イランへの核査察と経済制裁問題 日本は独自の中東政策を持て | ナンでもカンでも好奇心!(tomamのブログ)

ナンでもカンでも好奇心!(tomamのブログ)

硬軟取り混ぜた種々雑多なネタについて書いてみようかと思います。
全くまとまりがないと思うけど、それが自分らしさということで。。。

国際原子力機関(IAEA)によるイランへの査察は、予定通り行われました。
東京新聞 2012年2月2日 朝刊

(引用開始)
 【カイロ=今村実】イランの核兵器開発疑惑の解決を目指し、同国を訪問していた国際原子力機関(IAEA)の高官級調査団は三十一日、イラン側との協議を終えた。「建設的だった」(イラン当局者)「いい協議ができた」(調査団)と、双方とも一定の評価をしているが、具体的な進展状況は不明だ。
 地元のファルス通信は、今後も協議を継続することで、両者が合意したと伝えた。次回の日程は不明。
 ロイター通信によると、国営のアラビア語衛星放送アルアラムは「技術的、法的な問題だけが協議された」との当局者の話を伝えた。調査団は今回、核関連施設の立ち入りはしなかったという。
 調査団の団長でIAEA事務次長のナカーツ氏は一日、イランからウィーンに到着し、「われわれは全ての問題解決を目指しており、イラン側も同じ考えであることは確かだ」と報道陣に語った。
 その上で「まだ多くのやるべき仕事がある」とし、近日中に調査団が再度、訪問するとの見通しを示した。
 IAEAは、起爆装置の実験施設の情報など核兵器開発に絡む疑惑を指摘し、調査団の受け入れを要請。調査団はメンバー六人が二十九日、三日間の日程で、首都テヘラン入りしていた。
(引用終わり)

これを受け、IAEAの再訪も決まったようです。
毎日新聞 2012年2月2日 東京夕刊

(引用開始)
 【ウィーン樋口直樹】国際原子力機関(IAEA)は1日、イランの核兵器開発疑惑の解明に向け、21~22日に再びテヘランを訪れイラン当局と協議すると発表した。1月29~31日に高官級調査団を現地へ派遣したばかりで、通常の査察業務と別に、短期間に核問題で直接協議を重ねるのは異例だ。IAEAの天野之弥事務局長は声明で「対話の強化に全力で取り組む」と述べた。
(引用終わり)

このように、イランとIAEAとは協力的に協議を重ねている状態です。

それなのに、米国はその結果を待たずに制裁を強めるよう、世界各国に要請しています。
まるで、それを待っていたら問題がないことが発覚して、米国にとって都合が悪いかのようです。

イラクの大量破壊兵器疑惑が、まさにそうでした。今回も同じであることは十分に疑われます。
イラクの場合と同じように、米国はイランと戦争を始めたいのでしょうか。

そのようなきな臭い動きもニュースに出ています。
第三者的なロシアのニュースが、このように報じています。
The Voice of Russia  2.02.2012, 16:55

(引用開始)
 米国はイスラエル、クウェートの駐留軍の規模拡大も開始した。サウジアラビア、アラブ首長国連邦には英仏の軍部隊が次々と到着し始めた。矛先はイラン。イランの核開発プログラムは西側の不満と不安を呼ぶようになって久しいが、これに加えてここ数ヶ月に攻撃開始の引き金となりかねない事態が発生した。それがホルムス海峡である。ホルムス海峡はペルシャ湾地域の石油が世界市場へと運び出される上での重要な輸送路となっている。イランはこの海峡を封鎖するぞと威嚇し、これに西側同盟国らは封鎖が実施された場合、これに攻撃で応酬すると応えた。

(中略)

 ペルシャ湾での戦争開始を憂慮するロシアに集団安全保障条約機構加盟国らが同調し、また国際的に大きなプレーヤーである中国もイランに対する戦争反対を積極的に唱え始めた。残念なことに今のところロシアの警告も中国の反対も西側連合国の武力による中東紛争解決への道を押しとどめることはできていない。
(引用終わり)

さらに、イスラエルが今春にもイランを攻撃するとの報道まで出ています。
ロイター 2012年 02月 3日 12:28 JST

(引用開始)
[ワシントン 2日 ロイター] 米メディアは2日、パネッタ米国防長官が、イスラエルがイランの核兵器開発を阻止する目的で4月にもイランを攻撃する可能性が高まっていると考えている、と報じた。

最初に報道したのはワシントン・ポスト紙。パネッタ長官が、イスラエルが今後数カ月の間にイスラエルが攻撃に踏み切る可能性が高まったことを懸念している、と同紙のコラムニストが書いた。CNNは、ワシントン・ポストの記事をオバマ政権の高官が匿名を条件に確認したと報じた。
(引用終わり)

これらの動きに対して、日本政府は米国に対して、制裁に対する例外措置の適用をお願いするばかりです。

ロシアや中国はイランとの戦争反対を明確に表明しているのに対して、世界有数の経済大国であり、かつ従来からイランと良好な関係を築いていてイランからの信頼も厚い日本は、このような事態になっても米国のお目こぼしを懇願するばかりで、平和的解決に向けた意見表明すらできないとは、いつものことながら情けない限りです。


この制裁措置に対して、産経新聞の「正論」に、平和安全保障研究所理事長・西原正という人の「日本はイラン制裁で発言力もて」という記事が掲載されています(1/31)。長いので一部だけ引用します。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/120131/mds12013103080003-n1.htm

(引用開始)
 しかし、果たして、この制裁は成算があるのだろうか。日本は、イランの核開発に反対するのは当然だとしても、米国主導の対イラン制裁は本当に妥当なのだろうか。3つの疑問を提示したい。

≪原油の安定調達は可能なのか≫
≪中国の「制裁破り」を許すな≫
≪核開発放棄につながるのか≫

日本は、これまで何度も指摘されながら中東戦略を立てず、米国主導に追随してきた。02年以降、米国の要請に応じて、イラン最大のアザデガン油田の権益放棄および石油輸入の大幅削減ですでに多大の負担をしてきた。大震災後の復興に必要なエネルギー源を確保するためにも、中東の安定に関して国際的場での発言権を持てるよう、より積極的に米国と協議する戦略を練るべきである。
(引用終わり)

全体としては、おおいに納得できます。
米国追随もいい加減にして、日本独自の政治的理念を持つようになる日は来ないのでしょうか。


ただし、この記事の中に以下のような記述があることに、たいへん驚きました。

(引用開始)
イスラエルや米国では、イランが核兵器を完成する前に核施設を攻撃破壊する方が自分たちには安全だという主張が勢いをもってくる。地下深くにあるといわれる核施設を米軍が爆破することができるのか疑問であるが、大統領選の年にはどの候補者も弱腰の姿勢がとれず、危険な状況が生まれるかもしれない。

むしろ、イスラエルがやってきたといわれるように、イランの核開発過程に対するサイバー攻撃、核科学者の殺害、偽装不良部品の提供などによって、開発を遅らせる戦略をとる方が実際的な効果がありそうである。
(引用終わり)

国益のために、他国の科学者を殺害することなど、絶対に正当化することなどできないと私は考えます。
「財団法人平和・安全保障研究所理事長」などという肩書きの人が、科学者を殺害するなどのテロ行為によって本当に平和が実現できると考えているのでしょうか?
そして、こんな記事を正々堂々と掲載する産経新聞の神経を疑います。産経は元々その程度の新聞社でしょうが。


1/18に書いた「300年間、他国を攻撃したことのない国: イラン」の記事で紹介した、今井克氏(株式会社全国新聞ネットの社長)の意見の方を、私は強く支持します。
http://www.47news.jp/47topics/premium/e/224592.php

(引用開始)
いずれにせよ確認のしようもないが、テロは卑劣な犯罪行為である。もし国家が個人に対するテロ行為を容認、実行するようなことがあるなら許せない。

 イランは国際社会の懸念にも関わらず、核兵器につながる原子力エネルギー技術の開発を進めている。どの国であれ、核兵器の開発は許せない。許せないけれども、個人に対するテロによって開発を阻止しようと図っている国家があるなら、それも許せない。
(引用終わり)


何よりも、戦争を望んでいない(ように見える)イランに対して、いたずらに制裁を急ぐ米国の主張に日本をはじめ世界各国が同調せず、平和的な解決が行われることを、中東で仕事をしている者として真剣に望みます。