梅雨が明けた途端、連日の猛暑。
 ついに、終日蝉時雨を聞かされそうな、油照りの炎暑が始まった。


 ところが南海上で停滞している台風6号の影響で、近くの海岸は梅雨明けからずっと、うねりを伴った荒れ模様。


 おまけに台風8号まで発生し、海上は荒れ放題で近づくことができない。


 漁船もあまり出船していないようだ。


 釣りに行けないのでブログのネタもない。
 昼間は外に出ると危険な暑さなので、オリンピックでも見て過ごす。 


 こんなに暑くても、なぜか食欲だけは消えない。
 料理を作るのが、めんどくさいので寿司を買ってきたり、


 いつもの関東風蒸し焼きの鰻を通販で頼み、熱々のご飯の上にのせる。


 鰻丼には、利尻昆布だけで出汁を取った蛤のお吸い物を添える。



 たまには、コッテリと八宝菜を作る
 もちろん冷たいビールと、最後は夏でも熱燗。
 お陰で、去年の夏より五キロも太ってしまった。



 仕事も家庭も何もかも失ってから、この夏で二年になる。
 ということは、公園でかんたろうと出会ってからも二年が経つ。



 二年前の七月の早朝、ひたすら憂愁に身を任せながら公園を散歩していた私の前に、突然現れ足元にじゃれつき、咽喉を鳴らし始めた子猫。


 その猫と目が合ったとき、私は何故か心地よい懐かしさに包まれ、暖かくて優しい感情が湧き上がってきた。
 10代の頃買っていた愛猫に瓜二つだったのだ。
 名前はかんたろう。


 それからは雨の日も、嵐の日も毎日私はこの猫を求めて公園の闇の中を彷徨い続けた。

 そして、この海辺の小さな町の空き家を見つけ、一年前の早春からこの猫と一緒に暮らし始めたのだった。


 彼と暮らし始めてから、私の中に常に纏わりついて蝕んでいた不快なものがいっぺんに消えた気がした。
 私は自分の求めているものを知り、やっと落ち着くところに落ち着いた。


 おやすみ、かんたろう。
 いつも一緒だ。

 まだまだ灼熱の炎暑は続く。


 いつの日からか、絶え間なく小雨が降り続け、時折雷を伴った激しい雨に見舞われている。明日の朝まで雨の予報。早くても梅雨明けは明後日以降か。こんなに長い梅雨は初めてで体が腐ってしまいそう。
 火曜日の夜明け。どうにか雨がやんでいたのでジギングに出かける。いつものように明るくなり始めた水平線に向かって投げ続けるが、何か違和感が・・・。


 大島の右横、奥の方に島々が薄く見える。よく見ると、前方の景色をそのまま少し押しつぶしたような、島々の蜃気楼が見えた。


 いつもはこんな感じで大島の右側には何も見えないはず。
 これは滅多にない瑞兆では、と投げ続けるがやはり何も起こらなかった。
 そして、その帰り降り出した雨が、今も止むことを知らず降り続いている。



 先週釣った40㎝弱の貴重なツバス。


 全て刺身にしてその日のうちに食べた。
 あっさりしていたが、ねっとりとした旨味が強く美味しかった。いくらでも食べれそうだった。



 水曜日は近くのパン屋にガーリックフランスが置いてある日。


 カツオも買ってくる。まだまだ安価で安定している。 


 大葉を挟み、生姜醤油に漬け込んだカツオを乗せる。
 マヨネーズを少しかけても美味い。
 週に一度、とっておきの贅沢な愉しみ。


 昼はあっさりと、ぶっかけ素麺。 
 つゆは自家製で、何日か分作り冷蔵庫に保管しているので、最近の昼食は素麺ばかり。


 疲れたら無性にタコが食べたくなる。
 定番のきゅうりとの酢の物で。冷たいビールと一緒に。疲れも吹き飛ぶ。 



 かんたろうが、じっと狙っているのは。


 何と、小さなカニ。この時期、家の中によく入ってくる。


 少し相手をしていたが、相手が元気なのでイヤと言って逃げる。
 気づくと別の部屋でひとり転がり、遊んでいる。


 一緒に遊ぼうと、誘う。


 そのうち、いつもの無邪気なお願いのポーズに。
 夏の毛に生え替わったせいか、少し痩せて見える。


 日向ぼっこの大好きなかんたろう。もうすぐお待ちかねの梅雨明けだ。
 
 おやすみ、かんたろう。


 このブログを始めて一年が経った。
 そして、仕事も家庭も失いひたすら憂愁に身を任せていたあの孤独な時からもうすぐ二年を迎える。
 今過ぎゆく時の流れは早いのか、遅いのか私にはよくわからない。

 昨年の夏、出港間際の渡船

 ただ、勤め人であり家庭を持っていた頃とは明らかに時の過ぎゆく感覚が違っている。その上、何故か全ての事象に寂寥感と悠久さを感じるようになっている。そして、釣りの愉しみ方も変わったような気がする。
 これからは、悠々として急がなければならないのだろう。
 
 昨年の石鯛釣りの一コマ


 もう梅雨明けも間近なのか、どんより曇った日が続くが、最近雨はほとんど降らなくなった。


 この日も微妙な朝焼けの空。


 どんよりした雲の間から有明の月が覗く。


 いきなりジグを引ったくって言ったのは30センチ程のツバス。ほとんど抵抗も見せず、軽々と上がってくる。時々遠くの方で小さなナブラを作っているのはこいつだったのか。
 そして太陽が昇りきり、濃い橙色から輝ける白色に景色が染まる頃、いつものように遠くの海面をダツが飛ぶように走りまわるのが見えた。
 この様子では、シオ(カンパチ幼魚)がこの浜に回ってくるのも近いだろう。


 晴れたので、久々に蒸し暑い午后の漁港を彷徨する。


 潮騒と潮風漂う漁港の静かな光景は、儚さと侘しさを伴う日本の原風景をしみじみと感じさせてくれる。



 昨年三月五日、夜明け前の公園で捕獲し、この家に連れてきた日のかんたろう。夕方まで部屋の隅から出てこなかった。


 ところが日が暮れる頃には、すっかり落ち着いたのか大あくび。
 夜は一緒に寝たが、目が覚めては一晩中部屋のあちこちを探索しては確認し、いちいち驚いて「ニャオー」と鳴いていたのを昨日のことのように思い出す。


 暗い夜の公園で寒さに耐えるかんたろう。


 帰ろうとしても、いつまでもついて来た・・


 体も小さくまだ幼い感じ・・


 一緒に暮らし始めて一ヶ月くらい。まだ痩せている。


 床を転げ回る昨日の、大きくどっしりとした、かんたろう。



 仕事と家庭を失ったことに端を発する私の中空の心を埋め戻してくれた、その愛くるしい笑顔。


 ありがとう、かんたろう。
 ずっと一緒だ。