米国がイランに対する経済制裁を強め、ヨーロッパ諸国や中国、韓国、そして日本にイラン産原油の輸入を制限するよう、要請しています。
安住財務大臣のこれに安易に同調する軽率な発言にはあきれましたが、政府としては打ち消しを図っているようです。
http://mainichi.jp/select/biz/news/20120114ddm002030085000c.html
(引用開始)
イラン核問題:制裁「米に同調」 安住氏発言、首相打ち消し
野田佳彦首相は13日の記者会見で、核開発を続けるイランへの制裁を巡り、安住淳財務相が12日のガイトナー米財務長官との会談で「(原油輸入量を)早い段階で計画的に減らす」と表明したことについて「これまでの経緯と見通しを個人的に話されたと思う」と述べた。政府は今後本格化する米国との交渉の切り札として輸入量削減を打ち出す方針だったが、安住氏が「フライング」して言及したため、首相が打ち消しに回った形だ。
イラン制裁を巡っては、米国が原油取引の決済を担うイラン中央銀行と取引する外国銀行に制裁を科す方針を決めたが、日本は原油価格高騰や世界経済への影響が大きいとして懸念を伝え、邦銀の適用除外を求める方針。
政府は、現在輸入量の10%を占めるイラン産原油のさらなる削減は避けられないと認識してはいるが、日米間の条件交渉は週明けにグレーザー米財務次官補(テロ資金・金融犯罪担当)が来日後に本格化する見通しで、外務省幹部は「安住氏は交渉で詰めるべき中身を先に言ってしまった」と語る。首相は12日にガイトナー財務長官と会った際に輸入削減に踏み込んでおらず、閣内で足並みの乱れが出た。
一方、玄葉光一郎外相は13日、フランスのジュペ外相と東京都内で会談。終了後の記者会見では、ジュペ外相が欧州連合(EU)が今月末にも合意予定のイラン産原油の禁輸措置などに同調を求めたのに対し、玄葉外相は「慎重な運用」を求めた。【横田愛】
毎日新聞 2012年1月14日 東京朝刊
(引用終わり)
18日から東京で開かれるイランに対する経済制裁をめぐる日米協議で、日本側は輸入削減に同調しつつも、日本経済への悪影響を抑えるため、邦銀への適用除外など制裁の例外措置を強く求めていく考えとのことですので、行方を見守りたいと思います。
さて、イランへの制裁については、私も11/10に「イランの核兵器開発疑惑 アメリカの二枚舌」という記事を書きましたが、最近、「47NEWS」にこのような記事がありました。そのまま転載させていただきます。
http://www.47news.jp/47topics/premium/e/224592.php
▽またイランの核開発専門家が殺された
イランで、また核開発科学者が殺された。1月11日の朝、テヘラン北部の路上を走行中の乗用車に、男が2人乗ったモーターバイクが近づき、磁石付きの爆弾を車体下部に取り付けた。バイクが走り去るタイミングで爆弾が爆発した。車には勤務先の工科大学に向かっていた核科学者、ムスタファ・アハマディロウシャン教授(32)を含めて3人が乗っていたが、教授は即死、もう1人が病院で死亡が確認され、残りの1人も負傷した。教授以外の2人はボディガードだったと思われる。
イランの核開発プロジェクトに関わっていたと見られる科学者がテヘラン市内の路上で殺害されたのはアハマディロウシャン教授で4人目。最初はちょうど2年前の2010年1月11日に核物理学者がテヘラン市内で爆殺された。同じ年の11月、ほぼ同時に2件の爆弾テロがあり、1人が死亡、1人が重傷を負った。2件ともバイクの2人組が被害者の乗った乗用車に磁石で取り付けた爆弾を爆発させる同じ手口。昨年7月には核物理学者が射殺された。
いずれの事件でも犯行声明の類いは出ておらず、犯人逮捕の発表もない。イラン当局は、「米国および犯罪的シオニスト政権の仕業」と糾弾している。「犯罪的シオニスト政権」というのはイスラエルのことである。
フランスの保守系新聞フィガロは11日付で、イスラエルの対外諜報機関、モサドがイランの隣国、イラクのクルド族居住地区に逃亡しているイランの反体制グループをテロ活動要員として組織化している、と報じた。同紙はイラクの公安関係筋から得た情報としている。
イスラエルの国家安全保障に関する情報に強いとされるブログ、ティックン・オラム(Tikun Olam)を主宰している米国人、リチャード・シルバーステイン氏もモサド説を唱えている。イラン・イスラム革命で現体制派に徹底的に粛清された反体制武装集団、ムジャヒディン・ハルクの残党がモサドに引き抜かれている、という情報だ。
形式的なことを言えば、イランは核拡散防止条約(NPT)の署名国である。国際原子力エネルギー機関(IAEA)の査察も受け入れている。
表面上ではあるが、イランの原子力エネルギー開発は国際法上、合法的に進められていると言える。
対するにイスラエルが核兵器を保有しているのは公然の秘密である。NPTにも加わっていない。IAEAの査察だってもちろん受け入れていない。それでも国際社会がイスラエルに制裁を加えるという話は聞かない。
米国はイランに対する制裁をエスカレートさせ、イラン中央銀行と取引のある金融機関を制裁対象にする方針で、日本や欧州諸国に同調を求めている。
12日に来日したガイトナー財務長官が日本政府に協力を要請。安住財務相がイラン原油の輸入削減を表明した。
いずれにせよ確認のしようもないが、テロは卑劣な犯罪行為である。もし国家が個人に対するテロ行為を容認、実行するようなことがあるなら許せない。
イランは国際社会の懸念にも関わらず、核兵器につながる原子力エネルギー技術の開発を進めている。どの国であれ、核兵器の開発は許せない。許せないけれども、個人に対するテロによって開発を阻止しようと図っている国家があるなら、それも許せない。
(2012年1月16日 今井 克)
秀逸な記事です。
今井克氏は、元共同通信社国際局長で、現在は株式会社全国新聞ネットの社長のようです。
改めて思いますが、米国のダブルスタンダードは、本当にヒドイものです。
そして、米国およびイスラエルは、経済制裁(および殺人?)を行って、何を目論んでいるのでしょうか?
想像ですが、イランが米国による制裁に耐え切れず、イスラエルand/or米国に戦争をしかけるのを待っているのではないかとの疑いが出てきます。
これと似た状況が、過去にもありました。
太平洋戦争前の日本です。
Wikipediaの「太平洋戦争」の記事
(引用開始)
さらに(1941年)7月25日には在米日本資産を凍結(ハーバート・フーバー前大統領はドイツと戦争するために日本を戦争に引きずり込もうとするものであったとしている])、8月1日には「全ての侵略国」への石油輸出禁止の方針を決定し、日本に対しても石油輸出の全面禁止という厳しい経済制裁を発令し、イギリスとオランダもただちに同調した(ABCD包囲陣の完成)。
この制裁は1940年の日米通商航海条約の破棄からはじまり、最初は航空用燃料の停止、北部進駐に伴う鉄類の停止、そして陸軍と外務省による同盟締結に伴い、必要物資の3割を占めていた蘭印との交渉が決裂し、国内物資の困窮が強まっていった(特に航空用燃料の欠乏が激しく、アメリカによる働きによって蘭印交渉でも航空燃料は要求量の1/4しか確保できず、決裂の原因となった)。
また、40年から41年にかけて民間会社を通じ、必要物資の開拓を進めたがアメリカ政府の干渉によって契約までたどり着かなない上、仏印への和平進駐及び満州増派に伴う制裁が実施され、物資の供給が完全に絶たれることとなった。
当時の日本は事実上アメリカから物資を購入しながら大陸にあった日本の権益を蒋介石軍から守っていた。例えば日米開戦時の国内における石油の備蓄は民事・軍事をあわせても2年分しかなかく、禁輸措置は日本経済に対し破滅的な影響を与える恐れがあった。
対日制裁を決めた会議の席上、ルーズベルトも「これで日本は蘭印に向かうだろう。それは太平洋での戦争を意味する」と発言している。
一方、連合国側は8月25日にイギリスとソビエトは共同してイラン進駐を行っているがこれに対しては欧米列強の非難はなかった。
(引用終わり)
最近、イランはホルムズ海峡の封鎖の可能性を宣言しています。
では、イランはこのまま、米国・イスラエルに戦争を仕掛けることになるのでしょうか?
もしかしたら、多くの日本人はイランは好戦的な国との印象を持っているかもしれません。(私もそうでした。)しかし、イランは過去300年間、他国を攻撃したことがないそうです。
これは、ユダヤ人学者(!)ヤコブ・ラブキン教授がNHKの番組で説明したことだそうです。
http://ameblo.jp/ghostripon/entry-10521536886.html
(引用開始)
●イラン脅威論こそ、シオニストたちにとって宣伝活動の最大の成功例
●イランは過去300年間、他国を攻撃したことがない
●だから、イランが最大の脅威だというのは何の根拠もない
●ホロコーストを政治宣伝に利用している
●日本はホロコーストにも国連決議にも係わっていないから自由に行動できる
●日本はパレスチナ人を抑圧しないようイスラエル政府を説得できるのではないか
●日本のような大国が独立した立場で声を挙げれば他の国も続くと思う
(引用終わり)
なお、イラン・イラク戦争(1980~1988年)は、サダム・フセインのイラクがイランに攻撃を仕掛けたものです。
イランでは前年の「イラン革命」で親米派のパーレビー政権が倒れてホメイニ師が指導者になったことから、米国はイラクを積極的に支援しましたが、裏ではイランにも武器輸出を行っています(イラン・コントラ事件)。
アメリカという国は、こんなことばかりしています。
世界の平和を乱しているのは、イランでしょうか、アメリカ・イスラエルでしょうか?
Wikipediaには「イランと日本の関係」という記事がありました。(イラン以外の国との間にはこのような記事はありません。)
ここには「歴史を通して両国は比較的友好的かつ強く戦略的な関係を維持してきた。」と明確に書かれています。そして、核兵器に関しては、以下のような記載があります。
(引用開始)
2010年2月23日、イランのアリー・ラリジャニ国会議長が衆議院の招待で来日した。議長は、同月24日に岡田克也外務大臣と会談し、同月27日には長崎市を初めて訪れ、長崎原爆資料館を見学した。議長は記者団に「世界に一つでも原爆が存在すれば人類への脅威だ。人々は、核のない世界に向けて立ち上がるべきだ」と感想を述べた。見学後、田上富久長崎市長らと共に、資料館近くの爆心地公園にある原爆落下中心地碑に献花した。
なお、ラリジャニ議長は、2010年2月28日、原爆資料館を見学した感想について、「原爆投下こそが米国が引き起こした真のホロコーストだ」とイラン国会で演説したとイランのメディアが報じている。また、議長は、27日の長崎初訪問について「日本にとって最も悲しい出来事の一端を知る機会だった」と述べた。そして、「広島に原爆を投下して核兵器の影響の大きさを知りながら、長崎にも落とした」と述べ、ホロコーストよりも、アメリカの核兵器使用を問題にするべきだとの認識を示した。
(引用終わり)
もちろん、イランが核兵器開発を行っていないと言っているのをそのまま信用することについては、ある程度慎重を期する必要はあるかもしれません。
しかし、アメリカ政府の発表については、そしてアメリカ側の見解だけを報道する多くの日本のマスコミについては、大いに疑いを持って受け止めなければならないことは、間違いありません。
イラク戦争が始まったのは2003年。我々は、双方あわせて数万人が死亡したその戦争の開戦の口実が何であったかについても、思い出さなければなりません。
Wikipedia「大量破壊兵器」
(引用開始)
イラク戦争開始の根拠として、“イラクが大量破壊兵器を保有している可能性があること”、および“国連の無条件査察を受け入れなかったこと”が挙げられている。なお、戦闘終結後、アメリカから派遣された調査団が大量破壊兵器の捜索をおこなったが発見されず、2004年10月に「イラクに大量破壊兵器は存在しない」との最終報告を提出した。
(引用終わり)