韓国語・朝鮮語の名称問題に関する一考察です。
受講生に「どう違うの?」と尋ねられることが時々あります。
事実関係だけをまとめてみました。
参考になれば幸いです。
●この言語の名称について
・1995年頃までは「朝鮮半島で話されている言語の総称」として
 「朝鮮語」ということが多かった。国名ではなく、あくまでも言語名として。
 例)東京外国語大学朝鮮語学科、大阪外国語大学朝鮮語学科、天理大学朝鮮語学科
   運輸通産省の通訳案内業国家試験(科目名 朝鮮語)
・しかし「朝鮮語」というと、韓国人が誤解をすることが多かった。
 「なぜ韓国語にしないのか?!」と。
 日本ではあくまでも中立の立場として、総称として「朝鮮語」と言っているのに
 それを理解されないことが多かった。
・だからと言って「韓国語」というと、完全に北半分を無視した表現になる。
 日本としてはどちらか一方を無視することなく、両方とも尊重したいという気持が強かった。
 現在分断され国名が違うのは政治問題である。
 イデオロギーに翻弄される語学関係者たち。
 NHKの語学講座は、名称問題のために開設が遅れた。
 結局、国名に関連した語は避ける方法で打開した。
   例) NHK「アンニョンハシムニカ?ハングル講座」1984年~(放送内では言語名は一切言わない)
     「ハングル」能力検定試験 1993年スタート(韓国の表記、北朝鮮の表記両方を認める)
     
・ しかし「ハングル」は文字の名称であって、言語の名称ではない。
 打開策として「○○語」ではなく、「ハングル講座」や「ハングル検定」と銘打ったのが、
 のちに「ハングル語」という誤った造語を生む結果となった。
・時代は流れ、韓国の民主化が進み、日本・韓国の交流が密になった。
 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)とは市民レベルでは全く交流がない(できない)。
 「朝鮮語」とは言っても、現在日本人が聞いて勉強して交流しているのは、
 韓国(大韓民国)の人が話しているという意味での「韓国語」である。 
 
・社会の移り変わりにより最近は「韓国語」ということが多くなった。
 緊張の緩和により、「韓国語」としても、以前のような断固とした非難は受けなくなったという。
   例)大学入試センター試験 外国語科目名「韓国語」(2002年に新設)
     通訳案内士国家試験 科目名「朝鮮語」→「韓国語」(2006年に名称を変更)
・現在日本では、「韓国語」「朝鮮語」「韓国・朝鮮語」「コリア語」「ハングル」などが、
 この言語を学ぶ講座名として使用されている。
尚、韓国で話されている言葉=韓国語
 北朝鮮で話されている言葉=朝鮮語
  
という側面で見ると、韓国語・朝鮮語は当然同じ言語ですが、
60年近く分断されている(自由な往来がない)ので、
使われる単語、新しく入ってきた外来語の表現方法が違うことがあります。
表記法(それぞれ標準語と規定している綴り方)も若干違う部分があります。
イントネーションも随分違います。これは地域による言語差といえます。