「週一回お休みされるなら土特ですね」
校舎長は何も聞かずにそう答えられました。今さら理由を聞かなくても塾の出席状況からして事情はよくご存知だったでしょう。
とにかく私は焦りました。
塾に行けないことよりも、家庭学習の時間が取れないことに焦りました。
基礎トレ、漢字の要、言葉ナビ、コアプラスなど算数の基礎、語句や漢字、理社の基本、まだまだ穴だらけなところを埋めなければ下位校も受かりません。
塾で難問を教えてもらいながら家庭学習で基本を押さえるという同時進行でなければ、次男のような子は受験に間に合いません。
コベツバというSAPIXの有料解説動画を夏から契約していて、宿題の解説は聞ける体制にしていました。
(解説が早くて難しいのですが…)
他に家庭教師の先生にも宿題のフォローはお願いしていましたが、体調不良で授業をキャンセルすることもたびたびありました。
体制を整えていても本人が学習できなければ意味がありません。
残された日数は100日を切り、どうしよう、どうしようと、寝込む次男の側で1人焦っていました。
こんな形で勉強できなくなるなんて
思ってもいなかった
身体が冷えないように毎日次男の服装には細心の注意を払い、くしゃみ1つに神経を尖らせていました。
それでも、1週間元気に行ったと思ったら翌週は体調を崩して寝込みます。
毎日焦りと不安で泣きそうになりながら、学習計画を修正していました。
「母は女優であれ」
とよく言われます。
自分の不安を子供には見せず、明るい笑顔で子供に接すること。
焦るたびに自分に言い聞かせていました
まだ大丈夫、時間はある
さぁ、ここからまた仕切り直し
前向きに目の前のことを頑張ろう
何度も何度も
そう自分に言い聞かせ
諦めたら終わり
ヤケになったら負け
必死に踏ん張っていました
そんな10月のある日
次男のマンスリー実力テストの結果を見ていた時のことです。
算数はよかったのですが、理科がガタ落ちで、全体的にもかなり低い偏差値でした。
次男はおらず、長男が確かテスト中で家にいました。長男に次男の理科テストのことで聞こうと思っていた時でした。
「ねぇ、あのさ…」
長男に話しかけて次の言葉を言おうとした時に、突如涙が溢れてきました。
慌てて顔を両手で覆いましたが、涙と嗚咽は止まらず、長男は面食らった様子で立っていたと思います。
「ごめん、もういいわ」
しゃくり上げる声でそれだけ伝え、長男はそそくさと自室へ戻りました。
辛い状況に自制も効かなくなっていました
かなりおかしくなってきてるなという自覚はありました。
必死で前を向こうとしているのに報われない成績。何度も心が折れます。
こうなる前に成績を上げておかなければいけなかったのです。
せめて夏休み前に
次男はかたくなで、頑固で、絶対に弱味を見せません。その硬派な態度に隠れていて、私も気付いていませんでした
あの子は誰よりも繊細だった…
繊細であることを気づかせないほどに繊細だったのです
「どうせ無理だし」
「やっても無駄!」
口癖のように吐き出す言葉
本当は
傷つきたくなくて虚勢を張っていた
無表情の裏で心の中で泣いていた
そのことに気づいたのは、11月に入ってからでした