福島第一原発 ヨウ素131、セシウム137とは? | ナンでもカンでも好奇心!(tomamのブログ)

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硬軟取り混ぜた種々雑多なネタについて書いてみようかと思います。
全くまとまりがないと思うけど、それが自分らしさということで。。。


東京都葛飾区の金町浄水場の水道水から、放射性ヨウ素131が1リットル当たり210ベクレル検出されました。これは、大人の摂取制限の指標となる水1リットル当たり300ベクレル以内に収まっていますが、1歳未満の乳児の摂取制限の指標となる1リットル当たり100ベクレルの2倍以上の値となっています。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110323/t10014853741000.html

また、福島産などの一部野菜に規制値を大きく超えるセシウム137やセシウム134が検出され、出荷制限および摂取制限が指示されました。

http://www.nikkei.com/news/headline/related-article/g=96958A9C93819481E0E1E2E2E48DE0E1E2E1E0E2E3E3E2E2E2E2E2E3;bm=96958A9C9381949EE0E1E2E48B8DE0E1E2E1E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2


まず、放射性物質が検出されたこのような食べ物を1回や数回程度食べても、健康に影響はないことを記しておきます。

さて今回は、報道で出てきた、ヨウ素131やセシウム137とは何なのかを科学的に説明してみたいと思います。


私のブログでは、先に原子のモデルから原子炉のしくみと現在の事故原因まで、基礎からの説明を試みています。 → 必要十分な基礎知識

また、放射性物質の量を示す単位の「ベクレル」についても、説明をしています。 → ベクレルとは?

さらに、放射性ヨウ素の危険性と、その予防薬安定ヨウ素剤について、情報を整理・検討しました。
 → 万一の場合のヨウ素摂取

陽子・中性子・質量数などについての知識が十分でない方は、必要十分な知識 を先にお読みください。



まず、ちょっと遠回りですが、周期表について簡単に説明します。

元素は、2010年2月に正式に命名されたばかりのコペリニシウムを含め、現在のところ112種類見つかっています。

少しおさらいですが・・・、

原子には原子核と電子があり、原子核は陽子と中性子とからできています。
各元素(原子)は、陽子の数で原子番号が決められています。
陽子の数と中性子の数の和を質量数といいます。
おなじ元素(陽子の数が同じ)でも中性子の数が異なる(したがって質量数が異なる)原子が存在します。これを同位体といいます。

さて、
元素を原子番号順に並べると、性質の似た元素が周期的に現れることが、ロシアの科学者メンデレーエフによって提案されました。これを表にしたものが周期表です。

周期表では、左から右へ原子番号がひとつずつ増えていきます。一番右まで達すると、次は一段下の最も左につながります。

縦の並びを「族」と呼び、性質の似た元素が並んでいます。
たとえば、以下のようです。

・最も右の第18族は、常温で気体で、反応性に乏しい「希ガス」 ヘリウム・ネオン・アルゴン・クリプトン・・
・最も左の第1族は、1価の陽イオンになりやすい「アルカリ金属」 (水素)・リチウム・ナトリウム・カリウム・・
・第17族は、2原子分子やアルカリ金属との塩になりやすい「ハロゲン」 フッ素・塩素・臭素・ヨウ素・・
・第11族は、腐食されにくい貴金属: 銅・銀・金・・

なお、下の周期表は絵として貼り付けていますが、リンク先の本物は色々動かすことができて興味深いです。
http://www.ptable.com/

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(息抜きの余談ですが・・・、
 歌詞がほとんど元素名という歌 「スイヘイリーベ」 について、昨年12/31の私のブログで紹介しています。
http://ameblo.jp/tomamx/entry-10753124106.html
 息子(当時5歳)はこれでほとんどの元素名を覚えてしまいました。ただし、ランタノイドとアクチノイド(したがってウランやプルトニウム)は歌詞では元素記号だけなので、憶え切れていません。)


さて、ヨウ素131とセシウム134/137の話に進みます。

核燃料として使われるのは、ウラン235です。
これに中性子を吸収させると、2つの別の原子に分裂します。
この反応を核分裂反応、こうしてできた新しい原子(原子核の種類=核種)を核分裂生成物と呼びます。

さまざまな100種類もの核分裂生成物ができます。
その質量数は、90-100および135-145付近に2つの山を持つ分布となるそうです。
http://www.geocities.co.jp/Technopolis/6734/kisogenri/seiseibutu.html

それら核分裂生成物は一般に不安定で、崩壊して、より安定な核種になっていきます。
その半減期はさまざまで、1秒以下で崩壊するものから、何万年にもなるものもあります。

ウラン235の核分裂による主な核分裂生成物は、Wikipedia では次のように記されています。

生成物 収率 半減期
セシウム133 6.79% 安定
ヨウ素135 6.33% 6.5時間
ジルコニウム93 6.30% 153万年
セシウム137 6.09% 30.17年
テクネチウム99 6.05% 21万1100年
ストロンチウム90 5.75% 28.9年
ヨウ素131 2.83% 8.02日
プロメチウム147 2.27% 2.62日
サマリウム149 1.09% 安定
ヨウ素129 0.66% 1570万年


次に、さまざまな原子核の種類(核種)について考察してみます。

前にも紹介したWikipediaの核種の一覧表で、ヨウ素137およびセシウム137を含む部分を切り出しました。
(元の図はこちら http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A0%B8%E7%A8%AE%E3%81%AE%E4%B8%80%E8%A6%A7

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この図で、右に行くと陽子数がひとつ増えます。したがって、原子番号がひとつ大きい別の元素になります。
また、下に行くと中性子がひとつ増えます。元素としては変化しませんが、質量数は増えます。

色で半減期が示されています。
赤色は、安定な同位体(放射線を出して崩壊することがない同位体)です。
ヨウ素127( 127I )や、 セシウム133( 133Cs)はその例です。
赤色以外の同位体は、全て放射性同位体です。

ヨウ素131やセシウム137のような放射性同位体は、一般にはベータ崩壊して他の元素になります。

ベータ崩壊とは、中性子が電子をひとつ放出して陽子になることです。
(このときに出る電子の粒子線が放射線のひとつベータ線です。)

ベータ崩壊では、陽子が一つ増え中性子がひとつ減るので、核種の一覧表では、右斜め上の核種に変化することになります。


ヨウ素131は崩壊して キセノン131( 131Xe )になります。これは安定同位体ですので、これ以上崩壊しません。

同じ元素の同位体は、物理的性質は異なっても、化学的性質は同じです。
崩壊して別の元素になると、化学的性質は全く異なってしまいます。これが不思議なところ。

放射性ヨウ素が体内に取り込まれると、甲状腺に集まり、特に子どもに甲状腺ガンを引き起こす恐れがあると。
チロキシンなどの甲状腺ホルモン は、芳香族環にヨウ素が結合した分子です。

・・・こういう分子の一部になったヨウ素原子が、ある確率で崩壊してキセノンになる??
  結合の手がなくなって・・・この分子はどうなるんだろう?私にもわからない世界です。

キセノンは、周期表のところで紹介したように希ガスのひとつで、ヘリウムやアルゴンに似て化学的には不活性な元素です。(少しは反応するようですが。)どこかから空気中に抜けていくのでしょうか。

ヨウ素131の半減期は約8日です。これは、

ヨウ素131だけで100ミリグラムあったとすると、
  8日後にはヨウ素131が50ミリグラム、キセノン131が50ミリグラム
 16日後にはヨウ素131が25ミリグラム、キセノン131が75ミリグラム
 24日後にはヨウ素131が12.5ミリグラム、キセノン131が37.5ミリグラム
と変化していく

ということです。この変化の際に放射線を放出します。


また、セシウム137は バリウム137( 137Ba )に、セシウム134は バリウム134( 134Ba )になります。
これらのバリウムはともに安定同位体です。
(厳密には、一部が短寿命の 137mBa になってからガンマ崩壊して 137Baになるらしいですが、難しいので省略。 )

セシウムは化学的にはナトリウムやカリウムに似ていて、単体は水とすぐに反応してしまい、セシウムイオンとして水に溶けていると推定されます。これは、フィルターによるろ過や煮沸などでは除去できません。

放射性セシウムが体内に入った場合の影響は、Wikipedia によると、

セシウムは体内に入ると血液の流れに乗って腸や肝臓にガンマ線を放射し、カリウムと置き換わって筋肉に蓄積したのち、腎臓を経て体外に排出される。セシウム137は、体内に取り込まれてから体外に排出されるまでの100日から200日にわたってガンマ線を放射し、体内被曝の原因となるため大変危険である。

とされています。セシウムがバリウムに変化したら・・・イオンなら比較的問題は少ないような。。。でも化学的に何が起きるのかよくわかりません。

半減期はセシウム134が約2年、セシウム137が30年です。


以上、若干歯切れの悪い部分もありますが、放射性ヨウ素、セシウムとは何かの説明でした。


なお、今日のNHKでも解説されていましたが、チェルノブイリの事故で確認されている疫学的症状は、ヨウ素131による子どもと若年層の甲状腺ガンだけとのことで、これまでのところ白血病なども目立った増加はないらしいです。

とは言え、今のところ政府の方針に多くの識者も同意しています。

必要以上に怖れる必要はありませんが、不必要な被曝を避けるため、摂取制限に従うのがいいでしょう。