『萬葉集』を巡る その十八【万葉植物園】 | TOSHI's diary

TOSHI's diary

Feel this moment...

前回に引き続き万葉植物園のパネルと歌碑をご紹介します。

それでは始めていきましょう。

 

 

 

【万葉集4456】

大夫(ますらを)と (おも)へるものを 大刀佩(たちは)きて かにはの田居(たゐ)に せりそ()みける

麻須良乎等 於毛敞流母能乎 多知波吉弖 可爾波乃多爲爾 世理曾都美家流

あなたは大夫だと思っておりましたのに。大刀をおびてかにはの田んぼで芹子を摘んでいらしたのですか。

 

 

 

【万葉集1839】

(きみ)がため 山田(やまだ)(さは)に ゑぐ()むと 雪消(ゆきげ)(みづ)に ()裾濡(すそぬ)れぬ

爲君 山田之澤 惠具採蹟 雪消之水爾 裳裾所沾

あなたの為に山の田の沢に恵具を摘もうとして、雪どけの水に裳裾が濡れたことだ。

 

 

 

【万葉集3825】

食薦敷(すこもし)き あをな煮持(にも)() (うつはり)に 行縢懸(むかばきか)けて (やす)むこの(きみ)

食薦敷 蔓菁煑將來 梁爾 行騰懸而 息此公

食薦を敷いて青菜を煮て来い。梁に行縢をかけて休んでいるこの君に。

 

 

 

【万葉集3834】

梨棗(なしなつめ) (きみ)(あは)つぎ ()田葛(くず)の (のち)()はむと あふひ花咲(はなさ)

成棗 寸三二粟嗣 延田葛乃 後毛將相蹟 葵花咲

梨、棗、黍がついでみのり、蔓を伸ばす葛のように後にまた逢おうと葵に花が咲くよ。

 

 

 

【万葉集496】

熊野(くまの)の (うら)のはまゆふ 百重(ももへ)なす (こころ)()へど (ただ)()はぬかも

三熊野之 浦乃濱木綿 百重成 心者雖念 直不相鴨

み熊野の浦の浜木綿のように幾重にも心に恋しつつ、じかに逢うことのかなわぬことよ。

 

 

 

【万葉集90左注】

……三十年秋九月朔 皇后 紀伊国にいでまして 熊野の岬にいたりして そこの 

みつながしはを 取りて帰る……

三十年九月十一日、皇后が紀伊の国に行啓なさり、熊野の岬に到ってそこの御綱柏を取ってお帰りになった。

 

 

 

【万葉集2208】

(かり)がねの (さむ)()きしゆ 水茎(みづくき)の (をか)のくず()は (いろ)づきにけり

鴈鳴之 寒鳴從 水茎之 岡乃葛葉者 色付爾來

雁が寒々と鳴き渡って以来、水茎の岡の葛の葉は黄葉しつづけたことだ。

 

 

 

【万葉集142】

(いへ)にあれば ()()(いひ)を 草枕(くさまくら) (たび)にしあれば しひの()()

家有者 笥爾盛飯乎 草枕 旅爾之有者 椎之葉爾盛

家にいたなら食器に盛って食べる飯だのに、草を枕とする旅の身なので、椎の葉に盛ることだ。

 

 

【万葉集1742】

級照る 片足羽川 さ丹塗の 大橋の上ゆ くれなゐの 赤裳裾引き あまあゐもち

摺れる衣着て ただ独り い渡らす児は 若草の 夫かあるらむ 橿の実の 独りか寝らむ

問はまくの 欲しき我妹が 家の知らなく

 

 

【万葉集3967題詞】

豈はからめや らに蕙 草むらをへだて……

 

 

【万葉集4493】

はつ(はる)の 初子(はつね)今日(けふ)の たまばはき ()()るからに ゆらく(たま)()

始春乃 波都禰乃家布能 多麻婆波伎 手爾等流可良爾 由良久多麻能乎

新春の初子の今日の玉箒は、手にとるだけで揺れる玉の緒よ。 

 

 

【万葉集3066】

妹待(いもま)つと 三笠(みかさ)(やま)の やますげの ()まずや()ひむ 命死(いのちし)なずは

妹待蹟 三笠乃山之 山菅之 不止八將戀 命不死者

妻を待つとて三笠の山の山菅のように止まず恋いつづけるのだろうか。命死なずして。

 

 

 

【万葉集1627】

わが屋前(やど)の ときじき(ふぢ)の めづらしく (いま)()てしか (いも)がゑまひを

吾屋前之 非時藤之 目頬布 今毛見牡鹿 妹之咲容乎

私の家の季節はずれの藤の花のように、愛すべきものとして、いつも見ていたいものです。あなたの笑顔を。

 

 

 

【万葉集1009】

たちばなは ()さへ(はな)さへ その()さへ ()霜降(しもふ)れど いや常葉(とこは)()

橘者 實左倍花左倍 其葉左倍 枝爾霜雖降 益常葉之樹

橘は実までも花までも輝き、その葉まで枝に霜が降りてもますます常緑である樹よ。

 

 

せっかくの植物園で歌の紹介だけというのもあれですので、

ここでいったん休憩も兼ねて木々の写真を載せていこうと思います。

 

 

 

 

 

 

花の名前などを覚えていれば良かったのですが忘れました(^^💦

それとこの日は工事中のエリアがあったので全ては撮影できていません。

多分現在は全エリアが見られるかと思います。

また、冬場の訪問ですので咲いている花が少ないですね。

別の季節にも訪れてみたいところです。

 

 

ということで続きを紹介いたしましょう。

 

 

 

【万葉集1830】

うちなびく (はる)さり()れば しのの(うれ)に 尾羽(をは)うち()れて うぐひす()くも

打靡 春去來者 小竹之末丹 尾羽打觸而 鶯鳴毛

霞こめる春がやって来ると、小竹の葉末に尾羽根をふれながら鶯が鳴くことよ。

 

【万葉集217】

秋山の したへる妹 なよ竹の とをよる子らは いかさまに 思ひをれか 𣑥縄の

長き命を 露こそは 夕に立ちて 朝は 失すと言へ 梓弓 音聞くわれも おほに見し

事悔しきを 敷栲の 手枕まきて 剣刀 身に副へ寝けむ 若草の その夫の子は

さぶしみか 思ひて寝らむ 悔しみか 思ひ恋ふらむ 時ならず 過ぎにし子らが

朝露のごと 夕霧のごと

 

 

 

【万葉集3872】

わが(かど)の えの()もりはむ 百千鳥(ももちどり) 千鳥(ちどり)()れど (きみ)()まさぬ

吾門之 榎實毛利喫 百千鳥 千鳥者雖來 君曾不來座

わが家の門の榎の実をついばんで食べるたくさんな鳥、鳥はたくさん来るけれどあなたはいらっしゃらない。

 

 

 

【万葉集1623】

わが屋戸(やど)に 黄変(もみ)つかへるで ()るごとに (いも)()けつつ ()ひぬ()はなし

吾屋戸爾 黃變蝦手 每見 妹乎懸管 不戀日者無

私の家に黄葉するかえでを見るたびに、あなたを心にかけて恋しく思わぬ日はありません。

 

 

 

【万葉集133】

ささの()は み(やま)もさやに (みだ)るとも われは妹思(いもおも)ふ (わか)()ぬれば

小竹之葉者 三山毛清爾 亂友 吾者妹思 別來禮婆

小竹の葉は山路にみちてざわざわと風に鳴っているが、私の心は一途に妻を思う。今や別れて来たので。

 

 

 

【万葉集3887】

(あめ)にあるや 神楽良(ささら)小野(をの)に ちがや()り 草刈(かやか)りばかに (うづら)()つも

天爾有哉 神樂良能小野爾 茅草苅 草苅婆可爾 鶉乎立毛

天上にある神楽良の小野で茅草を刈り、草を刈る時に鶉を突然飛び立たせるよ。

 

 

 

【万葉集2500】

(あさ)づく() (むか)ふつげ(くし) ()りぬれど (なに)しか(きみ)が ()れど()かざらむ

朝月 日向黃楊櫛 雖舊 何然公 見不飽

朝月の日向の黄楊櫛のように古くはなったが、どうしてあなたを見飽きることがあろう。

 

 

【万葉集1879】

春日野(かすがの)に 煙立(けぶりた)()ゆ 少女(をとめ)らし 春野(はるの)のうはぎ ()みて()らしも

春日野爾 煙立所見 𡢳嬬等四 春野之菟芽子 採而煮良思文

春日野に煙の立つのが見える。少女たちが春野の、嫁菜をつんで煮ているらしいよ。

 

 

 

【万葉集1895】

(はる)されば まづさきくさの (さき)くあらば (のち)にも()はむ な()ひそ吾妹(わぎも)

春去 先三枝 幸命在 後相 莫戀吾妹

春になると真っ先に咲く三枝のようにさきく(無事で)いたら、後に逢うこともあろう。恋に苦しむな吾妹よ。

 

 

【万葉集3376】

(こひ)しけは (そで)()らむを 武蔵野(むさしの)の うけらが(はな)の (いろ)()なゆめ

古非思家波 素弖毛布良武乎 牟射志野乃 宇家良我波奈乃 伊呂爾豆奈由米

恋に苦しくなったら袖を振ろうものを、武蔵野のうけらの花のように、人目に立つそぶりをなさるな。

 

 

【万葉集2762】

葦垣(あしかき)の (なか)のにこ(くさ) にこよかに われと()まして (ひと)()らゆな

蘆垣之 中之似兒草 爾故餘漢 我共咲爲而 人爾所知名

蘆垣の中にはえた似児草。にこやかに私に向かって笑って、他人に関係を知られるな。

 

 

【万葉集1360】

(いき)()に (おも)へるわれを やまぢさの (はな)にか(きみ)が (うつ)ろひぬらむ

氣緒爾 念有吾乎 山治左能 花爾香公之 移奴良武

私の命とさえ思っているものを、山じさの花のようにあなたは心が移ってしまっているのだろうか。

 

 

 

【万葉集94】

(たま)くしげ みむろの(やま)の さなかづら さ()ずはつひに ありかつましじ

玉䢚 將見圓山乃 狹名葛 佐不寐者遂爾 有勝麻之自

玉くしげを開けて見る、みむまどの山のさな葛のような共寝を、しないでいることは、私にはできないだろう。

 

 

【万葉集1133】

皇祖神(すめがみ)の (かみ)宮人(みやひと) ところつら いや(とこ)しくに われかへり()

皇祖神之 神宮人 冬薯䕘葛 彌常敷爾 吾反將見

皇祖の神に仕える宮人たる私は、冬薯蕷の葛のように末長くくり返して吉野を見て讃美しよう。

 

 

 

【万葉集434】

風速(かさはや)の 美保(みほ)浦廻(うらみ)の (しら)つつじ ()れどもさぶし ()人思(ひとおも)へば

加麻皤夜能 美保乃浦廻之 白管仕 見十方不怜 無人念者

風速の美保の浦の白つつじよ、見ても心が楽しまない。なくなった人を思うと。

 

 

これより万葉植物園内に設置されている歌碑を紹介いたしましょう。

万葉集以外の和歌などもありますので良かったらご覧くださいませ。

 

 

 

 

 

一番下の歌碑は折口信夫さんの歌碑になります。

こちらだけ解説の立て札がなくなっていたので、こちらに本文を記しておきます。

この冬も 老いかゝまりて 奈良の京 たきぎの能を 思ひつゝ居む

 

 

 

【万葉集3101】

(むらさき)は 灰指(はひさ)すものそ 海石榴市(つばいち)の 八十(やそ)(ちまた)に ()へる()(たれ)

紫者 灰指物曾 海石榴市之 八十街爾 相兒哉誰

紫の染料は灰汁を入れるものよ。灰にする椿の、海石榴の八十の辻に逢ったあなたは何という名か。

 

【万葉集3102】

たらちねの (はは)()()を (まを)さめど 路行(みちゆ)(ひと)を (たれ)()りてか

足千根乃 母之召名乎 雖白 路行人乎 孰蹟知而可

たらちねの母が私を呼ぶ名を告げもしようが、さて道の行きずりのあなたを、どんな人と知って告げるのでしょう。

 

こちらは島崎藤村が筆を執ったという万葉歌碑になります。

近代の作家が筆を執った歌碑はところどころで見かけますね。

今後ご紹介する歌碑にも近代作家が書いた歌碑が登場するかと思います。

また見ていただければ幸いです。

 

 

ということで今回は以上になります。

最後までお読みくださりありがとうございました。

ではでは皆さんまたお会いしましょう。

 

過去記事のリンクも貼っておきますのでもしよろしければご覧くださいませ。

『萬葉集』を巡る その一 | TOSHI's diary (ameblo.jp)

『萬葉集』を巡る その二 | TOSHI's diary (ameblo.jp)

『萬葉集』を巡る その三 | TOSHI's diary (ameblo.jp)

『萬葉集』を巡る その四 | TOSHI's diary (ameblo.jp)

『萬葉集』を巡る その十五 | TOSHI's diary (ameblo.jp)

『萬葉集』を巡る その十六 | TOSHI's diary (ameblo.jp)

『萬葉集』を巡る その十七【万葉植物園】 | TOSHI's diary (ameblo.jp)