「チョウン・センガク 좋은 생각」  2006年 2月号より
幼い頃、父が市場へ行く時は、父の手をグッと握って私も一緒について行ったものだ。ある日のこと、市場を見物していてとても可愛い靴を見つけた。花柄の赤い靴。私はすっかり気にいってしまい、父にせがみにせがんで、とうとうその靴を買ってもらった。新しい靴を履いて家路につくまでの足取りは軽やかだった。姉や弟に自慢してやるんだと思うと一層嬉しかった。
아버지 손을 꼭 잡고
마음에 쑥 드는 신발을 발견했다
아버지를 조르고 졸라 끝내 그 신발을 샀다 
それから何日か後、一晩中降った雪で街は一面の銀世界になった。雪だ!という声に、襟元もろくに整えず、手袋もはめないまま、友達と一緒に裏山に向かった。友達に自慢するのも兼ねて、赤い靴を履いて行った。
옷깃을 여미다 襟を整える。襟を直す
옷깃도 잘 여미지 않고
たくさんの子供たちが朝から集まっていた。肥料の袋にわらを入れて作ったソリで、山や野原などの斜面を滑った。手が赤く凍りつくまで楽しく遊んだ。そしてお腹がグーッと鳴り始める頃になってやっと山を降りた。
경사진 곳 斜面
家の庭に帰って来ると、サツマイモやジャガイモの煮えたいい匂いが漂ってきた。私は雪に濡れてしまった宝物1号の赤い靴を乾かすため、練炭の火の上に靴を置いた。「サツマイモお食べ~」という母の声に、古い台所の戸を勢いよく通り抜けて、オンドルの暖かい所に足を入れながらサツマイモを食べた。お腹が一杯になったと思った瞬間、忘れていた靴のことを思い出した。大急ぎで台所に駆けつけたが、私の大事な赤い靴は既に練炭の火で溶けてしまい履けなくなっていた。私は大声を張り上げてワンワン泣いた。
낡은 부엌문을 박차고 나가 
포만감이 느껴지던 찰나 잊고 있었던 신발이 생각났다
부리나케 뛰어가 봤지만 大急ぎで =몹시 급하게
목 놓아 엉엉 울었다   
見るだけでも磨り減りそうで、ろくに履きもせず、毎日磨いてばかりいた私の大切な靴。思い存分に履かなかったことを後々まで後悔した。けれどもその年の冬、父がまた買ってくれたキュツキュッ音の出る赤い靴を履いて、私は村中を駆け回った。
온동네를 누볐다
                          
                                    (慶尚北道 サンジュ市 ムン・ヒョナさんの投稿)