自作エフェクター その1 「YAMAHA TB-01 トーンブースター」 | とれすけのブログ

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自作 TB-01 完成品

 

これはYAMAHAのPSEシリーズの一品。

私がエレキギターを買って、本格的にギターを始めた当時に発売されたYAMAHA PSEシリーズ。

エフェクターの知識がほとんど無い私にとって、このシリーズはエフェクターのことを理解する上で大きな指標になった製品群でした。国内のメジャーブランドが出しているということも安心感や信頼性の裏打ちになっていたと思います。

 ただ、当時高校生だった私にとって、このシリーズはちょっと割高でした。例えば、一番安いディストーションでも10,000円で、他社製品と比較しても2〜3割は高かったように記憶しています。それでなかなか手が出なかった製品でもあります。

結局、一番最初にディストーションのDI-01を購入して以降、このシリーズを入手することはありませんでした。PSEシリーズは数年間でそのブランドが無くなってしまい、後継のYAMAHAエフェクターはあまり良い評判を聞かなかったせいでもあります。

 

 今回製作したTB-01というのはトーンブースターという名前の通り、トーンを調整するエフェクターです。まだ種々のエフェクターを一通り揃える前の段階では、この手のエフェクターの購入優先度は低く、結局欲しいなと思いながらも、手にすることのなかったエフェクターでした。それでも、ヤマハのPSEシリーズは自分の中ではひとつのエフェクターの完成形であり、いつか機会があったら揃えてみたいエフェクターの最上位に位置します。

マルチエフェクターが当たり前の今では考えられないでしょうが、当時はエフェクターは一つ一つ買い揃えていくしかなく、使用機会とお小遣いの残高を付き合わせては悩んでいたものです。

一通り揃うと、次は音色を深く追求するよりは、使い勝手の改善の方に関心が向いてしまって、こういうプリアンプ系のガジェットはに長らく興味が向いていませんでした。

本格的にライブに乗り出すようになって、アンプに注目しだしてから、その一環としてプリアンプにも興味を持つようになってきました。ただ、今度は予算というよりも、エフェクターボードのスペース的制約から使うエフェクターは絞り込まなくてはならず、やはりこの音色調整系は後回しになっていました。

 

 今回、自作エフェクターで一定の成果をみたところから、ミニペダルサイズでなら他エフェクターの代替として使用可能だろうということでTB-01の製作に至った訳です。

回路図を見る限り、特段難しいレイアウトにならないという確信があり、ただ、ボリュームつまみが4つあるということが最大の難点でした。今までにミニペダルサイズでつまみ4つのエフェクターも作って来ましたが、部品点数が多くなると部品配置に余裕がなくなり、特に部品を取り付けた基板の高さが一番のネックになって来ます。

エフェクターケースの中にはフットスイッチ、入出力ジャック、DCジャック、そしてボリュームがひしめいています。ケースレイアウト的にはボリュームつまみ4つがほぼMAXで、ケース背面に基板を設置するレイアウトではその高さを大体8mmくらいに揃えないと収まらなくなります。

ボリュームつまみが少なければ、そのボリュームのない部分の下側は高くてもOKなので、その部分に高さのある部品を配置するなど出来るのですが、ボリューム4つではほぼ全面を8mm以内にしないといけません。その為には特にコンデンサー類を寝かせるなどが必要で、そうすると基板レイアウトにその分余裕を持たせなくてはならず、部品数にも制約が出るということで、このTB-01はなんとか収められる規模だったということになります。

 

 実はYAMAHAのPSEシリーズはKORGのOEMだったりするので、回路図はKORGのTNB-1という製品のものとなります。

また、PSEシリーズは通常の入出力に加えて、専用のシステムボード用の入出力やコントロール回路があったりするのですが、その辺は省略して作成することになります。

 

 エフェクター、特にアナログエフェクター作りでの個人的ポリシーの一つに表面実装部品は使わないというのがあります。最近の安いコピーエフェクターなどは表面実装部品が当たり前に使われていて、それが安さの一つの理由でもありますが、やはりオリジナルマシンとの音の違いの原因のひとつになっている気がします。自分としてはオリジナルマシンに近づけるという思いと同時に、当時の回路技術にに対するノスタルジーにも似た気持ちが大きいのかも知れません。ただ、スルーホールの部品を使っても全く同じ部品を使うことはまずないし、場合によっては廃番等により定数変更を余儀なくされることも多く、オリジナルとは似て非なる音になっているだろうと思っています。

もっとも表面実装部品を使おうと思ったところで、それを扱える技術がないことがそれを使わない理由の最たるものかも知れません。実際には音色にあまり関係がなく代替出来そうな部品もあったりします。表面実装部品の方が値段も安いです。ただ、私は製作過程も楽しんでやっている訳で、そこまでやる必要を感じないというのが最大の理由かも知れません。今の技術で十分対処できるのですから。

 

 さて、TB-01は基板図ができて、レイアウト図に落とし込めればまず大丈夫といった感じです。

この頃はまだ基板図段階での配置が焦点でした。電源経路をどう通すかあたりで悩んだ感じです。

 

 ボリュームは特に小型のマルツパーツで入手できるこのタイプ

 

か、秋月電子で販売しているこのタイプ

を使っています。

Amazonでも数種類このサイズのボリュームがあります。

 

 

 

小径であることを優先して2連ボリュームを採用して片側だけ使うことも多いです。

ただ、設定の抵抗値に限りがあるので近似値で済ます場合もありますし、どうしてもという場合は通常サイズのボリュームを使うこともあります。その場合はケース内のレイアウトをかなりシビアに検討します。

例えば3つあるうちのボリュームの一つだけ通常サイズとかならなんとかなりますが、二つ以上ではまず無理と断念します。ただ、今までそういうケースはなかったですね。なんとか揃えられました。

 

 ボリュームのつまみはAmazonでボリュームの軸の形状がギザギザのついたローレットタイプの安いものを購入しています。

 

 

 ただ、マルツで入手できるボリュームはギザギザのないフラットタイプなので、つまみを加工しています。そもそも購入したそのままの状態では、ボリュームの配置の間隔からつまみの下側の張り出しが邪魔なので、まずそこを切り離して使用しています。

フラットタイプは、つまみの中のギザギザをミニルーターで削り取り、さらに2mmのネジで留められるようにようにネジ切りをしています。

これもある程度数をこなしたところで、中の削り具合をギリギリにすることで、摩擦で動かないようにするやり方でいけるという状況になりました。

 

 基板はユニバーサル基板がいいですね。

CADでプリントパターンを作って基板発注なんていうのも最近は安価に出来ますが、量産するならともかく、1〜2台程度作るのならコストと納期が勿体無いですし、さらに言うならユニバーサル基板の方が密度高く部品配置できるように思います。

 

 

 

 ただ、私のレイアウトはあくまでケースサイズの制約を優先しているので、例えばGNDの面積とか、ノイズ対策的に有利な部品配置というものはあまり考慮していません。

自分で使用する上ではこの種の回路ではそこまで神経質になる必要はないと考えています。

 

ケースの塗装とラベルを貼ることで、見た目もきれいに出来ました。

 

 さて、肝心の音ですが、ONにすると粒立ちのいい音になる感じですね。

TREBLEとBASSの2トーンですが、ちょうどいいところをコントロールできる感じで、バッキング、ソロともに音色を整えるのに適したアイテムだと思います。

GAINコントロールもあり、クリップ寸前でブーストするとまたひとつ違ったニュアンスも楽しめます。

予想通りというか、やはり揃えておきたいエフェクターの一台ということになりました。

 

 自作のメリットはなんといっても実機に比べて低コストで作成できることです。中ではケース、フットスイッチ、塗料代が比較的高いですが、それでも1台3,000円代で出来ていると思います。実機ではなかなか試しに購入とはいかないですが、自作なら割と気軽に作れてしまいます。

特に歪み系では、それこそ色んなマシンを試してみたいというのがギタリストの本性ではないでしょうか。そしてこの歪み系こそが自作エフェクターの王道といってもいいような気がします。

なにしろ回路的には作りやすいものが多いですし。

 

それにしても、TB-01の成功が一連のミニペダル製作に火をつけてしまったのでした。