超撥水技術、ハスの葉、おもちゃ | ナンでもカンでも好奇心!(tomamのブログ)

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硬軟取り混ぜた種々雑多なネタについて書いてみようかと思います。
全くまとまりがないと思うけど、それが自分らしさということで。。。

JSTVで『大天才てれびくん』を観ていたら、「超撥水」技術を紹介していました。
(この番組、再放送がとても多く、先に11月に放映されたもののようですが。)

茶こしに超撥水加工をすると水がすくえるとか、紙に超撥水加工すると習字が書けないとか、超撥水加工をした砂を水の中に入れたら水の中で砂が固まり、この砂の塊を外に出したら濡れていないとか、子どもが面白がるような内容。

私が興味を持ったのは、その超撥水の原理。
ハスの葉が水をはじく性質を研究して作ったと。
表面にきわめて小さい突起を並べることで、水をはじく性質が出るのだと。


…ほう。

撥水加工というのは、フッ素樹脂などの疎水性の(水となじみにくい)性質を持つ物質を表面にコーティングすることでで、化学的にその性質を与えているものと思っていました。

Wikipediaで調べると、「超撥水」という記事がありました。

まず、超撥水とは、接触角(液体が固体表面にある状態で、液体の表面の接線が固体となす角)が150度を越える場合と定義されているようです。

数式での説明もあります。私は研究者時代のちょっとした仕事で接触角のことを調べていて、「ヤングの式」までは知っていたのですが、凹凸が多く粗い面の場合の関係式(「Cassie -Baxter の式」)までは知りませんでした。

ただ、専門的過ぎるので(というより私も十分理解できないので:笑)、ここでは省略します。

定性的に理解したところでは、表面の物質の化学的性質によって本来的に水に濡れない(接触角が90度以上の)場合に、表面に小さな凹凸が多いとその空隙に水が入り込めないために、もともと液を弾きやすい性質がより弾きやすくなるようです。何となく納得。

さらに、こんなところで超撥水の性質を実現するのに理想的な形状として「フラクタル」が出てきてびっくり。

「限りなく面-液面が多い点で接触する条件とは、すなわち、面の凹凸が限りなく多いということである。この条件を満たす理想的な面とはフラクタル面である。」


このような効果は、「ロータス効果」と呼ばれます。(ロータス・lotusは英語でハスのこと)
ハスやサトイモの葉が水を弾くのは、見ているだけでも楽しいですね。

以下の画像はWikipedia「ロータス効果」より。

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サトイモの葉のロータス効果をもたらす水玉(上)と葉表面の無数の突起微細構造の拡大写真(0-1間は1ミリメートル長)(下)

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コンピューターグラフィックスで描いたハスの葉の表面構造


このように、生物が持っている性質に学ぶ研究開発は「バイオミメティック」と呼ばれます。
ネット上で、このような記事を発見しました。

「生物の多様性に学ぶ新世代バイオミメティック材料技術の新潮流」
 下村 政嗣 (科学技術動向研究センター 客員研究官、東北大学教授)
http://www.nistep.go.jp/achiev/ftx/jpn/stfc/stt110j/report1.pdf

(引用開始)
表面の微細構造に起因する撥水性による清浄効果は、ロータス効果(Lotus-Effect®はボン大学の商標)と呼ばれている。ボン大学は企業との共同研究によって、疎水性シリカなどのナノ微粒子をバインダーに分散した Lotusan という塗料を開発し、Evonik 社(旧 Degussa社)など複数の企業が商品化した。

ロータス効果の発見は、新世代バイオミメティクス研究における生物学と材料科学、産業界との共同研究の最も有名な成功例のひとつと言える。

これに触発されて、繊維用スプレー(BASF 社の Mincor®TX TT)、コーティング剤(日華化学)、撥水性樹脂(GE の Lexan)、プラズマ CVD 法による凸凹形成(名古屋大学)、高耐水性化粧品(カネボウ)など、ボン大学の技術と類似の効果をもたらす技術開発も行われている。
(引用終わり)

さらにここには、他に以下のような技術について記述されています。

- 鮫肌リブレットに学んだ材料(競泳水着)
- 蝶やタマムシに学んだ構造色材料
- ヤモリの足に学んだ接着材料
- 無反射性を持つモスアイ(蛾の複眼)構造材料
- サンドフィッシュ(砂の中を泳ぐ魚)に学んだ低摩擦材料
- 昆虫と植物の攻防に学ぶトライボロジーの研究
- 昆虫のセンシングに学んだセンサー材料

タイトルを見るだけでも楽しくなりますね。いつか、調べてみたいです。


さて最後に、関連して見つけたおもちゃ。

超撥水GAME aqua drop ハモン/バンダイ

¥1,575
Amazon.co.jp

「ナノサイズの粒子で作られた薄膜による超撥水加工により可能になった水玉遊び。水玉をくぼみにいれたり、運んだり、水玉の大きさを変化させたりと、水玉ならではの遊び方も楽しめる。」

いくつかの種類があり、なかなか面白そうです。
子ども向けに(という言い訳で)買ってみようかな。


さらにAmazonの説明。

「なぜアクアドロップでは、見慣れているはずの水が、その常識を超えた動きを見せてくれるのか。

 その秘密は、本体内部に施している特殊な加工にある。

 アクアドロップは、超撥水在「アデッソ WR」を開発した日華化学株式会社の協力を得て開発された。「アデッソ WR」には特殊な粒子が配合されており、ナノサイズの薄膜を物体の表面に作り出すことができる。

 この薄膜はフラクタル構造という微細な凸凹形状を表面に持っており、自然界にある蓮の葉や蜘蛛の糸などと同様の構造となっている。

 このため、水を接触角150度という高い撥水性で弾くことができ、今までに見た事もないような水玉の動きが実現(通常の撥水剤の接触角は100度前後)
*接触角:撥水性のレベルを表す単位。角度が高いほど撥水性も高い。」

私が上の方で書いていたことが、そのままおもちゃの説明に出てきています(笑)
こんな高度な技術を使って、こんなおもちゃを作ってしまうバンダイの発想がCoolです。