本当に寒い日が続く。
 左手中指のばね指がなかなか治らず、朝は特に痛むので釣りに行くのも億劫になる。ブログの更新もままならない。



 それでも知らないうちに春の気配が近づいてきているのか、雨の日や荒れた天候が繰り返しやってくるようになった。


 日も少しずつ長くなり、夜明けの時間も早くなった。

 朝焼けの紫だちたる雲の色が少しだけ冬の終わりを予感させている。



 水平線から顔を覗かせる煌々たる太陽。
 それに応えるかのように曙光を浴び、鮮やかなオレンジ色に染め上がった大空と、海面に漂う海霧。



 自然がもたらす美しい海辺の光景。
 まさに黄金比の朝である。
 しばし寒さも指の痛さも忘れ、リールを巻く手も緩めて圧倒的な自然と対峙する。至福のひとときが訪れる。



 それにしてもこの寒いのに、魚の気配も全くないのに、釣り人は多い。




 知らなかったが、本日2月22日は猫の日だそうだ。
 寒くて外に出られないし、指も痛むので猫たちと本でも読みながら午后のひとときをまったりと過ごしていると、脳裏にかんたろうと出会ってからのことが走馬灯のように次々と甦ってきた。



 二年前の年の瀬、ひとり淋しく公園で佇むかんたろう。
 公園で過ごす厳冬の日々は想像を絶する、まさに生死がかかるほどの寒さと厳しさだっただろう。



 今思い出すのは、
 家庭と仕事を失ったことに端を発する寂寞とした中空の私の心をいくらかでも埋め戻してくれたその目の輝き。
 そして、じっと見詰めて訴えるその瞳に魅せられ、日々悶々と心を揺らし、一緒に暮らす夢のため、空き家を探していた慌ただしかったあの頃のこと。



 かんたろうと一緒に暮らし始めてもうすぐ二年になる。
 忘れもしない二年前の三月五日。怯え切った表情で部屋の隅からなかなか出てこようとしなかった。



 しかし、一緒に暮らし始めるとすぐにこの環境に溶け込み、その無垢な瞳の輝きを取り戻してくれた。



 大あくびをしたり



 笑ったり



 口をへの字にして遊んだりする姿が、次々と浮かんできた。



 そして、トンがやってきてもうすぐ五ヶ月になる。あっという間に時は過ぎてゆく。



 本当に、仲良くなった。



 ほのぼのとした時が流れ、いつの間にか私の心は満たされていった。



 おやすみ、かんたろう。
 春は確かに、少しずつ近づいてきている。
 トンにとっては初めての春、かんたろうと一緒に暮らし始めて三度目の、桜の花が咲く日ももうすぐだ。





 2月に入ってからも、とても寒い日が続いている。海水温の方が余程高いのか、夜明け前のこの海は連日のように水蒸気が湧き上がり、海霧に一面覆われている。


 すぐに指先が冷気でかじかんで痛み、そのうち感覚がなくなってくる。



 それにしても、水平線から昇りゆく太陽を祝福するような、見事なオレンジ色の朝焼けである。



 その感動を台無しにする、釣り人の残したゴミ。

 イカ釣り用のヤエン仕掛けの大きな針や、針がついたままの死んだ餌のアジなどもそのまま捨ててある。

 そのアジを鳥が狙っている。慌てて拾い、ビニール袋に入れ持ち帰った。だから釣り人は嫌われる。




 あまりに寒すぎるのと、魚も釣れないので最近部屋にこもってギターの練習に励んだ。



 エレキギターでスケールの早弾きを繰り返し練習したり、アコースティックギターで弾き語りを楽しむ。久々に充実した日々を過ごしていた。



 近所迷惑なので、アンプは鳴らさずヘッドホンでひとり悦に入る。



 久しぶりに、ひたすら指を動かす日々が続いた・・・。



 すると数日後の朝、目覚めた時に左手の中指に異変を感じた。

 何と左手中指がばね指になって動かない上に痛みもある。



 しばらくは安静にして保存療法となった。

 せっかく始めたギターの練習ができなくなってしまった。早朝の極寒でのジギングも指に悪かったようだ。



 その日、朝食を食べている時、前歯の詰め物が突然ポロリととれた。何と運の悪い日だろうか。しかも歯医者に予約を入れると、二週間先しか空いてなかった。

 諦めて、猫たちと遊ぶ。

 トンの手術の傷もすっかり良くなった。かんたろうにお腹を見せるトン。



 そして相変わらず先にちょっかいを出し喧嘩を仕掛ける、トン。



 しばらくふたりで戯れあって遊んでいるのを微笑みながら眺める。

 指の痛みも、歯の違和感もしばし忘れる。



 遊び終わるといつものように、かんたろうはトンの体を優しく舐め始める。



 本当に仲がいい。ほのぼのとした時間がゆっくりと流れてゆく。



 夜中、何故かうつろな表情のかんたろう。じっと一点を見つめたまま動かない。



 しかも、舌を仕舞い忘れている。

 声をかけても触っても舌を出したままじっとしている。仕方なく水を飲ませるとようやく舌を引っ込めた。



 おやすみ、かんたろう。

 沈んだ私の憂鬱な心を、その笑顔で和ませてくれて、ありがとう。



 今週も寒い日が続いていた。
 夜明けの海は立ち上る湯気のような水蒸気に一面覆われていた。



 火曜日、波が高かったが寒気が少し緩んでいた。釣り人は遠くの方に三人ほど。

 そのとき、少し離れた隣の釣り人が何か釣っているのが見えた。

 何と巨大なヒラメを釣り上げていたのだ。70㎝はあるだろう。



 この海岸であんなに大きなヒラメを見たのは初めてだった。

 悔しかった。なんでこの私のジグを選んでくれなかったんだろう。



 運が悪いのか、下手くそなのか。

 まあ、仕方がない。釣れる時は釣れる。

 自然を相手の釣りとはそういうものだ。



 しかし、冬の夜明けは本当に美しい。

 凛として澄んだ空気の中、壮大な大自然を背景に、燦々と昇りゆく鮮やかな橙色の太陽を見るのはとても気持ちがいい。




 なぜか無性に讃岐うどんが食べたくなり、ネットで検索して注文した。

 届くと、早速説明書どおりに茹でてみた。



 真昆布と伊吹島の煮干しと鰹節の出汁を効かせた自家製のつゆで。

 思ったより麺が細く、腰が強く硬い感じだが美味かった。今度はもう少し長く茹でてみよう。




 桜耳になってトンが帰ってきた。

 月曜日、避妊手術が終わり、日帰りで無事帰ってきたが、病院の先生に太りすぎていて大変だったと言われた。そして「傷口が少し大きいので安静に」とも・・・。



 当日の夜はぐったりしてほとんど動かなかったトン。一晩中かんたろうが心配してそっと見守っていた。

 二日目になるとゲージの最上段まで登れるようになり、かんたろうは心配なのか一緒にゲージの中に入って行った。



 いつもなら絶対にトンのゲージに近寄りもしないのに、この日のかんたろうは入ったまま出ようとしない。

 ふたり並んで、トンも嬉しそう。



 心配そうに、トンに何かを話しかけているかんたろう。



 痛かったと訴えてくるトン。



 三日目になると一緒に遊び出した。



 まだまだ傷口が塞がっていないので、ふたりでいるときは目が離せない。



 よかったね、トン。

 そして、ありがとう、かんたろう。

 これからも、ずっと一緒だ。