『バブル獄中記』 長田庄一 | 韓国語教室 とるめんい川西

韓国語教室 とるめんい川西

2005年から兵庫県川西市で韓国語を教えています。

東京相和銀行の創始者がバブル崩壊後の2000年に捕まった(当時77歳)獄中日記。
2010年に亡くなった後で出版されています。

『バブル獄中記』長田庄一 (2011年) 幻冬舎
https://www.amazon.co.jp/%E3%83%90%E3%83%96%E3%83%AB%E7%8D%84%E4%B8%AD%E8%A8%98-%E9%95%B7%E7%94%B0-%E5%BA%84%E4%B8%80/dp/4344020405

経済界の大物らしく、政治家の名前が時々出てきますが
内容は普通の独房日記で、窓から垣間見るタンポポに心癒されたり、現れる三毛猫が今日は来ないとか
蚊がでて大変、ゴキブリが出る、独房を動物のようにグルグル回って運動している、
優しい言葉をかけてくれる看守がいる、弁護士の女先生に癒される、囚人のアイスクリーム売りが廊下を
行き来してる、やってないことはやってないので検事が勝手に作り上げた供述書には絶対サインしない等、
心理描写の語り口がユニークで、普通に共感のできる内容で面白かったです。

取り調べ期間の独房暮らしは孤独で死にそうとホリエモンが書いてましたが
(刑が決まってからの収監は任される仕事があるから気がまぎれるが、取り調べの拘留は孤独で気が狂いそうになるらしい)
この方は戦争中に兵隊に行ってたからか、あるいは性格的なものもあるのか、
ホリエモンよりは淡々と落ち着いている描写でした。それでも不眠や耳鳴りには悩まされてます。

晴天の霹靂の逮捕から、認めたら二十日で出られる?認めなかったら一カ月かかる?三か月で出られないかも?夏には出れるか?冬支度が必要かもしれない、いつ出られるかわからない状態、どんどん伸びる拘留期間に、突然ある日「出ろ」と言われ、優しくしてくれてた看守の部長さんが「早く出てください。あと20分遅れたらもう一泊しなきゃいけない。もう会うこともないでしょう、さようなら。」と荷物をまとめるのを手伝ってくれ、この78歳のおじいさん(獄中で誕生日を迎えた)の代わりに台車を押して出口まで見送ってくれる様子にはホンワカさせられます。

表紙の写真はいかつそうなネクタイ姿だし、壮年時代には金を巡ってドロドロの闘いがあったかもしれないが
この時は子供や孫の成長を楽しみに生きているごく普通のおじいさんって感じでした。

捕まる前は恵比寿のウエスティンホテル、出た後は目黒のウエスティンホテルの一室で終わるので
まるで夢を見ていたような110日間の記録を追体験できます。