本物の絶海の孤島:遺伝と善き家族 | todakaclのブログ

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呼吸器内科開業医(救急救命15年/呼吸器40年)
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本物の絶海の孤島:遺伝と善き家族

2006-10-03 02:27:35 | 健康・病気

ガラパゴス諸島ではありません。
【トリスタン ダ クーニャ】島 南アフリカ最南端のケープ・タウンから西3000Km(日本列島の長さに相当)の南緯34度西経13度位に300人弱の住民のいる、無人島でない島で大陸から最も離れた島です。かの有名なセントヘレナ(ナポレオンの流刑地)の属領には成ったが(フランスの奪還を警戒しイギリス領に)その自治領府とも1600Kmもあるもんで、準独立国で、国旗もあり、自給自足。すごいことに毎年正月に定期便がくる他は、年に3、4隻が寄港するくらいで、ブランドのロブスターで外貨を得るほかには暮らせてるらしい。

ま、我ながら、語るのがすきなんだなあと思う。風邪でグラッと体調崩して2週間、開業医だから休むのはかかりつけの方々に大迷惑だし、咳もくしゃみもしてなくて、移す心配もないので、やっとかっとの思いで倦怠感と戦いながら、数日前から80%、本日ほぼ100%の回復実感したと思ったら、これだ。

何で、この島の話か。【喘息】と【遺伝子ゲノム商品化】で有名なんです。
この島は、7人の男性(欧米系)が順次家系を気付いていった、遺伝子的には閉じられた社会のため、ある種の遺伝子が純粋な形で残るという特殊な環境にあった上に、何と島民の30%が喘息、既往を含めると50%がかかわってるという、他の世界の2%~5%とは大きく比率が違う状況があった。気候は温暖とはいい難いが、空気もきれいで、文明のストレスもないのに。で、女性たちは、主にセントヘレナから嫁いで着たのだが、3人に喘息があったとか、2人姉妹が発端だったとか言われるが、その遺伝子が薄まらず、近親系で受け継がれていったことが、研究者たちの注目を集めた。

喘息はやはり多遺伝子関与の複雑なものだろうが、ここの住民のジーンを集中的に調べて、それが世界中の喘息の患者さん達に共通のものが存在すれば、将来の画期的治療薬の開発のもつながると、たしかカナダの研究チームが頑張ったのです。

それが、詳しい経緯は知らないが、アメリカの企業がゲノム解析に成功したと発表したのはよいのだが、【特許】を主張してしまった。つまり、研究の自由を1社が制限・秘匿してしまったのです。悲しいアメリカ社会。どうなるやら。ある種の犯罪的行為だとは思ってます、戸高は。

この話は前フリとして、興味のある方は「トリスタン ダ クーニャ」か「デ」で検索してみて下さい。偉くリッチな独学○○ってメルマガがありますから。

伝えたかったのは、家族・遺伝・バッシングです。
喘息やアトピー皮膚炎(鼻炎は余り関係ないことがおおい)が、片親の方に有って、反対のほうの親にアレルギーが全くないとき。小生が医師になったばかりの頃から、見受けられ、時に積極的に介入し、時に傍観せざるを得ないことが有ったのだが。子供の2、3、4全員に、そのアレルギーが出現してしまった時、もってた方の親は少しばかりの引け目を、もってない方の親は少しばかりのハズレくじの感覚を持つ。それだけならば、ごく自然な、動物としての人間の反応かもしれない。正直なところそれは認めても良いと思う。
心で、少々思ってるだけなら、人を殴ろうと思ったが、現実には殴らなかった。と同じこと、充分社会的に受け入れられることです。小生の周りにも、考か不幸かそうなってしまった両親・家族がいますが、さらっと何となく上手くやってるものです。

嫌なのが、例をあげると、父親が有りで、子供が4人とも有り。でもって、ノン・アレルギー食の弁当を朝早くから、作ってたのは父親の方。母親はキャリアー・ウーマンそれも医療職なのに、傍目からではあるが係わった様子は毛ほどもない。その上なんと父親は大企業の管理職。何なんでしょうね、この関係は・強弱は。ゆがんでませんか。罪人じゃないでしょう。被害者でもないでしょう。運命共同体なのに、悲しい。憶測が過ぎてるかもしれませんが、精神衛生上良くないし、その関係は、2人の大事なお宝の子供たちにも、悪しき影響を及ぼすと考えなかったのか。

もう一つ、母親があり、2人の子供にあり。父親は、全く病気自体を知らない、知ろうともしない、発作で困ってても母親しか見かけない。全部の例を上手くは伝えられないのですが、この、エゴイスティックな行動は、家族みなの精神衛生・幸福に陰りを落とす。
それで、危ないかなと思ったときは、病気の有った方の親御さんに、知恵として、このことをお伝えし、雨模様の外出に傘を持ってとでもが、ささやかなアドバイスです。激しく対立するのではなく、自分を加害者のように思い込まず、罪はないのですから、雄雄しくヒトと付き合うように、自分の人としてのホコリを見失わないように。

日本人の心の底流か、世界的にもヒトというものの感性なのか、【病人は咎トガびと】。健康に見える、思い込んでる方は、バッシング(ネグレクト:無視が最悪)しようが、被害者面して何しても良いと思い込んでる。でも、貴方。あなた自身も不幸の種を蒔いてるのに気付くべきです。

この辺が、医師になってからの戸高の悲しみの一つです。病気になったのに喜べとか、病気サンに感謝というのは、戸高の感性では有りません。入院した時に、本当に優しい友人は誰だったのかは分かるけれども、今の厳しい弱肉強食が表立ってる社会では、病気もちは、弱者、蹴落としやすい競争相手に見られかねない。
病気は基本的に有り難くはないもの。悪いことをしたから成った(罪業妄想←後ろ向き・不健康な考え方)わけでは有りません。戸高的にはただのくじ運です。病気に気持ちまで負けないこと、上手に付き合っていくこと(ウェル・コントロール)を基本に据えていただきたい。

偉そうに語りますが、【本当の優しさ】とは、自分の弱さから来る波風立てない消極的なものではなく、自分の強さ・ただの好運かもしれない状況を、困ってる友人に役立てる志し・能力を持ったものが提供すべきものだと思います。【人間性】【ヒューマニズム】の本来の・根源的意味はここにあると思いますが、いかがでしょうか。

大好きな言葉 【タフでなければ生きてゆけない。優しくなければ生きてる資格がない。

おことわり: 実は、夫婦って面白いもので、似たものが多い。それに、片親のみの遺伝分かってても、案外楽しそうに連れ添ってるご夫婦の方が、当院では良く見かけます。そうそう捨てたもんではないこと補足しておきます。