何があっても、くじけるな
㊵
16世紀スウェーデン
強国デンマークの圧政と搾取に耐え兼ね、
祖国の完全なる独立を決意をした若者がいた。
彼の名はグスタフ・エリクソン・ヴァーサ。
スウェーデン名門貴族の出だったが
戦に敗れ、
デンマークの人質として囚われの身だった。
決死の破獄の果てに、
やっと故郷に戻ったところで
衝撃の事件を知るグスタフ。
なんと、デンマーク王の奸計により、
父、義弟を始め、
独立闘争の旗手になれそうな貴族たちが悉く
皆殺しにされてしまったのだ。
もう、他に誰もいない。
自分しか、いないのだ。
・・・いやあ、世界各地には数多の
『独立の英雄』がいらっしゃいますけれど、
こちらもトップクラスの悲劇を背負って
おられるんじゃないかと思うわ……(>0<;)
悲嘆に暮れる間もなく、グスタフに
デンマークの追手が迫る。脱獄囚だからね。
孤独すぎる逃亡の道。
独立のための力を貸してくれと
昔の知人や友人を訪ねるも、
ある者には固く断られ、
ある者には裏切られ、殺されかける。
もうホント、読みながら何度
何とかしてあげたいと思ったことか。
・・・そんな孤立無援の中でも、
名も無き貧しい村人たちが、
グスタフを『最後の希望』と知って
さりげなく食べ物をくれたり、
匿ってくれたりと、
手助けをしてくれる場面もあるがーーー
どうか共に立ち上がってくれと頼み込む
グスタフに対し、
村人たちは首を横に振るのです。
え、そこはヨシ一緒に戦おうとなるんじゃ
ないの(・o・;)と思った単純バカな私ですが、
これまで幾度も反乱を起こしては負け、
虐殺の憂き目に遭ってきた彼らの気力は
もう残っていないのでした。
村人たちの気持ちもわかる。
何があっても不撓不屈の精神で来た
グスタフも、さすがに膝が折れた。
諦めるしかない。
もうスウェーデンにもいられない。
季節は冬。積雪で歩くのもままならず、
スキーを得て山越えをし、
隣国ノルウェーに逃れようとするグスタフ。
そのとき、
歴史が動いた(´⊙ω⊙`)!←
これがラストチャンスなのだ。
我々のグスタフ・ヴァーサを護ろう。
デンマークと戦おうーーー
失意のまま去っていったグスタフを
村人たちはスキーを履いて追いかける
の歴史的な出来事が、
クロスカントリーの起源だそうです(゜o゜;
たぶん、『史実』は物語より
もっともっと過酷だったでしょうが、
スウェーデン独立へ至る道の困難さ、
そしてグスタフ・ヴァーサの孤軍奮闘と
倒れても裏切られても前へ進もうとする
勇気と気力は十二分に伝わりました。
この本はグスタフ・ヴァーサが
仲間を得て立ち上がるところで終わります。
その後はどうなったかと言うと。
あのクロスカントリー!から2年後、
グスタフ・ヴァーサ率いるスウェーデン軍は
デンマーク軍を破り、
独立を果たしたグスタフは
1523年、国王として即位します。
デンマークの軛から脱し、
さぞ民衆に慕われた名君であったろうと
思いたいのですがーーー
若き日の過酷な日々が、
やっぱり彼をして何処か冷酷な統治者に
させてしまったのかもしれないなあ・・・とも
思ったりʕ´• ᴥ•̥`ʔ。
偉大な王様であることは事実でしょうけども。
ジャンルは『児童書』ながら
読み応えのある素晴らしい1冊でした。
作者様、訳者様、ありがとうございました。
さて、暫く北欧づいてるので(笑)、
次回は新宿にて開催された展覧会、
『北欧の神秘』に行ってきた話でも
記録したいと思いますm(_ _)m。
備忘録用。