内科医誌1月号へ掲載された文書です。悲しいほど時を感じない。新版も近々書きます。
寄稿
【医師会はイズコへ向かうべきか。申す。】
西区 戸髙 憲二
物議をかもすかもしれない事を重々承知で、池に小石で波紋を。
元は、H20.5の医療政策シンポ「・・・と医療のあり方」お手にしたときと、親しくしてるマイナー科の
医師の魂の叫びをかたってもらったのの受売りが大部分です。正直なところ、この2つの出来事には感銘しました。
小生の定番、歴史から。そもそもは昭和20年のGHQ行政から始まりました。弁護士と言うのは、戦時中、軍部への荷担よりも、反論して獄中にありました。教員・師範もそれに近く、その後、日教組と言われるアメリカ政府の最も忌み嫌う、社会主義的においを表に押し立ててしまったために、保守派の日本の政治家と、アメリカの知恵者が策謀して、分解弱体化に成功した、初めての団体解体例です。
実父が、中学校の教員で管理職にあったために、その上、親友の親がバリバリの日教組幹部であったために、小学生の小生はリアルタイムで二人の戦いを通して、日教組そのもののが弱体化する姿をみてました。【分断と懐柔】が重要な戦略です、政治のプロ達の。この言葉お忘れなきよう。
弁護士会のメンバーのなかに、司法試験の合格数を挙げてしまった今が、最大の危機なのを理解できてる者がどれだけいることか。
医師会はなんと、弱体化した日教組の二の舞になりかかってます。
そも、弁護士会は会員でなければ、国家試験免許を持ってても、仕事が出来ません。それをGHQは許可したのです。
対して、医師会はそれを許されず、日教組のように、任意の入会になったのかと言うのは、一説には、戦時中、医師は軍医として、思いっきり荷担したととられ、アメリカがこの団体の力チカラの温存は危ないと思ったから、医師会員を除名されても、免許さえあれば仕事が出来るシステムを、時の政府とともに、創り上げた。といわれてます。
「面白くない。」歴史と思いませんか。
この元々の脆弱な組織に、10数年前大事件が起きた時、誰が警鐘を鳴らしてくれましたか。【医療費・亡国論】
コレを言い出した政治家の、腹は見えやすかったのに、見過ごしたのでは在りませんか。
当時、30兆がどうたら、このまま長寿高齢化社会が続けば、医療費はとめどなく上昇し、国家予算を食いつぶしかねない。故に、抑制をという論理が、国民を説き伏せてしまった。
上手いよな~。彼らは「プロ」です。舐めてはいけません。高校時代に、先生方が学力で独走状態だったころに、違うことで、伸してやると誓った連中が、激しい過当競争で生き残って、市議、県議、国会議員にまで登りつめたのですから、プロ。セミプロかアマでしかない医師たちが総出で向かっても勝てないことを、自覚することから、初心で反撃する必要があると存じます。市井の壱医師の発言でしかありませんが。
孫子。あまりにも有名な「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず。」敵の恐さが分かってない気がします。
上手いですよ。1980年代くらいまでは、予算と言うものは、防衛費を嚆矢に、GDP比の何%かで、議会で討論されてた。今、久々に、医療費をGDP比や、先進国の予算と比較して語られるようになったけれど、この空白の20年余は、彼らの演出が大成功したのです。防衛費がデリケートなレベルになると同時に、他の予算も、比ではなく絶対値で語る雰囲気になり、その現実を把握した独りの政治家が、仲間とともに吠えたのが、今の氷河期・医療崩壊をもたらしたのです。
詰まり、30兆で固定するだけで、毎年数%伸びていくGDPに対し、実際はマイナス成長になっていくことを、彼らは予測し、その削れた予算の分配に有り付き、票田にばら撒く権利を手にしたのです。
騙されないでいただきたい。防衛費をGDP比で語らなくなったと同時に、全ての予算が生の数字だけで扱われる。実質のマイナス予算だったからくりに。
その上、2200億を毎年削ると言うのは、30兆固定の煙幕の役割。また賢い、アザトイ政治家が出てきたんです。2200億のことで議論していれば、基礎の30兆が如何に不当かの話から反らせ切れるというのが、本質です。ご理解いただきましたか。
議論を、必ずや「GDP比、諸外国と比べた時の絶対値の低さ」に。
医師を増やすと言うのも、目くらまし、子供だましです。
増えれば,仕事が楽になるなんて、粗製濫造されたら、先に弁護士の方で姿が見えてくるでしょうが、技能集団のレベルが下がることは明白で、それはその集団の社会的地位・信頼の低下が目前の危機なのです。大体パイ(収入)が変わらないのに、同業者がただただ膨らむのは、申しわけないが、歯科医師会が先例です。無茶苦茶気の毒な現状でしょう。他山の石ならず。
政治に関しては、アマ同然の小生がココまで、解説もどきをして来ましたが、大事な話をH20.5の医師会特集号から、小生なりの理解で伝えさせていただきます。
55年体制のころの「修正資本主義」はいい響きでした。
市場経済には、可能な限り政府は口を出さない手を出さない。ただし、教育・医療・福祉だけは、強者が弱者を喰らう市場経済に晒さないように、政府が血税を使って保護する。
多分、小生の知る限りでは、ソ連の50年に渡る共産主義の壮大な実験が失敗に帰し、中国でさえも、今や市場原理の未熟な社会として我が世を謳歌してることをみれば、資本主義そのものは、ベストかどうかは兎も角、手に入れきれる最善・次善の体制でしょう。
最近の経済学者はどんな学派に分かれてるのかという話は、慶応大学の田中滋教授の話が一番わかりやすかったので、大幅な抜粋で語りますと、アメリカが完全に実施してる「新自由主義=市場原理主義」と、日本が歩んできた「新古典派」や「新制度派」の3っつになるらしい。
市場経済の活性のタメに、小さな政府的なところは共通だが、市場原理主義は、医療・福祉・教育・保育までも市場に勝手にやらせとけば、相応しく富みが分配されると仮説で突っ走ってる。良くないとおっしゃってる。仮説どおりにはならず、貧しいものはより貧しく、例えば医療を受ける場でも、どこの保険会社のどのグレードの保険に加入してるかで救命救急のばでさえも、A・B・Cどのコースにしますかと問われ、我が子の命が金で決まる。
誰が聞いても、アメリカは病んでる。
後の二つの細かな違いは小生にはよく分からないのですが、医療・教育などの分野だけは市場経済から保護されるべきと言う立場をとるので、その分だけは政府がやや大きめになることを、皆が受け止め、税金の再分配を委ねる。
皆さんが実感されてる、ココ10年20年の医療のきしみは、時の政府が歴代、連綿とアメリカ型の市場経済を模倣する振りをしてきた結果です。模倣という言い草は、政治家が特別会計と言う、通常会計の何倍もの予算を自分たちの自由で再分配する権利を手に入れ、あたかも予算の小さな政府の振る舞いをしつづけた。と小生は分析します。
【分断と懐柔】これが、小生の親しい医師が知恵を授けてくれた、政治の基礎の基礎の戦術・戦略です。学べば私たち医師にも理解は出来ます。が、実践は? 数十年も2世代、3世代に渡りNow&Howを学んできた政治 屋 達に太刀打ちできるはずがないことを自覚すべきです。
舐めてはいけません。孫子。
最後に。大胆な提言を。
彼の案なんですが、途方もないものも裏に控えてますが、プロの医師会のためのロビーイスト(参:「アメリカ 政治」)を10人を手始めに、医師会が雇うこと。松下幸之助の塾とか出身のエリートを、我々と違う方向性を人生に見い出したプロです。
訊いた時は、何じゃこりゃーでしたが、確かに、医師が政治をするのには限界があります。せいぜい政治家めぐりをして、生返事を聞かされる止まりだと思いませんか。
考えてみて下さい。
それと、ココで医師会報のみで愚痴るのは、あんまり格好良くないと存じます。打って出て、世間に広報すべきです。弁護士会がどうなったかさえも知らない。【師】と名のつくものの連携は大事。