今クールのドラマ、皆さんは何を見てらっしゃいますか。
僕は、
CX「薔薇のない花屋」 主演:香取慎吾、竹内結子
NTV「貧乏男子」 主演:小栗旬
NTV「斉藤さん」 主演:観月ありさ
の三本をHDDレコーダーでチェックしています。
第3回まで終わったところでの各番組の関東での平均世帯視聴率は、
20.14%、14.27%、15.86%です。
「薔薇のない花屋」は月9枠ですし、現在のところ今クールのドラマの中ではダントツのトップ。
「斉藤さん」はそれに続いて第二位。
「貧乏男子」は第三位グループにつけています。
いずれも検討している方といってよいと思います。
ところで最近のドラマは、昔の「トレンディドラマ」、つまり都会のオシャレなマンションに住んでオシャレな仕事をしている30歳前後の独身男女の恋愛模様をタイアップ主題歌ともに描く・・・というタイプの番組がめっきり減ってきていると言われています。
代わって増加してきたのが「母子視聴」タイプのドラマです。
つまり、独身のOLが自分の部屋で一人でお風呂上がりにヨーグルトを食べながら観る恋愛ドラマではなくて、夕食後の中学生くらいの子供とその母親がリビングで、「いやん、小栗君かっこいい」「お母さんは松潤のほうが好きよ」とか言い合いながら観る、学園モノのようなドラマです。
その代表作と言ってよいのが、2005年と2007年にTBSで放送された「花より男子」です。
でも今クールの視聴率上位ドラマを見ていると、また少し様相が異なっています。
「薔薇のない花屋」では、花屋を営む香取慎吾はシングル・ファーザーであり、愛娘を出産した恋人はすでに他界してしまっています。
その恋人役の本仮屋ユイカはすビデオレターのような形で、過去からの語りかける死者としてたびたび登場するのですが、その様子から彼女は本当に誰からも愛されるような女性だったことが示唆されます。
ヒロインである竹内結子はもともとは香取慎吾のことは好きでも何でもなく、彼の身辺調査をするような形で近づくわけですが、そのうち香取の、素朴で飾り気のない、それでいて果てしない包容力のある人柄に惹かれていきます。
そこで描かれるのは、僕たちが日常の都会生活で経験するような恋愛関係、男女関係とは少し異なり、どこかしらおとぎ話の中で描かれる、現実離れした理想的な出会いと関係性のように感じられます。
竹内は香取のことをずっと「ねえ、お花屋さん」と呼ぶのですが、そのあたりに童話のような雰囲気が現れてると思います。
(脚本が野島伸司ですから、なんとなくわかる気がします。)
では「貧乏男子」はどうでしょうか。
いま絶頂の売れっ子俳優、小栗旬の主演ですから、さぞかしスタイリッシュなドラマなのかと思いきや、タイトルからしてそれです。
小栗演じる大学生は、就職も決まってあとは卒業まで楽しい大学生活を過ごすだけ、の大学生。人の良さが取り柄で21のサークルに所属しているくらいですが、それが仇になって他人の借金を背負い込んでしまう。
その借金を返すためにまた友人の力を借りるわけですが、それが原因でさらに借金がふくらんでいくくととになり、ユースケサンタマリア演じる街金に借金を返済するために毎回奮闘する・・・というお話。
ヒロインとしては山田優ちゃんがキャスティングされていますが、小栗君と彼女の間には、恋愛の臭いがほとんど感じられません。
そうではなく、むしろ「男女の間柄ではなく、『人対人』として、どれだけ他人を愛して、信じられるのか」といったようなことがおそらくこのドラマの主題なのです。
そしてそこに「金」という変数が入ってきたときに、莫大な借金を抱える小栗が、それでも「金より友情」と言えるのか、といったところが視聴者に関心を抱いてもらいたいところです。
このドラマにもリアリズムというのはあまり感じられません。
かといって野島の「薔薇」のように、童話のような「非現実性」を含む話でもなくて、どちらかというと「そんなに借金するわけねーだろ」「そんな非常事態に友達は来てくれねーだろ」といったような「非日常的なドタパタ性」がこのドラマの舞台装置だと言えると思います。
それから「斉藤さん」。
こちらは打って変わって、脚本の中にかなり徹底的にリアリズムを入れ込んでいます。
舞台は郊外の幼稚園。
主人公を演じる観月ありさは、幼稚園児の子供をもつ主婦。夫は海外出張という設定で具体的には登場せず、ちょっとドラマを見るとシングルマザーのように見えます。
この観月ママは、曲がったことが大嫌い。郊外コミュニティの中での建前やなれ合いには絶対の妥協せず、自分が正しいと信じることを、子供にもそういう大人になってほしいという思いrから、幼稚園のスタッフや他の子供の母親たち、そして地元の高校の不良にも通していきます。
このドラマは、そのようにして自分の信念を貫いて向こう見ずに行動し、ややもすればコミュニティの中で孤立してしまいそうな観月ママが、周囲の人々を少しずつ味方に付けながら、やがてはコミュニティ全体のモラルを変えてゆく(であろう)様を描いていくのです。
ドラマの中で観月ママが主張するのは、「人のものを取るのはいけないこと」「嘘をついてばれなくても、そのことで傷つくのは嘘をついた本人。正直に謝れば確かに一時的には痛みがあるけど、その痛みで子供はもっと大事なことを深く学ぶ」といったようなこと。
つまり、「確かにその通りで、できればみんなそうしたいと思っている。でも大人になると、いろいろな事情や他人との関係が優先して、なかなか正しいと思うとおりにできなくなってしまっているよね」ようなことであり、ある意味「絶対善」に近い命題群なのです。
だからこのドラマは、もちろん近所の公園デビューや学校での人間関係に頭を悩まされる母親層には小さからぬ共感を抱いてもらえるでしょうが、観月ママが主張していることはおそらく、
「会社での人間関係に頭を悩まされているビジネスパーソン」
や、
「クラスでの友人関係に頭を悩まされている高校生」
など、
「およそ恋愛以外の人間関係やコミュティによる拘束」
に悩んでいる人すべてに共感される可能性をもっていると思います。
さて、これらのドラマはその舞台装置の現実性度合い・日常度合いに差こそありはすれ、共通しているのは、「愛とはどのような形をとるのか」「人にとって大事なものは何か」といったような、ある意味誰もにとって重みのある、普遍的なテーマをその根底にもっているということなのです。
ただ、その支持のされ具合には、やや差が出てくるのではないかと思います。
「薔薇」の香取君と竹内さんの、「こんなのないけど、あったらいいかも」と思わせる不思議な絆の芽生えには憧れ成立するでしょうし、観月ママの、「こんなママいないけど、いたら僕も私も善きことを求めて一緒に行動したいな」と思わせる人間像には共感と勇気が成立すると思います。
いっぽう、「貧乏男子」の小栗君は、「こんなやついないけど、いたら・・・どうなのかね」と思われてしまう部分があるかもしれません。
たぶん、お金より友人が大事、というのは確かに僕たちにとって普遍的なテーマなのですが、「そんなことわざわざドラマで言われなくても知ってるよ」という類のモノなのです。
あるいは小栗君の言う「友達」との関係性が、ドラマ中ではどうも表層的に描かれているために、共感や気づきが生じにくいのかもしれません。
(たとえば「お金より愛が大事」、という命題であれば、ニコラス・ケイジ主演の映画「天使のくれた時間」のようにリアリズムとおとぎ話の上手なハイブリッドで描いてくれれば、どーんと共感をもつことができます。ちなみに原題はThe Family man)
「貧乏男子」はいまのところ3位グループにつけていますが、今後伸びを期待するのはなかなか難しいかもしれ間ませんね。
いっぽう個人的には、ある意味「貧乏男子」よりも貧乏な感じに描かれている「薔薇のない花屋」の香取君と竹内さんの愛の形がどのような姿をとってゆくことになるのか、こちらのほうがひょっとしたら、「お金より友情」を描くのに成功するのかもしれないと思いますし、「斉藤さん」も、「本当に子供のことを愛するとは、どういうことなのか」を僕たちに今一度気づかせてくれるかもしれないと思って観ていきたいと思います。