最新版:喘息ガイドラインって素晴らしい出来です。 | todakaclのブログ

todakaclのブログ

呼吸器内科開業医(救急救命15年/呼吸器40年)
折々につぶやき珠に【大声カモ(*'▽')
当面【gooブログ】で消失した過去ログ掘削が主です

最新版:喘息ガイドラインって素晴らしい出来です。

2010-01-03 23:47:02 | 健康・病気

秋にシェリング・プラウのアズマネックス・スピンへラーが発売され、冬にはアストラ・ゼネカのシムビコート(「ン」でいい、受けネタ)が発売予定と、吸入ステロイドが5種と2合剤(+β-2)と充実。だもんだから、2008年の帝人オルベスコとグラクソ・スミス・クラインのアドエアー2剤のときから、吠えていた太田建大先生(日本の呼吸器学界の至宝:世界の太田)様が、2009冬も各社から引っ張り凧。
ちなみに、第二世代の元祖3剤は、フルタイドGkS、キュバールSyP、パルミコートAsZ

「吸ステの登場以来4半世紀(1985前後、旧2剤)、喘息の治療方は格段に進歩・発展した。端的なものを云えば、喘息死は年間6000、7000から2008年で2300人。かつてない低減率を手にした。その数倍、数十倍もの喘息の方の日々を改善し続けてる。」
「その主役たる吸ステが、5種7剤揃うということは、降圧剤の200種には及ばないものの、少なくとも患者さんの病態に応じて、剤形を選べる自由を先生方は手に入れられたわけです。(最初は2剤しかなく、初期型のタメに深達率が悪く、効果の薄いものだった、からこその言い回し)。しっかり腕を振るっていただきたい。」
というのが要旨・私なりのダイジェスト。
も、ひとつちなみ、初期2剤はいずれもエアーゾルで、アルデシンSyP、ベコタイドGsK

頼もしい主役たちのバリエーションが、多くの方の日々を幸福に近づける、そのために医師たちにがんばれとおっしゃってるのです。

そしてつづくのは、ガイドライン2009の要約。
治療の基準を、重症度の分類、全人類と比べて、健常な国民と比べて、どれほどの重い喘息かではなくて、今どんなレベルの治療(STEP1-4)を受けてるのかで、治療のほうの軽重で達成度を診る。一寸難しいけど、一度コツを飲み込むと現実に合っているシステムなので、現世利益ゲンゼリヤクの医療らしく実用的なのです。

すこし具体的に噛み砕いてみます。
その前に、おおまかに治療ステップ(グレード・濃厚さ)の紹介から
1.吸ステか、もしくは使えないならテオか抗ロイコ。  →β-2単剤は禁
2.吸ステを必ず、テオ、ロイコ、β-2の1つを追加する。
3.吸ステと、3種すべてを使う。4つ揃えるまでは、突出したフルは用いない。
4.可能な限りフルに持ち込む。(内服ステもそろそろ)
で、例としてわがクリでは、2.が多数派なのだが、吸ステとテオかな。
ガイドラインどおりだと、これで発作が3・6ヶ月落ち着いてれば、STEP1.に下げていい。
逆に発作がおさえ切れないならば、STEP3.に上げないといけないという、一般医家へ対する教本となってる。
5,6回に及ぶ改訂の中で前回から始まり、ようやくdownの基準が明示されたのです。
まだ、作成委員の先生方も手探りなので、いまひとつ運用は難しいのだが、治療薬の減量は患者さんたちの一里塚。光明かと存じます。

ちなみに、吸ステ・テオ主流とするのわがクリのスタイルは、用法・用量を患者さん任せにしてる(野球で云うバッティング・コーチとプレーヤーなので、野放しではなく、学習能力を信じる。身を守る本能も)から、1年・3年単位で見れば8割とか5割に減量されてる、それも安全に、退却でくじけることもほぼ味わう事無くだ。いつか、学会に紹介しようと、データを揃えなおしてます。

太田先生の大ファンなのは、「【すべての薬剤を】患者さんの手元へ届けるのが喘息を見る医師の務めだ。」と常からおっしゃってるからです。私には常識なのに、そうしない医師が五万といるから上級な先生・教授方は、このことを必ず講演での言葉に入れている。切なる願いなんですよね。
吸ステが5+2選べる。β-2だって吸入型が2剤、貼付1剤、内服10数剤。抗ロイコは実質2剤。
ありがたいことに、太田先生はテオのことを必ず語る。匙加減でとてもいろんな複次効果を発揮する、など。背景には、難治性喘息という最重症が未だに存在し、吸ステの発達とともに、定義も4種すべてをフルで使ってもなおコントロールがきびしい喘息と。なってるのに、未だにフロアーの先生から、症例の質問のたびに、確率80%でテオ抜きの3種フルなのです。嘆かわしきかな。ガイドラインにあんなに書いてあるのに、テオを使い慣れてないから、副作用が直ぐ出るから(良いほうの副作用という考え方の訓練が足りない)、数年前の悪意に満ちたグループの小児科学会の発表にまどわされた一般人のクレームを嫌気に(医師として腰砕けの、強い信念不在)、頭の中の選択枝から消してしまったものだから、
演者・パネラーに「テオはなぜつかわないの?」という逆質問で、固まっちまう。
この背景との戦いは、当分続くでしょうね。九大の井上準教授とも、以前その辺を語ったけ。あ、単にわたしが物怖じしないので、このような天才・至宝とも語れるので。

最後に、ガイドラインの解釈について、ひと講釈。
医師は、すべての治療薬からその患者さんに必要なものを選び、かつ最低限の1日量できれば、1日1回という簡便さで供給することに、努力する義務を負います。
好きなやつだけ提供して、治らんならまるで世の中には外に選択枝が存在しないかのような言動で、隠忍自重のせかいに素人さんを追い込む先生のおおいことか。ヒトのための仕事のはずなのに、自分の脳みその省エネですか。流行ハヤリとはいえこの省エネは許せん。最高学府でたんでしょ。
そのへんの初学者・浅学・学問への熱意亡き者への、マニュアルなんですよ。ま、携帯電話とかハード・ディスク・レコーダー買ってきたらついてくる取説みたいなもの。最近のは読みやすさのタメに薄く、主だった機能しか書いてないので、例えとしても近くなった。
これさえもやってくれない医師は、極力減って欲しい。読んでくださいな。そしてやってみて、喜びを患者さんと分かち合って欲しい。私たちは願ってます。喘息治療に【習熟】した者たちは。

閑話休題:蛇足です。
上級者は、ガイドラインの大部分を、その思想を理解した上で守ります、がアレンジします。
ここを理解できてない不心得ものの医師がまたフロアーやパネラーで騒ぐのも困ったもの。EBMはエビデンスに基づく治療と直訳されるが、ここに罠がある。歴史を少し勉強なさいな。エビデンスの4つのグレードで最も低いある高名な・信頼できる医師の発言というものでも、自身が臨床家として患者さんと納得づくデ使うのなら〇マルで、大規模ランダマイズの最上級でも、その患者さんに合わないなら×
つまり、臨床家たったひとりがその患者さんの窓口なんだから、その医師が「判断」という、エビデンスに対する検証・ある種の疑念をもたざれば、道を過つ。
ちっぽけな、ちっちゃな脳みそを使え、使うことを恐れるな。です。
エビデンス・エビデンスと声高に語る先生の、声ばかり大きくて、人を聴衆にするオーラがない。この辺でしょう、日々、患者ひとりひとりのために考え込む医師との空気の違いは。
この当たりの先生たちの啓蒙・教育は、一握りの集団かもしれないががんばってる医師たちがいます。患者さんたち期待しててくださいね。現実には、自分の鼻でかぎ分けて、マシな先生にかかるように、こころがけてください