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呼吸器内科開業医(救急救命15年/呼吸器40年)
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新型インフルのもたらしたもの(良い事も)

2010-01-13 23:03:29 | 健康・病気

最近はこのテーマが多くなってしまうが、

今月になって開業医がどうなってるから話すと
新型インフルが9~12月に精一杯暴れたもんだから、下火の気配の1月に入ってからは日に数人ケンサにきて、30%から50%が陽性なくらい。散発タイプになってる。
信頼できる説では、今期の冬は今のところ香港、ソ連が皆無に近く、日本では確認できたのが1例のみ。諸外国も同様だそうで。
数十年ぶりの、A型の世代交代の可能性大らしいです。

そもそも、インフルエンザというウイルスは、B型はほとんど変化しないのだが、
A型は、歴史で確認できるスペイン風邪からはじまって、アジア風邪、香港型、ソ連型とあたらしいのが出るたびに前の型・旧型はきえてしまう。不思議。これは未だに何故なのか学説は一致していない、大きな疑問の一つなのだが、事実は厳然とある。
その中でまた、不思議がひとつ重なっていて、香港型はソ連型が出たときに消えずに、観測始まって以来はじめてのAの2系列共存だったのだ。
その30年40年をたまたまとしてしまうかのように、メキシコ発のブタ・インフル由来が席巻してしまいそうだ。
チョイ横道。「スペイン」という命名は誤解が生まれやすい。スペイン王家の名誉のタメに伝えるが、あれは発祥の地は北米・USAだったのが、たまたま第1次大戦中で混乱のさなかだったために、北米から欧州に渡った伝染の広がりが、中立国だったスペインでのみ検疫・統計の網に掛かり、その上不運なことに王家の中で猛威を振るったのが、マスコミ的に話題性が高く世界中に広まった。
その印象で、この名になったのだ。
名前の付け方は、発祥の地に統一して欲しいな、というのが市井の学者の見解です。

てなわけで、数年前のインフルが春にずれ込んだときのような待合室。というか、もっと極端で、晩秋から初冬までみながインフル対策してたのが効いて、ふつうの風邪も下火。世の中平和なんです、この冬は。
おもいあたるでしょ。手洗い、マスク、ウガイ。の3点セットは言わずもがな、危なそうなヒトはみな受診するから、普通感冒(いつもの風邪のこと)は例年より手厚く治してもらえるし。風邪気味のヒトがいると、きっちり避けられたり、はてはおおげさに休みを取ってもらったりと、新型インフル・パニック様々です。
流感くん(流行性感冒)のおかげで、せいで、いつもの風邪くん・ウイルス君の居場所が減ってしまったのです。

傾向の話しですがね。感染性胃腸炎(嘔吐下痢症というのを引き起こす風邪ウイルスの一種)は種がちがうのと、伝染力がもともと高いウイルスなので、いつもどおりの発生率に感じます。
もともと、病状の重さと、ウイルス同士での生存権・縄張り争いの力関係は別物で、例年なら11月とか12月の半ばまでは病院に来るような思い風邪ってのの大半がこいつで、そのごやっとかっと、私たちが出れそうねとインフルが顔を出し始めるのがストーリーだ。
ちょっと言い過ぎたが、無関係ではない。ヒトの命を奪うことがほとんどない感染性胃腸炎のウイルス(ロタとかノロが代表、20種くらい)は、よくウツル。つまりウイルス同士の戦いでは強いのだ。だから人間界に長く存在する。
反対に、エボラ出血熱とか?型肝炎(癌化しやすい)、HIVエイズAIDSあたりは血液・体液などの濃厚な接触しかうつらない。が、いのちを脅かすのが常だ。
バランスで言うと、インフルは2:8くらいの距離感でノロ・ロタに近いと思う。

最近、診療中に徒然かんじることを書き下ろしてきましたが、
実は、先月半ばだったか、フジテレビの小倉キャスターが、常々能力の高い・思い入れのある人材だとは思っていたのですが、8月頃にテレビ出演して自説を論じてた感染症学者のことを述懐してた。ブログにもしっかりその日に書き込んでたのを読ませてもらった。
「新型と呼ばれてる、メキシコ発ブタ由来のインフルが、香港・ソ連を駆逐する可能性が極めて高い。」と

なのに、学会・識者たちがよってたかって、独自すぎる、あんまりオオヤケで話して欲しくないと責めたらしく、気の弱い・知性豊かな彼は、その後の番組ではトーン・ダウン、そのうちTVから消えてしまった。
その彼は今どこに。ってのが小倉のしゃべり。いいよね。
12月中には4500例ぐらいのうちの1例のみ従来型で、99.9%が新型という報告があがってきたのだから。

このへんに2つの教訓がある。
独創的なことを考える知性というものを兼ね備えた人間は、おおむね、概してもろい。
繊細・人間くさくないのが案外、知性と共存してることが多いというのが私の人生観だ。
腕力で(頭・知性の)のし上がってる学会の重鎮たちとちがい、ぽつんとひとり思慮にふける、こつこつだれもしない、見ないしてんから仕事をする。
青色ダイオードのあのヒトなんか、いい例でしょ。日の目を見るチャンスがたまたまあっただけで、普通はまれにしか世間の光はあたらない。

もうひとつは、私の政治観・科学観に根強くあるもの。
近代国家は、フランス革命にはじまった「民主主義」というものを政治の根幹において久しい。王政、哲人政治、独裁制にくらべればマシ。そうマシでしかなく、今選べる最良のものとして選んでる便宜的なものなのだ。Bestと断定は出来ないはず。
ごく一部だが、独裁制、王政でも存続してる国家がいまもあるのだから。
共産主義ピュアが、ソ連崩壊にて幕を閉じたが(中国・北朝鮮・キューバはpureじゃない)、それまでのマルクス&レーニンからの50年間の壮大な実験の間中、少なくとも資本主義と共産主義(社会主義も)という民主主義のおおきな2系が共存していたのだ。

ちょっと硬くはじめましたが、民主主義の根っこは「多数決」
そうしないと二者択一、三者でも、何も決められないからだ。少数意見の尊重なんてのはお題目に終わることが殆どで、結局、数を味方に、大勢を味方に引き込めたものの意見が通り、実行が伴う。この最後がすごい。
これが、今のほとんどの日本人には染み付いてるので、勘違いをする。
日常的に使う思考回路が、多数決的になってしまう癖がついてるのだ。
卑近な話をすると、咳が数週間も続いていて、困り果てて、もしくは暮らせるんだけどこのままじゃいかんやろ100点のけんこうじゃないから、と医院・病院を受診する。
咳風邪といわれ風邪薬・咳止めを4,5日分とか、喘息気味(?医学用語にならん)といって吸ステだけ渡して、結局よくならん。挙句の果ては、考えすぎ・気にしすぎ・心身症といわれてしまい、なんせお医者様のおっしゃることだからと、そんなんだと思い込まされる。
そのとき、気付きませんか。
数人の、たかが数人の医師の診断を、みんなが?日本中の医師の全部じゃないのに、多数決的に、自分に納得させてませんか。

吠えます。
レベルの低い(言いすぎか?不勉強・経験不足)の医師の999人の意見と異なる、1人の医師。これが科学なんです。正しさは結果が示す。
政治は、結果がすべての正しさを表す、証明する性質のものではない。へたをすれば、実行した大勢が正しく、実行できなかった少数は正しくなかったのだと、あとから、過去の判断を正当化するねじ曲げが可能なんだ。「勝てば、官軍」的。というか勝ったものが正義。
この論理が、政治では通用することは、認めるとして、科学・学問の世界には多数決は不要なのに、何でだろうね、学会・識者といわれるものの集まりの中の、大勢の強さは。
なげかわしい。
そして、それに一石投じれる、小倉っていいなあ。

多数決で考える癖、やめましょうとまでは言いませんが、たまにはたった一つの真実って考え方を思い出してください。
インフル・ワクチンの取り付け騒ぎのころの9・10・11月。いやでした、みんなが打つのだから打ちたい。
※アレルギー体質・喘息のある方、体力の落ちてる方(高齢者)への接種は慎重に。
という但し書きは、2009年の春までしっかり生きていたのに。この秋忘れられました。大半の医療関係者の脳みそからもです。いやな話ですが、180人あまりがワクチン後の死亡報告があり。その100例が専門家たちの検証にのり、すくなくとも5例は因果否定できず。
パーセンテージは低いですよ。たしか4800万とかが接種受けた中でのことで、通常のものと比べて異常に高いわけではない。
問題は、その説明を、リスクを予め聴かされたヒト、何人いるやら。
リスク無き薬剤の説明は、はっきり詐欺行為だ。日本中がそうなってた、つい最近まで。
医師も、看護師も、一般のひとびともみな、安全のみの薬剤とどうして信じ込むわけ。
「みんなと一緒」だ。すべての根っこは。はぁー。

このもろい知性システム、私は不安です。取り残されそう。

ま、戦いますか。たたかいつづけましょうね。