで、この問題をどのように考えるのが正しいのか、考察してみたい。
(引用終わり)
そして、政府の国家戦略室が行なっている「需給検証委員会」で、飯田氏が提出した資料(飯田氏が代表を務めるISEPと関西電力の需給見通しの差)の検証が行われています。
詳細は元記事をご参照ください。
その後に、このような記述。
(引用開始)
B君:要するに、関西電力エリアでは、今年は大変だからと意識を変えて節電をしようとする人は余り居ないと予測されている。これが最終報告書に書かれていること。
A君:多分、停電に何種類もあることが、関西人には理解されていないのではないかと思うのです。なぜそう思うのか、飯田氏は、現在、大阪府市エネルギー戦略会議の特別顧問で、電力は足りるという発言を続けてきて、それを橋下氏なども信じてきたからではないかと推量するのですが。
B君:この検証委員会の委員である植田和弘京大教授は、大阪府市エネルギー戦略会議の座長を務めていて、検証委員会に申入書を出している。
http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20120507/iida_shiryo.pdf
その中で、何を要望しているのか。
次の3項目
1.西日本地域全体で節電すれば、供給余力が増すので、余裕がある地域の電力会社を含めて、西日本全体で実効的な節電策を実施すること。
2.電力の安定供給は、西日本の一般電気事業者6者が連携・協力するように、国が枠組みを決めよ。
3.自家発買い上げ・デマンドレスポンス市場の拡充を図ること。
A君:これって、相当に身勝手な要請ではないでしょうか。自分たちは余りやらないが、他の地域の人々はもっと協力せよ、と読めるので。政府は、若干の対応をしつつあるようだけど、こんな枠組みを国が主導してやれ、というのなら、話題は全く違うけど、大阪府市は、国の要請である福島県以外の津波によるがれきの焼却処理も、積極的に受け入れると同時に、関西広域連合の自治体にもそう働きかけるべき。
B君:「こんな勝手なことを言っている」と思われてしまうことの元凶が、この大阪府市エネルギー戦略会議の存在なのではないか。
A君:そうかもしれませんね。そう言えば、先日、橋下市長が、「電力の高需要期だけ一時的に大飯原発を再稼働するのはどうだ」、と述べましたが、これは、この大阪府市エネルギー戦略会議をすでに見限ったということを意味するのでは。というのは、飯田氏は、この会議でも、「原発はすぐ停止するから、それに依存するのはリスクが大きい」と言っている。すなわち、飯田氏は、橋本市長の言い分を否定するはずだから。
B君:確かに。橋下市長が飯田氏の発言を信用しなくなったということなのかもしれない。
A君:藤村官房長官は、一言でこの提案を退けました。
B君:それはあたり前。なぜなら、原発は起動と停止に相当のコストが掛かるから。動き始めたら、トラブルがない限り、次の保守期間まで停止したくない。これが原発というもの。
A君:ちなみに、この大阪府市エネルギー戦略会議のメンバーは、次の通り。
座長 植田 和弘(特別参与、京都大学大学院経済学研究科 教授)
座長代理 飯田 哲也(特別顧問、特定非営利活動法人環境エネルギー政策研究所 所長)
古賀 茂明(特別顧問、元経済産業省大臣官房付)
(以下略、引用終わり)
この安井先生の記事に対して、飯田哲也氏はツイッターで反論していて、それのまとめ記事がありました。
http://togetter.com/li/310456
(引用開始)
【安井至氏への応答1】飯田のフェイスブック板で安井至氏(東京大学名誉教授)から議論を仕掛けられた。しかし安井氏はそこでの批判に答えずご自身のブログに戻り、一方的な飯田哲也批判を展開。氏とは親しい間柄であるが故に、典型的な日本の「知識人」問題として反論を展開する
【安井至氏への応答2】飯田の言う「典型的な日本の知識人問題」とは「5つの『無い』」①事実に基づかない②論理的でない③科学的でない④経済合理的でない⑤規範的・倫理的でない 安井氏のブログ( http://t.co/l3VqUoDz )はそれが典型的に現れている実例
【安井至氏への応答3】安井氏は冒頭から、飯田が『(1)今夏、関西で電力が余ること』から出発していると事実誤認(①反事実)。
(引用終わり)
何か一見、論理的に批判しているように見えますが、そもそも今さら、「私は関西で電力は余るなどと言っていない」とビックリすることを書くとは。
氏が代表のISEPの資料に、そのタイトルから明確に書かれているのですが。
「2012年4月17日(火)
環境エネルギー政策研究所 ブリーフィングペーパー
原発を再稼働しなくても今夏の電力は足りる(関西電力版)」
http://us2.campaign-archive2.com/?u=d091b19b672c0c5a748427770&id=4ecf7c58bd
この飯田氏の反論(というか悪あがき)には、たくさんの批判が書き込まれています。
私も、もう少しまともな人かと思っていましたが、責任逃れがひどすぎますね。
橋下市長にすら信用されなくなった飯田氏。もう終わりではないでしょうか。
私は、橋下市長の大飯原発を短期間だけ動かす案を採用する可能性はまだあるのでは、と考えます。(橋下市長は支持しませんが。)もちろん、安全が十二分に確認されたという前提で。しかし、これも早く決断しないと間に合いません。
安井先生は、藤村官房長官のコストを重視した意見を肯定しているようですが、今は緊急対策としてですので、コストは度外視で考えてよいと思います。
ところで、原発の稼動コストを心配したり、大飯原発以外の再稼動に慎重な枝野大臣に反発もしている藤村官房長官って、電力会社の人でしたっけ?
とにかく、関西では、停電を防ぐための現実的な対策が必要です。
安井先生の論理的な考察と結論は以下のようです。
(引用開始)
A君:それなら、西日本居住者としては、どのような選択肢があるのでしょうか。
B君:なかなか難しい。すでに無理筋になったものを含めて、こんなものか。
選択肢1:大飯だけではなく、伊方、玄海の3ヶ所の原発運転開始を政府に要請する。
選択肢2:大飯だけの運転再開を政府に要請する。
選択肢3:それぞれの電力会社のエリア内だけで、節電によって需要を削減してみせる。
選択肢4:関西電力エリアは選択肢3が不可能かもしれないので、周辺エリアにお願いツアーをやる。特に中部電力エリアへ。
選択肢5:突然起こる非常時停電があることを容認する。
選択肢6:天に対し自らの幸運を祈り、何もしない。
C先生:なるほど。一般則だと言えるが、「極端な選択肢は、極端であればあるほどリスクが大きい」。例えば、すべての原発を即時かつ永遠に停止という選択肢もその一例ではないか。現時点で中庸な選択肢というと、40年廃炉ぐらいになるのではないだろうか。
上の選択肢の並び方でも、両端ほど極端で、リスクが大きいように思える。
選択肢1は、今となっては、もう間に合わない。選択肢2も、もはや怪しい。最善でも8月からぐらいが良いところ。
選択肢6だけを選択し完璧に実行すれば、ブラックアウトが起きて、死者がでるだろう。選択肢5でも、製造業に対して、関西エリアから出ていけというようなものだろう。
恐らく、選択肢3、選択肢4あたりを真剣に、かつ知恵を出して検討し、今からでも間に合う様々な方策を、それぞれの電力会社のサービス範囲ぐらいで実施する。これぐらいが妥当な選択肢なのではないか。
例えば、すべての一般家庭、オフィスを対象に、10時~17時の電気代を数倍にするといったことはどうだろう。良い考え方のように思える。しかし、残念ながら、それが実行できない。スマートメーターの設置が間に合わないから。辛い状況だが、選択肢3もないのではないか。
結果的に、唯一の選択肢が4かもしれない。これはすぐにやるべきだろう。橋下市長の最大の役割かもしれない。
また、選択肢5だが、無予告の計画停電がいつあってもおかしくないということを関西電力エリアで、しっかりと広報すべきである。「これは有りうるので、覚悟をして欲しい」。「もし無くて夏が終われば、それは幸運だったのだ」。
最も重要なことは、今から来年の夏までに何と何をやるのか、そして、来年の夏には、選択肢5が不要になっているという約束ができないかぎり、関西圏から企業は逃げ出すことだろう。
これまで関西電力エリアでも電気は余るという主張を信じさせたことが、逆効果だった。もう少々早く、計画停電といった言葉を出せば可能であった対処を遅らせてしまった。結果的に「電気は余る」という主張は、関西エリアに不幸を招いた。すなわち、間違いだった。
お勧めの対策は、結局のところ、選択肢4と選択肢5だが、実現不可能だとは思うが、選択肢3を目指す姿勢が必要だ。
(引用終わり)
先の私の記事で書いたように、現在の状況は官僚and/or関西電力によって原発を稼動させざるを得ない状況を作ろうとする意図によるものだったかもしれませんし、また飯田氏らが「電力は余る」と言い続けたことが、対策を遅らせた大きな原因であったのかもしれません。
しかし、とにかく、関係者がグズグズしている間に大飯原発再稼動ですら間に合わないという事態にまでなっており、現実問題として目の前の電力不足にどう対策するか本気で取り組まないと、関西では企業活動や人命にまで関わる大問題になっています。
政府・自治体首長および関西電力など関係者は、議論や責任のなすりつけ合いばかりしていないで、対応策を早く実行に移すべきです。
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