ショートコラム<クマの共生について考える②> | ナショナルけもペディア<ナショけも>

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飼育方法などは記載いたしません。
よろしくお願いいたします。

 

こんにちは、アラフェネです。

 

今回は<クマ>のコラムになります。

 

こちらの記事は<クマの共生について考える②>の内容となります。

どちらからご購読頂いても問題ありませんが、理解を深めていただくため、前回の<クマの共生について考える①>も一緒にご購読頂けると幸いです。

 

 

 

※この記事をご購読いただく前に注意点ですが、当ブログでは動物の知識を共有する場であり、クマや他の動物など含めた動物観の議論を行う場ではありません。

コメントを行う場合は慎重に行ってください。

 

 予め、ご了承お願いいたします。

 

 

 

 

  クマ(熊)とは?

クマについて簡単におさらいです。

 

ツキノワグマ

 

ヒグマ

 

 

<クマ(熊)>は<哺乳綱食肉目クマ科>に分類される、大型の哺乳類です。

 

クマは世界中の各地に生息している動物で、主に日本には本州、四国に生息している<二ホンツキノワグマ>、北海道の<エゾヒグマ>の2亜種が生息しています。

どんぐり

 

サケ

 

クマは食肉目に分類されている動物ですが、多くの種はどんぐり、木の実、山菜などの植物性の食物を主に食べており、時に昆虫や魚類(サケなど)などを食べることから、雑食性の傾向があります。

 

クマは生理上、エネルギーをできるだけ節約する為や、餌の取りづらい期間をやり過ごすために、11月頃の冬頃~3月の春頃の長い期間、冬眠に入る習性があります。

 その為に冬眠をスムーズに行うために、どんぐりや木の実などの大量に食いだめし、脂肪を多く蓄えて、備える必要があります。

 

 

 

 

地球温暖化

 

 

 

しかし、近年、ブナやミズナラなどの<ブナ科>の樹の受粉が行われず、実がならない為、どんぐりや木の実などの<堅果類>を思うように食べることができず食料不足に陥っています。

 また、それに併わせ、冬の気温が例年よりも高い為、冬眠を行う時期が遅れており、餌をできるだけ多く食べるがために活動範囲を広げることにより、人の活動圏と重なり、クマが人里に出没したり、山で遭遇したりする確率が高くなっているとされています。

これらの自然的な現象は、国際的な環境問題である<地球温暖化>による生物活動の変化の影響も示唆されています。

 

人工林

 

ソーラーパネル

 

もう一つ考えられることとして、人工林の拡大化や人がその土地に住まなくなり管理が行われなくなったことでできる<耕作放棄地>の増加により、クマを含めた多くの野生動物が、隠れる場所と残った作物を目当てに集まってきます。

 最近では時代とともに、太陽光発電システムの導入によるソーラーパネルの設置により、森林が伐採され、生息地が追いやられています。

 

したがって、野生動物の境界線である<緩衝地帯>が無くなりかけていることが挙げられます。

 

近年、クマの人身被害や街中での出没が多く発生していますが、多くは以上のような原因が考えられます。

 性質上、特に冬眠明けの空腹や、子連れの親などは神経質で気が立って、攻撃的になる傾向があり、とても臆病なので、人を見かけると防衛本能で襲い掛かってくる危険性もあります。

 

結果的には、やはり私たちヒトが、クマの生息地である里山の環境を大きく変えてしまったことに原因があります。

 

 

 

  クマが減りすぎると、増えすぎると

 

<ツキノワグマ>と<ヒグマ>狩猟数と捕殺数のグラフ

 

こちらの表グラフは環境省が公表している、<ツキノワグマ>と<ヒグマ>の狩猟数と捕殺数の推移になります。

 1930年~1980年から徐々に狩猟と駆除の件数が緩やかに増えていき、2000年~2023年にかけて、数が急増しています。

 

1945~1955(昭和20~30)年代は戦後の復興により<大造林政策>による、人工林の拡大、1970年代から始まった<ソーラーシステム計画>の導入や<地球温暖化>の問題視化などから、緩やかに捕殺数と狩猟数が伸びている点と重なっているのがわかります。

 

最近、ニュースでは、クマの出没によって、駆除すべきか、山に逃がすべきか、という議論が話題になっていますが、この項では、駆除した場合と山に逃がした場合の影響について考えて頂ければと思います。

 

 

 

〇クマを駆除せず山に逃がす場合

 被害の発端となったクマを駆除せずに逃がした場合ですが、再び人里に戻ってきたりする可能性があります。

 

 やはり、先ほどの項で述べたとおり、自然環境的なもので、どんぐりなどの凶作で食物が得られなかったり、里山の耕作放棄地が増えると、したがって行動範囲が広くなり、人の活動圏に再び戻ってくる可能性があります。

 また、性質上、雑食傾向が強いこともあって、人用の食物への執着心がとりわけ強い傾向があります。

 

 やはり、この気候や自然環境などの根本的な要因が無くならない限りは同じようなことが起こる可能性があります。

 

 

 

〇クマを駆除した場合

 

 クマを駆除した場合ですが、想像の通り、被害の件数が減ったり、農林業被害が減るというメリットはありますが、里山の生態系を維持する上で重要な役割を担っており、駆除をしすぎても問題になります。

 

クマ棚

 

まず、食の多くが植物性なので、木の実や果実を食べることで、その糞が森林を増やし、自然を豊かにしていきます。

つまり、自然界では<種の散布役>や木の上にできた<クマ棚(樹に葉や枝などがつみあがったもの)>を生物が利用するなど、その地の生態系のサイクルに非常に重要な役割をもっています。

 

また、クマは生態系の頂点に君臨している為、魚や昆虫、その他哺乳類を捕食し、各生物の個体数を調整する役割をもっています。

 

このようにクマが多く駆除されすぎてしまうと、クマしかできない多くの役割が担えなくなり、里山の生態系が崩壊し、他の野生生物がいなくなってしまう悪循環になってしまいます。 

 

 

 

 

以上が<クマ>のコラムでした。

 

クマを里山に逃がすべきか駆除すべきか、現在も様々な議論が行われていますが、

 クマを全て駆除にするにしろ、私たちヒトが生息地から完全にいなくなるという極論的なことは現実的に不可能なのが現実で、

<共存>をしていく方法が最善だと考えます。

 

大掛かりになる為、容易ではありませんが、最近では、私たちヒトとクマが共存していくにはどのようにしたらいいのかを、考えていくようになっています。

 

現在はそれらに近い活動を行っている、一般財団法人<日本熊森協会>さんという団体が積極的に活動を行っています。

こちらの団体は、主にクマの保護、生息地の環境づくり、環境教育をテーマに活動を行っています。

 

最後にURLを張っておきますので、是非のぞいてみてください。

 

 

今回も最後まで、ご購読頂きありがとうございました。

 

 

 

 

 

  リンク

 

〇一般財団法人<日本熊森協会>さん

 

 

 

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○<X>アラフェネさん