津波注意報が解除された翌日の夜明け前いつもの海岸に出かけた。
 津波の影響か海岸に溜まっていたゴミや流木が一掃され海岸線が綺麗になっていた。



 その日は冷え込みが少し緩んだ、とても静かで穏やかな海だった。

 そして生命反応も全くなかった。



 今週は大寒を迎え、日々厳しい寒さが続いている。夜明けの時間帯は連日の氷点下。ひどい冷気で手がかじかみ指先の感覚がなくなる。

 そして、海面からは水蒸気が湧き上がり海上は見事な海霧に覆われていた。



 この寒いのに、いつも徹夜での若いイカ釣りが何名かいる。

 その若さの、ほとばしる、溢れんばかりのエネルギーにしばし感心する。




 寒くて全身が震え、手足の感覚がなくなっても、全く当たりがなくても、何故か私はこの大海原から鮮やかな曙光を放ちながら雄大に昇りゆく、大きな太陽に向かって連日ジグを投げ続ける。

 心が目の前に拡がる景色に溶け込み、自然と一体となった感じが爽快で、とても気持ちがいいのだ。釣れなくても、不思議な至福感に包まれてゆく。



 魚が釣れないので、スーパーでグレの刺身を買った。この時期のグレは脂が乗り切って非常に美味だ。

 一端の上物師として沖磯に通い詰めていた若い頃を思い出す。魚の捌き方も、美味しい魚の味も、あの頃釣り上げた脂の乗った寒グレで覚えた。



 珍しくニロギの干物が安く売っていたので、さっとごま油で揚げて南蛮漬けに。ニンニクを一片入れて絶妙な酒の肴になった。



 この日は脂の乗ったグレとカツオの刺身。熱燗と熱々ご飯で。



 ネット注文していた豚まんと餃子が今日届いた。年に一度の楽しみ。いつ、何個食べようかと、悩む。






 ある日の昼下がりのかんたろうと、トン。



 かんたろうは昼寝から目覚めて、別室でひとり遊んでいたトンのところへ。



 写真を撮ろうと構えるスマホ越しの、ふたりの仕草に思わず微笑み、夢中でシャッターを切ってしまう。



 かんたろうも大きいが、生後七ヶ月になりトンも太った。

 

 

 来週の月曜日にトンは避妊手術をする予定だ。

 手術でトンが病院に行った時の、かんたろうの心配で狼狽する姿が目に浮かぶ。


 

 おやすみ、かんたろう。

 来週はトンも耳がカットされた桜ネコとしてうちに帰ってくる。




 この日、夜明け前の気温は−1℃。
 海水温が高いのか、海から水蒸気が猛烈な勢いで湧き上がり、見渡す限り海面はどんよりとした冬の海霧で覆われていた。



 やがて空がほんのり明るみ始め、曙光が鮮やかな橙色に景色を染め上げてゆく。すると、厚く海面を覆っていた霧と大気中の靄が見るみる消え始め、見事に晴れ上がってきた。

 まるで映画のワンシーンみたいで爽快な気分が訪れる。



 しかし前日に降った氷雨のせいか、このゴロタ浜の石が凍っていて歩きづらい。手袋を履いていても指先の感覚が無くなり、冷たくてひどく痛む。

 そして目の前に広がるのは生命反応皆無の冷たい真冬の海。今年も安定のノーバイト・ノーフィッシュの日々が続く。




 ピザーラの移動販売車が久しぶりに近くにやってきた。



 ピザ屋がある町までは車で一時間以上かかるので滅多に食べられないと思い、思わず2種類買ってしまった。



 ニューヨーカーと、シーフードイタリアーナ。

 当然ひとりでは食べきれないので残りは冷凍保存。



 スーパの”成人の日フェア”チラシを見ていると何故か無性にお寿司が食べたくなり、思わず衝動買い。

 カンパチ、イカ、エビ、うなぎ。



 マグロとサーモンづくし。

 昼と夜でどうにか完食。お腹いっぱい。



 ついでにカツオの刺身を熱燗で流し込む。至福のひととき。




 時折イライラのスイッチが入る、かんたろう。



 突然、座布団を相手に戦う。



 引っ掻いたり、噛んだり。



 ある程度暴れるたあとは「何もしていません」と開き直る。




 トンは相変わらずかんたろうのことが大好きらしい。



 
 かんたろうは嬉しいくせに少し嫌がっているような素振りを見せる。



 おやすみ、かんたろう。

 今年も十日が過ぎた。まだまだ寒い日は続く。




 年が明けてすでに三日が過ぎようとしている。

 昨日の午後、近くの漁村ではまだ船が港に泊まったままで大漁旗が立ち並んでいた。
 誰もいない静かな漁港。



 この海辺の小さな町に引っ越してきて、猫とともにひっそりと過ごす二回目の正月。

 この町では日々季節を感じながら、荘厳な自然とともに時の過ぎゆくままにゆっくりと過ごしてきた。

 そして二回目の正月を迎えた今、私はこの静かな漁港の光景を眺めながら、家庭を失ったことに端を発する中空の心が少しずつ埋め戻っているのに気がついている。


 ふと見上げると、恵比寿神社の祠も何かしら賑やかで、神々しい気配に包まれていた。


 

 早速、早足で向かう。

 そして手を合わせ、今も生きていることを深く感謝し、静かに祈る。



 正月三日目にして今年最初に拝む初日の出。そして初ショアジギング。

 それにしても寒い正月だ。



 リールを巻く手も、竿を握る手も凍るように冷たくかじかんで、動かない。

 湖のような穏やかな波、そして冷気漂う夜明けの静かな海。



 魚の気配は全くないが、去年と同じようにやはり大勢の釣り人で賑わっていた。



 年末12月30日に1匹だけあった1キロの綺麗な天然鯛。偶然にちょうど、何気なく見ている目の前に置かれ、運良く手に入った。




 同じ日、1匹千円の本ヨコ(本マグロ幼魚)を3匹しかなかったがこれも早い者勝ちで仕入れた。



 本ヨコは三日間かけて刺身、漬け丼にして食べ尽くした。鯛は三日寝かせて片身を刺身に、もう片身は昆布締めにした。鯛はまだまだ残っている。



 この時期の鯛は本当に脂が乗って旨い。



 ついでに高知産冷凍のトロ鰹のたたきも正月用に買った。



 そして、大晦日はひとりおせちの準備。



 昼下がりのかんたろうと、トン。

 窓ガラス越しに差し込んでくる、暖かい冬の陽だまりを全身に浴びて、気持ち良さそうに戯れ合う。



 しばらくすると暖かくて気持ちがいいのか、とても眠そうな表情を見せる。



 仲睦まじい姿に、ほのぼのとしたときがゆっくりと流れてゆく。


 

 思わず笑顔がこぼれ、笑ってしまう。幸せなひととき。



 おやすみ、かんたろう。

 今年もトンと一緒に楽しく暮らそう。