喘息治療:主流と、それへのアンチ・テーゼ | todakaclのブログ

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呼吸器内科開業医(救急救命15年/呼吸器40年)
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喘息治療:主流と、それへのアンチ・テーゼ

2006-09-21 00:29:52 | 健康・病気

又々、ひょうきんたん、天邪鬼アマノジャクなドク・ホリディからの一石投ず。
大体、風邪引いて具合の悪い時ぐらいブログなんか書くなよな。きつくて座れないから携帯から、とかスーパーな○○だよ。

【本文】4剤の特性と主座の1剤の蘊蓄ウンチク
前々から暖っためてた題材で、書き込みたくてウズウズしてた命題です。喘息の治療学は小生の知ってる20年の間も進歩し続け、ひょっとしたら黄金期・最盛期かも知れないと思える程、最近は色んなレベルで良い結果が得られています。発作頻度・重さ、臨時の受診、入院回数・期間など。

昔は【喘息治療のガイドライン】なんていう良いものがなかったんで、手づくり・手探りで各病院・大学で個々に頑張ってた。それが学会・臨床の中枢にいるDr達の努力の結晶として生み出され、時代に遅れず改訂も重ねられてます。感謝。一介の臨床家にとってこんなに有り難い物はない。【ブレない】んです。これがあるために、一般医科でもある程度は長期管理が出来るし、喘息治療の専門家では基本の根幹治療が今どこにあるのか見えやすいから、議論がやりやすくなる。横に話題が跳ぶムダが減るんです。

【2006年版】は、ふらつきのなさが際だっていて、4剤がしっかり役割を演じてます。ダイジェストすると、主座に吸入ステロイド。併用薬にβ-2、抗ロイコトリエン、テオフィリンの3剤が対等です。確か、抗ヒスタミン、トロンボキサンA2阻害剤、インタール、その他の抗アレルギー、内服ステロイド、漢方も記載があったようで、臨床家の手を縛らず、裁量権・自由度が認められてたように記憶しています。

【4剤の特性】戸高流の大胆で。「吸入ステロイド」は、現在手にする最強の炎症止め・抗炎症剤です。そのかわり、いい事ばかりではなく、炎症という生体防御の大事な反応を押さえ込むが故に、結構厳しい副作用がある。主に内服で研究・検証が進んでいる事なので、次講に譲りますが。今のところ、吸入では声枯れ・口内炎が主です。
「β-2」は、即効性・確実性(誰にでも効く)が売りで欧米ではとても好まれてます。吸入(長時間タイプ)・内服・貼付の剤型があり多彩ですが、世界的には吸入2剤が研究対象。ちなみに、テープは日本発なので将来が楽しみ。

この2種には似て非なる弱点があり、コンセンサスを得てたと記憶してますが、「吸ステ」は、気管支ウチ壁中心に起きてしまった、リモデリング(構造変化・再構築)を修復出来ない・作用が疑問視されてる。つまり、今現在起きてる炎症・発作のコントロールは出来るが、将来のために造りそのものを良い状態に持ち込めないのでは?。現代の医科のジレンマです。

「β-2」は、抗炎症の効果においては、即効性No1ですが、リモデリングに対する修復はまず全くないだろうということと、最近のエビデンスでは、吸ステと併用という条件付使用をきちんと守ってでも、3・6ヵ月後に効果が減弱してるのではないかというデータが一部揚がってることが、陰りをもたらしてるのです。そう、テオフィリンと同時に、最初の革新的・著効する喘息治療薬として産声を上げたものがです。なんだか、宿命・運命を感じたりもします。

「レギュラー・ユース」という方法で、短時間型のものを1日2・4回吸入することで、長期管理ができるという仮説があって、かつて欧米とくにアメリカで医療人たちが信念の下に、行った治療で厳しい現実が迫ってきたため、永遠に放棄せざるを得なくなった管理法。長時間型にアレンジして、有害な事象を防いだのに。まだ、何か改良を迫られてるととるべきでしょうか。【注】ちなみに、短時間型は、長期管理に向かないが、他の長期管理用の薬剤とともに、必要不可欠なものとしての地位はきちんとあります。スプレー、ハンド・ネブライザーは、喘息治療の大事なセットの一員です、存在自体を否定しては根幹から崩れます。過去バッシングを浴びた歴史が日本国内にはあるので、老婆心です。何の治療でも単剤に責はなく、セット・組み合わせの妙です。ドク・ホリディ的見解。

「抗ロイコ」に戻ります。これは一番歴史が浅いかも。それなのに、将来性の最も高い薬剤で、リモデリングの修復(傷んだ気管支ウチ壁周辺の正常化)に一番効果が期待されてるからです。欠点は、4割とも6割ともいわれてる不応者(効果が全くない方)の存在。改良の余地があるといえば、希望が持てるのでしょうが、研究者の方から見れば、臨床家の能天気な希望的発言かもしれませんね。

「テオ」は、デビュー当時から長年のあいだ、シンプルな気管支拡張作用、粘膜浮腫の軽減、粘液の減少・粘稠性減弱ぐらいのわかりやすい、発作止め効果しかない。徐放性にしてもミニマム・マイクロな発作を随時解消してるだけのある意味バカちょんなクスリとしての理解をされてた不幸な時期がありました。その後、7割ぐらいがその発作への直接効果ではあるが、3割ぐらいはリモデリングの修復に貢献する作用があるのではないかと提唱され始め、機序こそ未だ明らかではないがエビデンスを得ルことが出来た。

戸高的には、残念なことですが、欧米が何故かテオを好まないのと違い、日本国内では、一般医家の先生も含めて、匙加減の必要なテオを充分つかってるのが売上に示されてるのにもかかわらず、研究対象に選ばれにくくなってて、故にニュー・エビデンスに乏しく、まるで要らないクスリのように思われてしまってるように感じるのです。

エビデンス・EBMのある種の弊害かな。皆前3剤の方に対象が向くのは自然とは思うのですが、新しいエビデンスがでない治療法は、ともすると忘れられかねない。危惧あり。頑張って下さい、研究の分野の先生方。忘れず使いこなして下さい、臨床家の先生方。お願いしときます。ついでに、循環器科・呼吸器科のDrと話してると、【古き善きクスリ】というのがよく出てきます。不整脈のアミサリン、強心剤のジゴキシン、喘息のアミノフィリン、ボスミン、麻酔のキシロカインなんかは開発以来何十年もの寿命。だから、ノウ・ハウで優位なのです。救急の現場では冒険なしに使える頼もしいやつらです。

 

【ステロイド】暴論?

現代の喘息治療のステロイドは主に吸入タイプにソフィスケートされてきました。時代を手繰ると、内服のプレドニン・リンデロン、点滴のサクシゾン・ソルメド、忌まわしき皮下・筋注のケナコルト(最悪:1ヶ月も効果がつづくので、依存症・離脱症・ひどい副作用の現況)があり、最後の奴以外は今も存在価値がある医薬品です。道具なので、こいつらに落ち度はなく使い道・使うヒトに罪があること、再び銘記。

ステロイドというのは、人類が手にした最強の抗炎症剤。何でそうなるのかというと、ヒトはもともと腎臓の丈夫に張り付いてる【副腎】という内分泌・ホルモンを出す最も忙しい臓器で作られてる自前のホルモンのコピーなのです。コルチコ・ステロイドCSとか副腎皮質ホルモンといわれます。でもって、1日にプレドニン換算(力価が物で違うので基準にしてます)4mgを自前で造ってあちこちの炎症の強すぎるところを制御してます。大胆に端折ってます。これに被せて5・10・20・60(これは膠原病・難病の初期量)を内服させるとどうして効くのか。実は本当には解明されていなっかたと思います。ただ、経験的に確かだといわれてるのは、朝に大部分を使うべきだということで、夜間に減るからとか、病状が重くなるからとか夕・眠前に投与されてるケースが多々あってマタマタ戸高は嘆いてるのですが、プロじゃないよ、あんたらは。ま、戸高がその方法のエビデンス知らないのかな。爆発的に余ったステロイドにこそ薬効があるというのがコンセンサスだったはず。

横にそれちまった。ステロイドの実力は、多くの科で多様な疾患に治療のエビデンスとして取り上げられてることが示してます。神経内科では各種の膠原病、神経変性疾患。整形ではリュウマチ、皮膚科ではアトピー皮膚炎、耳鼻科では花粉症、通年性のアレルギー鼻炎、眼科での炎症性疾患。他。後半の3科では1stチョイスは外用ということで、喘息と共通の流れがあります。局所に投与することで、効果を最大に、全身性の副作用を最少にすることができるのです。この流れは大事な伏線です。血液の中に流れ込めば大なり小なり身体全体への影響が出ることを留意しなければなりません。だから、皮膚科ではステロイド軟こうが大部分で使われますが、顔・首を始めとする吸収の良い場所への塗布は、少量・弱力価・長期に渡らないということを原則・鉄則にしてます。耳鼻科でも鼻用のスプレーは力価の高いものは慎重を要します。このへんはコンセンサスを得てることでしょう。

で、【吸入ステロイド】は。
どう、あるべきかの戸高の持論・私見です。内服であるプレドニンを造ってその効果に小躍りした歴史。その後の副作用のきびしさ・根の深さに青ざめて、自然のしっぺ返しに落胆した先輩たち。その時代に要れば小生だって同じことをし、同じように嘆いたでしょう。医療人は、けっしてスーパーマンではなく、超能力者でもなく、占い師でもなく、患者さん達と一緒に嘆き悲しんだはずです。妙な・矮小な被害者意識だけで責めないでくれますか。その時代としての最善の努力をしてた集団に、自分たちだけは100%裁きを加えれると思うのは、独り善がり・児戯だと存じます。同時代の運命を共にした、精一杯に生きた仲間でしょうが。

また、跳んだ。そのある種【負の遺産】は大事に受け継がれるべきものです。
大発明翁エジソンのドキュメンタリーで感動したのは、助手がフィラメントの材料で上手くいかないものがはっきりした時「先生、また失敗です。いつまで、こんな失敗を続けなくちゃならないんですかね。」とこぼした時、いわく「それは、成功の一部なんだよ。もうこの材料は使えないと分かったことが、大事な成功へ近づいたわけだから。」すごいです。実証科学の権化の台詞です。駄目なものを一つずつ見つけることは、必ず使えるものを見つける成功へと確実に近づいてるのですから。同様に、ステロイドの使いにくさを学んだ医学者たちは、外用の模索を始め、点眼・点鼻・軟膏その最新版が気道用の吸入ステロイドだったのです。

この負の遺産とは、ステロイド全般で、数日・数週間・数ヶ月・1年・数年・10数年・数10年使いつづけた時にどんなことが起きるのかを把握してることが、その一つです。解消の今でも使われてる方法が、プレドニンの5mg1錠を隔日投与(1日おきに飲む日と、飲まない日を設定する)で、このほうが、2.5mg毎日より副作用が少なく、効果が同等だった。そんなこんだで、数十年の使用の歴史の中で培われてきた作用・副作用・ベストな治療法の模索が蓄積されてる。

のに。なんじゃ~い。吸入ステロイドは初期型の殆ど流布しなかった頃から数えても、20年余。最新型の3剤なんかはここ7年くらいでしょう。イギリスで20年の追跡調査で、10代・20代時点での低身長とか、高齢になったときの白内障の発生率の上昇が小さく語られてる。懐疑的なドク・ホリディは、この効果の多大な喧伝ケンデンと、長期の副作用の遠慮がちな表現に、プレドニン・デビューがダブルのです。何を世の中で小躍りするのでしょう。もちろん、戸高だってバブルのはじけを全く予想も出来ず、一番高いときに住宅を手にして結構後悔してる普通の人ですが、もう日本中の人はいつまでも続く土地景気にはおどらされないでしょ。同じ気がする。内服の長所・短所を外用が一部なりとも相似形で持つんじゃないかな。

疑り深い。だから、テオフィリン屋なんです。40年以上の歴史。目に見える副作用。充分な効果。捨てるべき薬剤のはずがないでしょう。で、テオフィリンをベースにβ-2<抗ロイコ<吸ステ追加が多くなってしまう。たまには、テオなしの3剤から選ぶこともちゃんとすることで、機会均等を心がけながらも、やっぱりテオ使いたがりますね。医者って頑固もん。良きに付け悪しきに付けだな。世のテオフィリン屋さん・特に研究者の方々頑張って下さい、がんばりましょう。あっと、漢方もいいですよ。なんせ400年くらい歴史あるから(国内版≠中国本国)。

風邪の癖に一気呵成に打ち込んでしまった。ただ、次第に体調上がってきてて、昨日は寝苦しくて、ただただ長い時間うつらうつらしてたけど今日は爆睡できそうです。なんだか獣といっしょ、48時間で生きてるみたい。お馬鹿でした。お休みなさい。0:29