利根川水系のホルムアルデヒド問題 原因判明 | ナンでもカンでも好奇心!(tomamのブログ)

ナンでもカンでも好奇心!(tomamのブログ)

硬軟取り混ぜた種々雑多なネタについて書いてみようかと思います。
全くまとまりがないと思うけど、それが自分らしさということで。。。

利根川水系でのホルムアルデヒド問題、一気に進展がありました。

http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000001205260002

(引用開始)
 利根川水系の浄水場から化学物質ホルムアルデヒドが検出された問題は25日、新たな展開を見せた。埼玉、群馬の両県、高崎市は廃棄物処理法に基づき、原因物質「ヘキサメチレンテトラミン」を大量に扱う埼玉県の事業所と、処理を請け負った高崎市の産業廃棄物処理業者の調査を始めた。

 「報道で『烏川』『井野川』などと出てきても、ひとごとだと思っていた」
 埼玉県が25日、廃棄物処理法に基づいて報告を求めた電子材料メーカー「DOWAハイテック」(同県本庄市)から、アルカリ廃液の処理を請け負っていた高崎市内の産業廃棄物処理業者は、朝日新聞の取材にこう話した。

 DOWA側から約60トンの廃液処理の委託を受けた。24項目の化学物質の成分を調べ、国の基準に従って適正に処理したという。
 「それ以外の物質が含まれる時は、排出者が告知しないといけない」

 今回、処理しきれなかったヘキサメチレンテトラミンが利根川水系に流出したとみられているが、処理業者は、その責任はDOWA側にあると主張している。

 また、埼玉県は19日に調査に来て、残っていた廃液を持ち帰ったが、翌20日には高崎市を通じ、「操業を続けて問題はない」という連絡があったとした。念のため、自分たちでも検査を依頼したが、高濃度のホルムアルデヒドは検出されなかったという。

 廃棄物処理法では、委託された処理業者が処理方法を判断できるように、排出元の企業などが廃棄物の詳細な中身を明示するよう義務づけている。ただ、ヘキサメチレンテトラミンは同法の有害物質にあたらず、水質汚濁防止法の排水規制も対象外。この物質を明示しなかった場合にどこまで非難されるべきなのかも、定まらない面がある。

(中略)

 再調査では、DOWA側が委託したホルムアルデヒド換算で37%の高濃度の廃液を処理する能力がこの業者の施設にあるかを検証。また、ヘキサメチレンテトラミンが委託契約の中でどのように扱われていたかなども明らかにする方針だ。 
(引用終わり)

排出されたのはホルムアルデヒドそのものではなく、ヘキサメチレンテトラミンではないかという推定は、この問題発覚時から疑われていました。
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20120520/1337528384

私のブログの5/21の記事でも、これを読んで少しだけ触れていました。(ただし、ヘキサメチレンジアミンと書き間違えていましたが(恥)→修正済み。)

流出したと疑われる量は、廃液が60トンで、濃度がホルムアルデヒド換算で37%とすると、22トン程度。私の先の記事でオーダーとして50トン程度ではないかと書いていたのと、期待した精度の範囲で(5トンや500トンではないだろう)おおよそ合っていたようです。ほっ。

ところで、ヘキサメチレンテトラミンが水質汚濁防止法の規制対象物質ではなかったというのは事実でしょう。しかし、このような高濃度の有機物質を含む排水を河川に流すと、排水中のBOD(生物学的酸素要求量)の規制に引っかかるはずだと思うのですが・・・。


さて、ヘキサメチレンテトラミンからホルムアルデヒドができる機構については、ほとんどのニュースで「塩素と反応して」と書かれています。

http://mainichi.jp/select/news/20120525k0000m040117000c.html
(引用開始)
ヘキサメチレンテトラミンはアミン類の化学物質。無色の固体で水に溶けやすく、水中で塩素と反応すると分解され、ホルムアルデヒドとアンモニアになる。
(引用終わり)

しかし、反応式で書くと、

   (CH26N4 + 6 H2O → 6 H2C=O + 4 NH3

のはずであり、「塩素」がどう関与するのかどうにも納得できなくて、色々調べましたが、なかなか理解ができませんでした。

結論としては、塩素と反応するのではなく、塩素消毒で用いられる次亜塩素酸により水が酸性になって、その酸の触媒作用で上記の反応が起きるのだろうと考えます。すなわち、「塩素」そのものは無関係でしょう。

一般の人にはどうでもいいことかもしれませんが、ニュース記事を書く人は科学的に裏を取ってから書いてほしいものです。


なお、ネット上では放射性物質が原因でホルムアルデヒドが生成したなどという、とんでもないデマが流れていました。

【速報】意外に真実味も! 首都圏水道水のホルムアルデヒドに放射能原因説
http://www.excite.co.jp/News/economy_g/20120522/Itnetworks_tax_news_8fbkmf6ui.html

原因がほぼ特定できたので消えて行くと思いますが、何でも放射能(!)が原因だと科学的根拠のないウソの説をぶち上げるのは、社会の害悪と考えます。この記事は、科学の匂いをさせて書いてあるので、信じてしまう人も多かったかもしれません。



ついでに。

色々調べているうちに、興味深いサイトを発見しました。

有機化学美術館・別館

最新の記事で、今回のヘキサメチレンテトラミンについての記事が書かれています。
この「別館」でない方の「有機化学美術館」のサイト記事は、ずい分以前に全部読んで楽しませていただきました。

ほとんど更新されなくなったので、訪問しなくなっていましたが、タイムリーな話題でこのようなブログ記事を書き始めておられたのには、気づいていませんでした。

有機化学に少し素養のある方には、たいへん楽しく読むことが出来る記事が満載です。
ぜひお薦めします。


-----------------------------------------------------------------------------------------
よろしければ、クリックしてください。クリックした方には何の負担もなく、1円が募金されます。


東北関東大震災 緊急支援クリック募金