3月5日、啓蟄。
 記念すべき日。あれからもう二年が経った・・・。

 そして今、朝ぼらけの東の空に有明の月が美しく輝き、静かに夜は明けてゆく。



 その月の輝きが薄れてくると、鮮やかなオレンジ色の曙光とともに水平線から太陽が顔をのぞかせ始めた。



 そして、幽かに浮かぶ飛行機雲の軌跡に逆らうように鳥が飛び交う。

 何とも美しい夜明けの海辺の光景が目の前に広がる。



 とても静かな海に太陽の影が映える。

 3月に入りそろそろ春の足音が近づいてきているのに、海はまだ沈黙したままだ。



 今年に入って寒さに震え萎える身体に鞭打って毎朝のようにこの海岸に通い、ひたすらジグを投げ続けるが全く釣れない、微かな当たりすらない。

 そろそろ鰤クラスの青物が回ってきても良いのだが。



 そして春は待望の石鯛釣りの季節だ。

 一発大物を求め、いつまでも夢を追い続けたい。



 3年前の5月に仕留めた64センチの立派な銀わさ。

 何故か笑っているように見えた。

 今年の狙いは65センチ越えの、磯の王者、笑う石鯛だ。



 それにしても何も釣れないので、スーパで地元産の朝獲れ天然真鯛を買う。少し小ぶりだが、安くて綺麗だったので迷わず買ってしまった。



 二日寝かして刺身と、あとは昆布締めに。



 ついでに、九州フェアをしていたのでおやつを買ってしまった。



 このショコラ、思っていたよりびっくりするぐらい美味かった。ブラックコーヒーと一緒に。



 思わず本場の長崎カステラも買ってしまった。



 これがまた上品でとても美味しい。和三盆糖とザラメが旨さを引き立てている。




 2年前、3月5日啓蟄の日の早朝。

 誰もいないこの公園でかんたろうを捕獲したのだった。



 惨めに痩せさらばえていたかんたろうを小さなキャリーバックに入れ、車で2時間以上かけてこの海辺の小さな町に連れてきた。

 興奮に、胸がときめいていた。



 そして、かんたろうとふたりでの生活が始まった。

 あの日、かんたろうは怯えてなかなか部屋の隅から出てこなかった。



 孤独に押し潰されそうな夜も、涙を堪え酒に溺れそうになり憂悶に苦しむ日々も、常にそばで寄り添ってくれた、かんたろう。


 そして、今年の啓蟄の日はトンが増えてとても賑やかになった。



 冬籠りの虫が這い出るこの日、暖かい陽だまりの中でかんたろうとトンも跳ね回る。



 その愛くるしい仕草の一つ一つに私の心も洗われてゆく。



 おやすみ、かんたろう。

 今日もかわいい寝顔をありがとう。




 本当に寒い日が続く。
 左手中指のばね指がなかなか治らず、朝は特に痛むので釣りに行くのも億劫になる。ブログの更新もままならない。



 それでも知らないうちに春の気配が近づいてきているのか、雨の日や荒れた天候が繰り返しやってくるようになった。


 日も少しずつ長くなり、夜明けの時間も早くなった。

 朝焼けの紫だちたる雲の色が少しだけ冬の終わりを予感させている。



 水平線から顔を覗かせる煌々たる太陽。
 それに応えるかのように曙光を浴び、鮮やかなオレンジ色に染め上がった大空と、海面に漂う海霧。



 自然がもたらす美しい海辺の光景。
 まさに黄金比の朝である。
 しばし寒さも指の痛さも忘れ、リールを巻く手も緩めて圧倒的な自然と対峙する。至福のひとときが訪れる。



 それにしてもこの寒いのに、魚の気配も全くないのに、釣り人は多い。




 知らなかったが、本日2月22日は猫の日だそうだ。
 寒くて外に出られないし、指も痛むので猫たちと本でも読みながら午后のひとときをまったりと過ごしていると、脳裏にかんたろうと出会ってからのことが走馬灯のように次々と甦ってきた。



 二年前の年の瀬、ひとり淋しく公園で佇むかんたろう。
 公園で過ごす厳冬の日々は想像を絶する、まさに生死がかかるほどの寒さと厳しさだっただろう。



 今思い出すのは、
 家庭と仕事を失ったことに端を発する寂寞とした中空の私の心をいくらかでも埋め戻してくれたその目の輝き。
 そして、じっと見詰めて訴えるその瞳に魅せられ、日々悶々と心を揺らし、一緒に暮らす夢のため、空き家を探していた慌ただしかったあの頃のこと。



 かんたろうと一緒に暮らし始めてもうすぐ二年になる。
 忘れもしない二年前の三月五日。怯え切った表情で部屋の隅からなかなか出てこようとしなかった。



 しかし、一緒に暮らし始めるとすぐにこの環境に溶け込み、その無垢な瞳の輝きを取り戻してくれた。



 大あくびをしたり



 笑ったり



 口をへの字にして遊んだりする姿が、次々と浮かんできた。



 そして、トンがやってきてもうすぐ五ヶ月になる。あっという間に時は過ぎてゆく。



 本当に、仲良くなった。



 ほのぼのとした時が流れ、いつの間にか私の心は満たされていった。



 おやすみ、かんたろう。
 春は確かに、少しずつ近づいてきている。
 トンにとっては初めての春、かんたろうと一緒に暮らし始めて三度目の、桜の花が咲く日ももうすぐだ。





 2月に入ってからも、とても寒い日が続いている。海水温の方が余程高いのか、夜明け前のこの海は連日のように水蒸気が湧き上がり、海霧に一面覆われている。


 すぐに指先が冷気でかじかんで痛み、そのうち感覚がなくなってくる。



 それにしても、水平線から昇りゆく太陽を祝福するような、見事なオレンジ色の朝焼けである。



 その感動を台無しにする、釣り人の残したゴミ。

 イカ釣り用のヤエン仕掛けの大きな針や、針がついたままの死んだ餌のアジなどもそのまま捨ててある。

 そのアジを鳥が狙っている。慌てて拾い、ビニール袋に入れ持ち帰った。だから釣り人は嫌われる。




 あまりに寒すぎるのと、魚も釣れないので最近部屋にこもってギターの練習に励んだ。



 エレキギターでスケールの早弾きを繰り返し練習したり、アコースティックギターで弾き語りを楽しむ。久々に充実した日々を過ごしていた。



 近所迷惑なので、アンプは鳴らさずヘッドホンでひとり悦に入る。



 久しぶりに、ひたすら指を動かす日々が続いた・・・。



 すると数日後の朝、目覚めた時に左手の中指に異変を感じた。

 何と左手中指がばね指になって動かない上に痛みもある。



 しばらくは安静にして保存療法となった。

 せっかく始めたギターの練習ができなくなってしまった。早朝の極寒でのジギングも指に悪かったようだ。



 その日、朝食を食べている時、前歯の詰め物が突然ポロリととれた。何と運の悪い日だろうか。しかも歯医者に予約を入れると、二週間先しか空いてなかった。

 諦めて、猫たちと遊ぶ。

 トンの手術の傷もすっかり良くなった。かんたろうにお腹を見せるトン。



 そして相変わらず先にちょっかいを出し喧嘩を仕掛ける、トン。



 しばらくふたりで戯れあって遊んでいるのを微笑みながら眺める。

 指の痛みも、歯の違和感もしばし忘れる。



 遊び終わるといつものように、かんたろうはトンの体を優しく舐め始める。



 本当に仲がいい。ほのぼのとした時間がゆっくりと流れてゆく。



 夜中、何故かうつろな表情のかんたろう。じっと一点を見つめたまま動かない。



 しかも、舌を仕舞い忘れている。

 声をかけても触っても舌を出したままじっとしている。仕方なく水を飲ませるとようやく舌を引っ込めた。



 おやすみ、かんたろう。

 沈んだ私の憂鬱な心を、その笑顔で和ませてくれて、ありがとう。